第24話 邪神の眷族
私達は転移した。
…のだが、そこは今までの洞窟のような景色では無く、ホゾンのダンジョンを踏破した時の小さい女の子がいた階層のような場所だった。
ホゾンのダンジョンの時との違いは、所々で火の手が上がっており、建物も徹底的に破壊されている。
しかし、足元に光のラインが通り案内する機能は残っているようで、私達はその光に着いていった。
光は真っ直ぐに宮殿のような、まだ壊れていない建物に私達を誘導する。
扉が開き中に入ると、そこには少年の首を鷲掴みする男が立っていた。
男がこちらを見ただけで異様な圧力が私達を襲う。
「お前は…、オーガを倒した勇者か。」
オーガ?
まさか、変異種オーガとの戦いを見られていた?
とゆうか勇者じゃないです。
私がそんな事を考えていると、首を鷲掴みにされている少年がこちらに手を伸ばし、
「助、けて。」
私は剣に手を添えて、《神速抜刀》を使える状態で待機する。
「主は、強敵との戦いを望んでいる。
お前が主と戦う資格があるか、見極めさせて貰いたいが私も忙しい。
私の眷族と戦って貰うことで、見極めさせて貰うぞ。」
そう言うと男の後ろの空間に亀裂が入り、中から悪魔のような見た目のモンスターが現れた。
「こやつは…!邪神の眷族ではないか!」
カノアが声を上げると、男が別の亀裂を作る。
そして、男が亀裂の中に入ると同時に亀裂も塞がれていく。
「ギギッ、“ファイアーウェーブ”」
邪神の眷族が魔法を使い、私達を火の津波が襲う。
「“アクアウェーブ”」
マルムが水の津波を発動させて、相殺させたので被害は無い。
私とカノアが同時に邪神の眷族に攻撃を加えるが、私は《神速抜刀》で邪神の眷族にダメージを与えるが、再生能力による回復の方が早く、カノアは攻撃を受け止められ、そのまま壁に投げられて気を失ってしまった。
私と戦っている間も、邪神の眷族は全体攻撃系の魔法を使い続けていて、マルムがそれを相殺しているが、すぐにMPが尽きてしまうだろう。
私は、《限界突破》と《剣聖》に《剣舞》を使用する。
右手を地面と平行に動かし、《剣舞》の紋章が刻まれた5本の聖剣を《時空間収納》から取り出す。
私は自身が持っている聖刀と聖剣を使って邪神の眷族にダメージを与えていき、5本の聖剣は《剣舞》と《神速抜刀》を使用して、ダメージが回復する前に削りきろうとする。
流石に、回復が追いつかなくなっていくが、邪神の眷族が怯む様子はない。
ダメージが蓄積していき、邪神の眷族をあと少しで倒せる。
そう思ってとどめを刺そうとした、その瞬間だった。
邪神の眷族が空間に穴を開けて、そこに腕を入れた。
「ごふっ。」
そして、邪神の眷族の腕がマルムの胸から出てきたのだった。
「ギギッ、ザマァ…。」
「「マルム!!」」
マーガムがマルムに駆け寄る。
邪神の眷族が光に包まれて消えていく。
私は《剣域》でそれを確認しつつ、マルムに駆け寄る。
マルムに回復魔法を全力で発動する。
私は詠唱破棄でしか魔法が使えないので、効力は下がるため、ポーションも使いつつ回復させようとする。
「“エクストラヒール”!」
しかし、胸に開いた穴は塞がることは無く、流れる血が止まることもない。
「なんで…?
なんで、傷すら塞がらないの?!」
そこに、邪神の眷族に首を掴まれていた少年が歩いてくる。
「邪神の呪いがかかっていますね。
それも、最上位の邪神の物が。」
「どうすれば解呪出来るの?!」
「最上位の神が作るポーションでなら解呪できるでしょうけど…、そんなレベルのポーションはありません…。」
「そん…、な…。」
それでも、諦められるはずが無い。
《限界突破》を使用している今なら、エクストラヒールの上の魔法が使えるはずだ。
私の頭の中に詠唱するべき言葉が紡がれる。
「聖典の光、命の奔流、無垢なる心、すべてを紡ぎ、今、この者に…っ!」
紡がれた言葉がほどけていってしまう。
《限界突破》の効力が切れたのだ。
駄目だ!駄目だ!駄目だ!駄目だ!
絶対に諦めたくない!
私は回復魔法を使用し続ける。
すると、マルムの手が私の手を握った。
とても弱々しいが、強い意思が込められた手だった。
「ミナ、様…、どうか…、笑って、ください…。
最後に…、見る、ミナ…、様は、笑顔が、いいです…。」
「最後なんて言わないで!
まだまだ一緒に過ごして、いろんな事を経験していくんだから…!」
「ミナ様…、私は、幸せ…、でしたよ?
ミナ、様達と…、過ごした、今日…、までの日々は、とても…、楽しかった、んですから。」
私はもう、泣くことしか出来なくなっていた…。
「ミナ…、様、私は、霊魂石に…、なります。
私も…、まだ、ミナ様と…、一緒に…、冒険、したい…、ですから…。」
私の手を握るマルムの手から徐々に力が抜けていく。
私は…、マルムの最後の願いを叶えようと笑顔を作る。
でも、こんな別れで笑える筈もなく、作れたのは涙でぐしゃぐしゃになった笑顔だった。
それでも、マルムは満足そうに笑顔になり、マーガムの方を見てから。
「お兄、さまは…、好き…、嫌いを、せずに、ミナ様と、一緒に…、私の、分も…。」
私の手を握っていたマルムの手から完全に力が抜けてしまう。
私が強く握った瞬間、マルムから光が溢れて、そこに残ったのは、マルムの毛と同じ真っ白な2つの霊魂石だった。
私が霊魂石を拾うと、不思議とマルムがその石の中に居るような気がした。
私達は、霊魂石を胸の前で両手で握り締めて、ただ泣くことしか出来なかった。




