幕間 ギルドマスターの集会
~ミナ達が観光を楽しんでいる日と同日~
その日ギルドマスターの定期報告が行われていた。
ギルドには、他の支部と通信するための設備が置いてある。
見た目は黒電話で、ギルド職員達しか使えない設備である。
しかし、ギルドマスター専用の通信設備が存在し、それは映像を映し出すものだった。
円卓を囲むように7つの席が置いてあり、そのうちの6つに映像が映し出されていた。
そして、ホゾンのギルドマスターが映像が映し出されていない席に座る。
映像にそれぞれの街のギルドマスターが映りはじめ、ライゾのギルドマスターが最後に映し出される。
「では、全員揃ったようだし、定期報告会を始めよう。
まずは、ホゾンの街の状況を報告してくれ。」
ホゾンのギルドマスターは立ち上がり、報告を始めた。
「こっちは、特に問題無しだ。
少しくらい問題がないと退屈だぞ。
まぁ、変異種オーガみたいなのは勘弁だけどな。」
「お前、少しは真面目にやらんか。
また説教されたいか?」
獣の国のギルドマスターが威圧を込めて言ったのだが、あまり効果は無いようだ。
「しょうがないから、妾が次を報告させて貰おう。
こっちは、国防壁とダンジョンを突破しおった冒険者がおるせいで大変な事態になっておる。
まぁ、見ていた門番曰く、一瞬で国防壁の外に出てしまったようじゃな。
たしか…、ミナとか言う冒険者じゃったな。
あぁ、ホゾンの小僧がいっておった娘か。」
「あいつがやったのか!
なら、納得だぜ。」
ホゾンの街のギルドマスターが声を上げて喜ぶが、他のギルドマスター達は戦慄していた。
国防壁とは、国にモンスターが出現した際に発動できる最終手段だ。
籠城して救援が来るまで持ちこたえる為に龍王の全力ですら防げる程の強度がある。
それを通過できる人間がいるのは問題だった。
おそらくスキルなのだろうが、そのスキルをモンスターが使えたら国防壁など意味が無くなってしまう。
確かに転移系のスキルならば通過できる。
だが転移系のスキルは、発動すると空間に何かしらの穴を開ける必要がある。
つまり、相手の襲来に気が付けるのだ。
しかし、ミナの使ったスキルは《縮地》なので、穴など必要無い。
その一点が、とんでもない悩みの種になっていた。
「獣の国の話は一旦置いといて報告させて。」
そう言って、竜人の少女が立ち上がる。
彼女は龍の国のギルドマスターだ。
「私とライゾの街は共通だから一緒にする。
まず、オークの大群が出現した。
それを、ライゾの街は大量の冒険者でオークを倒していった。
そして、さっき出てきたミナという冒険者のパーティーが龍の国側のオークをほぼ全滅させた。
さらに、オークジェネラルも討伐して、ダンジョンもクリアしていった。
この戦果は異常。」
「そうだね、これは異常だ。
このミナという冒険者をSSランクにしたいと思うのだけど、みんなはどうかな?」
ライゾのギルドマスターが全員に確認する。
「異議は無いぜ!」
「異議なしです。」
「異議はないのじゃ。」
「異議なし。」
「異議ないですぅ。」
「異議はねぇ」
ホゾン、ライン、獣の国、龍の国、天の国、魔の国のギルドマスターが次々に承認していく。
こうして、ミナは知らないところでSSランクになる手続きを進められるのだった。
そして、どこの国王にSSランクになるのを承認してもらうかを協議していた。
ミナのパーティーには、カノアという龍王がいるのだが、誰も言い出すことはなかった。
火龍王にだけは、承認させたくなかったのだ。
天の国の国王に承認してもらう方針に決まり、他のギルドマスター達の報告が再開する。
「天の国のギルドは、特にトラブルも無いので問題なしですぅ。」
「魔の国も問題ねぇぞ。」
「ラインの街も問題なしです。」
ミナがいなかった街は平和なようだ。
ミナの評価はこの時点で、ギルドマスターからは火龍王と一緒にいる銀閃聖姫という評価になってしまった。
ちなみに、銀閃聖姫という二つ名は、ホゾンの街をミナが出たときからずっと、ホゾンのギルドマスターが吹聴している。
なので、ミナの二つ名は既に全ギルドに通達済みである。
「では、これで定期報告会を終了する。」
各ギルドマスターは、おそらくミナの獲得に動き始める。
ギルドにとって、利益を生み出す存在だからだ。
ダンジョンは必ずクリアする、どんなクエストでもクリアする(そもそも受けた数が少ないが)、とても人とは思えない強さがある。
そんな人間を逃す者はギルドマスターになんて絶対になれない。
ホゾンのギルドマスターは、思わず笑ってしまう。
ギルドから来た誘いを断る光景が目に浮かんでしまったから。
それに、遂に、英雄が誕生するかも知れないのだ。
その日ホゾンのギルドマスターは、テンションの上がりすぎでいつもの仕事の2~3倍の仕事をやってのけてしまった。
翌日、仕事がまったく進まず、普段の1/3しか仕事が出来ていなかったのは言うまでもない。




