第38話 マーガム対勇者
ギルドの訓練場に到着した。
私達は、ギルドの職員に事情を説明してマーガムとタクトの対戦の準備をする。
「とりあえず、ルールを決めましょうか。
まず、武器は木で出来た物を使うこと。
盾も同様に木で出来た物を使うこと。
そして、相手が「参った」と言ったら、攻撃を止めること。
最後に、スキルは使ってもいいが、非殺傷系のスキルのみを使うこと。
で、どうでしょう?」
「大丈夫です。」
「それでいいから、さっさとやろうぜ。」
タクトは本当に分かっているのか?
カノアが目をキラキラさせて、「わしも戦いたい!」と主張するけど無視する。
私は、いざというときの準備はしてから、開始を宣言した。
マーガムは動くどころか、構える様子すらない。
タクトが木刀から衝撃波を出すが、マーガムは最小の動きで避けている。
カノアは、タクトの動きが雑すぎて興味がなくなったようで、私を攻撃し始めた。
「いや、ちょっ、マーガムが戦ってるから!
待てないなら寝てて!」
カノアの頬に平手打ちして、カノアを壁に激突させる。
「首が…! 首がぁぁ…!!」
カノアの首の筋肉をやってしまったようだが自業自得なので、しばらく放置することにした。
クラスメイトが引いていたけど、そっちも放置だ。
マーガムの戦いに戻ろう。
タクトが踏み込んで上段から斬りかかるが、マーガムは避けずにタクトの懐に入り込み、そのまま腕を掴んで背負い投げる。
投げられたタクトは、肺から空気を全部吐き出してしまったようで、呼吸困難に陥っていた。
しばらくすると、タクトが回復してマーガムに突撃した。
「今のは、わざとやられてやったんだ!」
タクトの攻撃が大振り過ぎて当たらないからか、マーガムが防御すらせずに攻めに出た。
まず、タクトの顎に掌底を食らわせてふらつかせてから、足を蹴ってうつ伏せに寝かせて、木の盾を装着してから《遠隔防御》で手足を拘束したのだ。
意識を取り戻したタクトが手足の《遠隔防御》による拘束を破れないようなので、私はマーガムの勝ちを宣言する。
「待てよ! そいつがインチキしたに違いねぇ!
でなきゃ、勇者の俺様が負けるはずがねぇ!」
タクトが何か言ってくるが、当然、不正なんてしていない。
そもそも、タクトが弱すぎる。
レベルに強さが着いてきていないのだ。
たぶん、自分が勝てる敵だけを選んでしまって、技量を伸ばすことをしなかったのだろう。
一方でマーガムは、私やカノアと戦闘訓練していて、ステータスが足りないだけで技量は十分ある。
ステータスだけが高いタクトと、ステータスは低いけど技量は高いマーガムなら、マーガムが勝つのが当たり前だ。
そう、タクトに説明したのだが、タクトは全然納得しない。
「どうせ、ステータスを誤魔化して騙したんだろ!
レベルだって俺様より高いに決まってる!」
ステータスは偽装すら出来ないんだけど…?
「なら、そこの人以外全員で戦えばいいじゃないですか。」
マーガムが薫を指差して言う。
さすがに黙ってられないのか、委員長も口を挟む。
「あなた、さすがにそれは無理じゃないかしら?
私達は、あなたよりも弱いけどそれでも連携はそこそこにできるのよ?」
「それでも、僕が勝ちます。」
「なら、全員でやらせて貰いますけど、いいですか?」
委員長が確認をしてくるので、頷いておく。
こうして、勇者対マーガムの戦いが始まったのだが、結果は一瞬でわかった。
マーガムの圧勝だ。
マーガムが木の盾を装着して、《防御範囲拡大》を使っただけで、試合が終了したのだ。
なぜなら、誰も《防御範囲拡大》で作られた壁を破壊出来なかったからだ。
ちなみに治療してあげたカノアが軽く殴ったら割れた。
………どんだけ弱いのさ、勇者なのにこれは不味いでしょ。
結局、フラストレーションが溜まったカノアと私が何故か殴りあいをすることになり、
………訓練場が一部壊れました。
全力でギルド職員に謝ったが、結構高い修理費を払うことになった。
手持ちじゃ足りなくて、持ってた魔石を少し売ったら足りたけど。
私達は呆然とする勇者達を置いて、今日の宿を探しに向かった。
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カノアの話によると、この辺は温泉が多く湧いているので、ほとんどの宿にも温泉があるらしい。
私達は、旅館のような宿に泊まることにした。
温泉は大浴場と個室にあり、私達は大浴場の女湯に向かったのだが(マーガムもまだ子供なので一緒に女湯)、あまりにも人の目が集まるので、個室で入ることにした。
温泉はとても気持ちよく、布団も元の世界のようなふかふかな寝心地だったので、マーガムとカノアもとてもリラックス出来たようだ。
翌朝、私達は勇者がいるから面倒だと思いながらもギルドに向かった。




