第20話 闘技大会予選
マーガムと別れた私達は、マーガムの応援をするべく、観客席へと向かった。
闘技大会の会場は、東京ドームと同じくらいのステージと、それを囲むように観客席が設置されている、かなり広い会場だった。
会場では、予選の勝者を当てる賭け事が行われていたので、白金貨10枚をマーガムに賭ける。
ちなみに、オッズは0.01だったので、マーガムが勝てれば白金貨1000枚になる。
賭けたときに、賭け事を仕切っている男が良いカモが来たと言わんばかりに、笑みを浮かべたが、きっと真っ青になってくれるだろう。
ちなみに予選のルールは、バトルロイヤル方式で、最後に立っていた者の勝ち、というルールだ。
私とマルムは、ポップコーン(に見える物)を購入してから、席に座った。
予選は、4ブロックで、マーガムは、予選Cブロックなのでまだまだ出番は無い。
予選Aブロックは、一番人気の冒険者が他の冒険者を圧倒して終わった。
今回の闘技大会はレベル低いのかな?
動きは隙だらけだし、マーガムなら余裕で勝てそうだ。
予選Bブロックは、一番人気を他の冒険者がほとんど攻撃した為、一番人気が脱落して、4番人気の冒険者が勝ち進んだ。
そして、いよいよマーガムの出番だ。
バトルロイヤルが始まり、このブロックでも一番人気を潰そうと冒険者達が動く。
マーガムは初期地点からほぼ動かずに、向かってくる冒険者だけを槍で突いたり、時には盾で殴ったりして戦闘不能にしていく。
しばらくすると、一番人気の冒険者とマーガムの一騎討ちになった。
一番人気の冒険者は、大剣を軽々振り回している筋骨隆々の大男で、小柄なマーガムが潰れてしまいそうな絵面である。
それを見て、悲鳴を上げる観客もいるが、マーガムならば、振り回す程度の大剣など難なく受け止めるだろう。
なぜなら、最終日にはマーガムが、《剣舞》の《神速抜刀》を防いだのだから。
《神速抜刀》は、そのスピード故に、受け止めると凄まじい衝撃が来るので、受け止めるには、それだけの防御力と技術がいる。
マーガムは、獣人故の察知能力の高さで、相手の攻撃の当たる瞬間を正確に受け止めるか、受け流すかを判断出来るので、1対1なら《剣舞》の相手も出来る。
そんなマーガムが負ける筈もなく、大男の全力は受け流しつつ、ランスで反撃する。
軽い一撃は、受け止めてから盾全体で相手に突進して、着実にダメージを与えていった。
しばらくすると、マーガムが無傷で大男がボロボロという、私達以外は予想していなかった状況になり、会場が悲鳴と歓喜に包まれた。
私とマルムは、マーガムと合流する前に、賭けの儲けを受け取りに行く。
賭けたときには笑みを浮かべていた男が、真っ青で対応してくれた。
なんでも、全ての賭け金を合わせても、白金貨1000枚には届かないらしい。
しかし、満額払わなければ、賭け事として成り立っていないので、信用を失う。
信用を失えば、2度と賭けてくれる者は居ないだろう。
さらに言えば、白金貨1000枚は、中規模の商店ぐらいでないと持てる額では無いそうで、どう解決したものかと思っていると、マルムが助け舟を出してくれた。
「ギルドの円で払わせればいいのでは無いですか?
そうすれば、先にお金を受け取れますし、そのあとはギルドが面倒を見てくれるでしょう。」
なるほど、使うこと無くて完全に忘れてたよ。
「そんなことされたら、堪ったもんじゃねぇ。
おい、お前ら!
口封じしろ!好きにして構わん!」
真っ青な男がそういうと、後ろからぞろぞろと武器を持った男達が現れる。
そして、私達を見て好きなことをするのを想像した瞬間、男達の武器が斬られた。
男達は、意味がわからない、といった様子でしりもちをつきながら、納刀された聖刀を構える私を見る。
その脳内は、恐怖で埋め尽くされ、持っている武器を落としていった。
そして、真っ青な男は、その場に崩れ落ちた。
とりあえず、全員縛ってギルドに向かおう。
マルムには、マーガムと合流してくるように伝えて、ギルドに向かった。
ギルドでは全ての処理が、滞りなく進んでいき、私のギルドタグに10億円が振り込まれた。
庶民な私は、いきなり金持ちになってしまい、手が震える。
ギルドタグは、《時空間収納》に収納しておく。
でもこれで、マーガムとマルムを不自由させること無く育てることが出来る。
そう思えば、悪いことではないな。
まぁ、マーガムが戦って私が儲けを出している時点で、教育には悪いんだけど。
そんなことを考えていると、マルムがマーガムを連れて来た。
私は事の経緯を話してから、マーガムの勝利を祝って、中心街で宿探しと飯屋を探しに向かった。
宿は直ぐに見つかった。
高級宿を見て回っていたら、風呂つきの宿を見つけた。
私はそこに決めた。
しかし、飯屋はなかなか見つからない。
ティーナさんの店のようなおいしい料理店はないものか…。
そして、一時間程探したとき、私達は見つけたのだ。
[食事処 平等謳う精霊亭]を。
私達が店に入ると、そこにはティーナさんがいた!
人間の国にいるはずなのになんで?!
「ティーナは妹ですね。
私はシィーナと申します。」
私達は、ティーナさんの話をシィーナさんにしつつ、食事を楽しんだ。
グレッドドラゴンの肉が、ティーナさんの時と同じく口に含んだ瞬間、旨みの電撃が瞬間的に身体中を駆け巡り、とても美味しかった。
食べ終わった後、私達は宿に戻って風呂に入った。
この世界に来て初めてのお風呂で、私はマーガムとマルムと一緒にお風呂に入った。
過去の勇者が広めたのか、シャンプーや、リンス、ボディソープも用意されていたので、皆を綺麗に洗った。
私達は、お風呂から上がった後、明日に備えてマーガムをマッサージしてから、いつも通り小の字で一緒に寝た。
そういえば、Dブロックはどうなったのだろうか。
あと賭けの支払いもどうなるのかな?
まぁ、Dブロックの勝者はともかく、賭けの支払いに関してはどうでもいいかな。




