第27話 《能力付与》
カノアに乗って龍の国へ向かう途中、私は《能力付与》を使って実験していた。
主に、付与できる能力の量と性能の検証だったけど。
付与できる能力は、加速、圧縮、連結、硬化、貯蔵の5種類で、付与できる数は素材によって違うけど【神鉄】なら4つで、【鉄】なら1つだった。
性能は発動時に流した魔力によって変動する。
《能力付与》するときに、流せるMPの最大値や最低値を決められるため、危険性はあまり無さそうだった。
試しに鉄の剣に圧縮を付与して魔力を流したら、直径1cmほどの鉄球になった。
それはもう綺麗に圧縮されて、柄の部分すらわからない程だった。
魔力を流すのをやめると剣が元のサイズには戻った。(形状は完全には戻らなかった。)
連結は、同じ連結を付与された物と繋がるという効果だった。
連結には数字を振ることも出来るので、間違って連結することもない。
連結した剣を《剣舞》で動かして《神速抜刀》して、連結が解けなかったのはMP5000だったので、最低値はMP5000に決まった。
………最低値ですらほとんどの人間は使えないのだが。
貯蔵は、付与した物がMPを貯めておける効果だった。
貯蔵できるのは最大で10000までと、かなりの量を貯蔵できる。
しかも、自分達で貯められる他、大気中の魔力を集めて貯めておけるので置いておくだけでMPが貯まる便利な効果だ。
私はふと思い付き、マーガムから盾と槍を貸してもらい、盾に《武器変化》を使用する。
盾の中央部を分厚くしてから、下の部分に円柱の穴を盾の2/3ほど開ける。
穴に入れるものは明日作るので、穴を塞ぐ蓋をセットしておく。
盾には硬化(MP最大値無制限)と貯蔵を設定しておき、槍には加速(MP最大値無制限)と連結(MP最低値5000)と貯蔵を設定しておいた。
カノアにホゾンの街付近に降りるように言って、私達はホゾンの街に着いた。
「お主、わしの背中で変なことやらんでくれぬかのぅ?
お主が背中で剣を振り回して、剣が飛んでった時には生きた気がせんかったのぅ…。」
「…それは、ごめん。
ちょっとスキルの実験してたんだよ。」
「まぁ、わしと一戦してくれるのならば、許してやらんでもないのぅ!」
この戦闘狂本当に戦うの好きだなぁ…。
でも、悪いのは私なんだし、一戦くらいならいいかな?
「じゃあ、一戦だけね?」
「えっ?
本当にいいのかのぅ?
どこかで頭打ったかのぅ?」
「なんで戦うって言ったら、頭おかしいみたいに言われるのよ…。」
「そりゃお主いつもわしと戦うのを避けるではないか。」
「まぁそうだけどさ…。
とりあえずギルドに行ってそこで一戦だけしよう。」
あまり乗り気ではない私は、カノアに引っ張られる形でギルドに向かった。
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ギルドに着いた私達を待ち受けていたのは、意外な歓声だった。
「おっ!銀閃聖姫じゃないか!」
「銀閃聖姫、帰ってきたのか!」
えっ?銀閃聖姫って何?!
なにそれ、知らないんだけど!
そして出てきたギルドマスターに事情をきく。
「銀閃聖姫ってなんですか?」
「そりゃお前さんのことだが?」
「誰がそんな事を言ったんですか?」
自然と殺気が出てしまうが、ギルドマスターはお構い無しに言った。
「そりゃ、Aランクにもなると一流の冒険者だからな。
2つ名ぐらいは勝手に付くもんだ。
まぁ、お前さんに関しては俺が付けたがな!」
「………どうして銀閃聖姫に?」
「お前さんが変異種オーガと戦ったときに持ってた剣が聖剣みたいな色してたし、それにお前さんの職業は剣姫だしな!」
どうして聖剣を使ってたのがバレてるだろうか?
たぶん邪神の眷族と同じような魔法かスキルがあるんだろうな。
それなら納得。
………と、私の2つ名よりもカノアとの戦いだよ。
もう我慢出来ないのか、かなり顔が険しくなっている。
早くしないとカノアがここで暴れてしまうかもしれない…。
「ところで、ギルドの訓練場を借りたいんですけど。」
「おう、別にいいが観に行っていいか?」
「いいですけど、下手したら死にますよ?」
「まぁ大丈夫だろ。」
私達はギルドの訓練場に到着して、早速我慢出来なくなったカノアと離れて戦闘体勢に入る。
マーガムが審判をしてくれるようで、マーガムが私達の間に立つ。
「僕が止め、と言ったら止めてくださいね?」
私は頷いたんだけど、カノアは聞こえてないと思うんだけど…。
「では、始めてください。」
風が割れるような音を出してカノアが近づいてくる。
そして突き出された拳を下から殴ることで威力を減らすと同時に、攻撃をずらすことに成功する。
そこから、カノアの止まらない連続攻撃を何とか周囲の被害が出ないように受け流す。
そして、カノアが連続攻撃で疲れたのか、僅かに隙が出来たため、そこを突いた。
しかし、それは罠だった。
一瞬腕を掴まれて投げられそうになるが、
“エアブロウ”を発動して自分に当てて、カノアに向かって吹き飛ぶ。
さすがにこんな使い方をするとは思って無かったのか、カノアが僅かに怯んだので、投げ飛ばして壁にぶつけてから、マーガムに終了を宣言してもらった。
「止めてください!」
マーガムが終了を宣言する。
そして私が周りを見渡すと、冒険者がほとんど倒れていて、ギルドマスターとAランク以上が何とか立っている。
ちなみにマーガムは普通に立っている、そんな状況だった。
「やっぱり、お主とんでもなく強いのぅ。
お主と居れば絶対に強者と戦える予感がするのぅ。」
…そんな予感は要らないんだけど。
まぁ正気に戻ったみたいで良かったよ。
私達は動けないギルドマスター達を置いて、宿を探しに行くのだった。