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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第五章 ライゾの街
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第38話 マーガム対勇者

 ギルドの訓練場に到着した。

 私達は、ギルドの職員に事情を説明してマーガムとタクトの対戦の準備をする。


「とりあえず、ルールを決めましょうか。

 まず、武器は木で出来た物を使うこと。

 盾も同様に木で出来た物を使うこと。

 そして、相手が「参った」と言ったら、攻撃を止めること。

 最後に、スキルは使ってもいいが、非殺傷系のスキルのみを使うこと。

 で、どうでしょう?」

「大丈夫です。」

「それでいいから、さっさとやろうぜ。」


 タクトは本当に分かっているのか?

 カノアが目をキラキラさせて、「わしも戦いたい!」と主張するけど無視する。

 私は、いざというときの準備はしてから、開始を宣言した。


 マーガムは動くどころか、構える様子すらない。

 タクトが木刀から衝撃波を出すが、マーガムは最小の動きで避けている。


 カノアは、タクトの動きが雑すぎて興味がなくなったようで、私を攻撃し始めた。


「いや、ちょっ、マーガムが戦ってるから!

 待てないなら寝てて!」

 カノアの頬に平手打ちして、カノアを壁に激突させる。

「首が…! 首がぁぁ…!!」

 カノアの首の筋肉をやってしまったようだが自業自得なので、しばらく放置することにした。

 クラスメイトが引いていたけど、そっちも放置だ。


 マーガムの戦いに戻ろう。

 タクトが踏み込んで上段から斬りかかるが、マーガムは避けずにタクトの懐に入り込み、そのまま腕を掴んで背負い投げる。

 投げられたタクトは、肺から空気を全部吐き出してしまったようで、呼吸困難に陥っていた。


 しばらくすると、タクトが回復してマーガムに突撃した。

「今のは、わざとやられてやったんだ!」

 タクトの攻撃が大振り過ぎて当たらないからか、マーガムが防御すらせずに攻めに出た。


 まず、タクトの顎に掌底を食らわせてふらつかせてから、足を蹴ってうつ伏せに寝かせて、木の盾を装着してから《遠隔防御》で手足を拘束したのだ。


 意識を取り戻したタクトが手足の《遠隔防御》による拘束を破れないようなので、私はマーガムの勝ちを宣言する。


「待てよ! そいつがインチキしたに違いねぇ!

 でなきゃ、勇者の俺様が負けるはずがねぇ!」

 タクトが何か言ってくるが、当然、不正なんてしていない。

 そもそも、タクトが弱すぎる。

 レベルに強さが着いてきていないのだ。


 たぶん、自分が勝てる敵だけを選んでしまって、技量を伸ばすことをしなかったのだろう。

 一方でマーガムは、私やカノアと戦闘訓練していて、ステータスが足りないだけで技量は十分ある。

 ステータスだけが高いタクトと、ステータスは低いけど技量は高いマーガムなら、マーガムが勝つのが当たり前だ。


 そう、タクトに説明したのだが、タクトは全然納得しない。

「どうせ、ステータスを誤魔化して騙したんだろ!

 レベルだって俺様より高いに決まってる!」


 ステータスは偽装すら出来ないんだけど…?

「なら、そこの人以外全員で戦えばいいじゃないですか。」

 マーガムが薫を指差して言う。


 さすがに黙ってられないのか、委員長も口を挟む。

「あなた、さすがにそれは無理じゃないかしら?

 私達は、あなたよりも弱いけどそれでも連携はそこそこにできるのよ?」

「それでも、僕が勝ちます。」

「なら、全員でやらせて貰いますけど、いいですか?」

 委員長が確認をしてくるので、頷いておく。


 こうして、勇者対マーガムの戦いが始まったのだが、結果は一瞬でわかった。


 マーガムの圧勝だ。

 マーガムが木の盾を装着して、《防御範囲拡大》を使っただけで、試合が終了したのだ。

 なぜなら、誰も《防御範囲拡大》で作られた壁を破壊出来なかったからだ。

 ちなみに治療してあげたカノアが軽く殴ったら割れた。

 ………どんだけ弱いのさ、勇者なのにこれは不味いでしょ。


 結局、フラストレーションが溜まったカノアと私が何故か殴りあいをすることになり、


 ………訓練場が一部壊れました。


 全力でギルド職員に謝ったが、結構高い修理費を払うことになった。

 手持ちじゃ足りなくて、持ってた魔石を少し売ったら足りたけど。


 私達は呆然とする勇者達を置いて、今日の宿を探しに向かった。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 カノアの話によると、この辺は温泉が多く湧いているので、ほとんどの宿にも温泉があるらしい。

 私達は、旅館のような宿に泊まることにした。

 温泉は大浴場と個室にあり、私達は大浴場の女湯に向かったのだが(マーガムもまだ子供なので一緒に女湯)、あまりにも人の目が集まるので、個室で入ることにした。


 温泉はとても気持ちよく、布団も元の世界のようなふかふかな寝心地だったので、マーガムとカノアもとてもリラックス出来たようだ。

 翌朝、私達は勇者がいるから面倒だと思いながらもギルドに向かった。

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