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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第三章 獣の国
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第18話 獣の国に向かう馬車

 ホゾンの街を出発した私達は、乗り合い馬車に乗って、獣の国(ビーノ)へと向かっている。


 途中で村に寄ったりして、旅をしているという気分になっている。


 今回は、冒険者としてではなく、旅人として馬車に乗っている。


 護衛しながらだと、気を張らなければならないので、旅とは言えないのではないか、と思ったからね。


 まぁ、いざとなれば戦うけどね。


 馬車はゆっくり進み、私はマーガムとマルムの毛並みを整えながら、《剣域》を使用して周囲の索敵をしていた。


 ちょうど、マーガム達の毛並みを整え終わった時、《剣域》がとんでもなく大きいモンスターの一部分を認識した。


 馬車が近づいて行くので、モンスターの形を認識しきれた。


 あっ、これはたぶんヒュドラだね。

 9つも頭があるし、尻尾が1本の蛇のような感じのモンスターだ。


 私は一応、馬車の御者にそのことを教えるが、冗談だと思われてしまい、結局馬車はヒュドラの居る方へと向かっていった。


 結局ヒュドラに気付かれて、護衛の冒険者が戦っていたが、あまり戦況は良くない。


 そもそも、ヒュドラの9つの頭に対応が出来ていない。


 9つの頭はそれぞれ属性を持っていて、炎、水、風、土、氷、雷、光、闇、回復をそれぞれ使用するらしい。


「マーガムとマルムだけだったら、どう戦う?」


「僕だったらまず、マルムを守りつつ、遠隔防御を使って、回復の頭を孤立させてから回復の頭だけを先に倒しますね。

 そのあとは、順番に1つずつ潰していきます。」


「私でしたら、お兄さまに守っていただきつつ、《魔法融合》と《魔力ブースト》を使用して、最初に回復の頭を潰しつつ、1、2回で終わらせますね。」


 ちゃんと、2人とも倒せるプランがあるようで安心した。

 でも、私とマーガムは武器の扱いが上手くなるように、特訓しないといけないな。

 《剣舞》を使って、特訓すれば私は《並列思考》で、3人分特訓できるからね。


 私が特訓内容を考えていると、護衛が全滅した。

 …ん?

 ちょっとまって、全滅してるよ…。

 幸い、戦闘不能で済んでいるようだけど。


 ヒュドラがこちらに向かってくる。

 私は馬車から降りて、ヒュドラに向かって歩いていく。


 私は《神速抜刀》と《神速納刀》を使って、ヒュドラの首を、瞬間的に全て切り落とす。


 しかし、ヒュドラは動き続ける。

 どうやら斬られたことを、認識出来ていないようで、胴体だけが進んでくる。


 マーガムが《遠隔防御》を使って、胴体の進行を止めた。

 しばらく胴体が動いていたけど、完全に停止してくれた。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 ヒュドラを《時空間収納(アイテムボックス)》に入れていく。


 乗り合い馬車に同乗していた人達は、目を見開いている。


 私の深めに被っていたパーカーが《神速抜刀》によって起こった風圧により、捲れて顔が出ていたことになのか、それとも、ヒュドラが一瞬で消えたことになのか、

 私には、わからなかった。


 私は乗り合い馬車に戻った。

 マーガムとマルム以外の乗客は怯えた目でこちらを見ている。

 普通の人なら、さっきの戦いは私が近づいただけで、ヒュドラの首が落ちたように見えているように見えるから、しょうがないとは思うけど。


「安心してください。

 私達はAランクの冒険者です。

 皆さんに危害を加えるようなことはしません。」


 私達がAランクだと聞いて安心できたようだ。

 ちなみに戦闘不能な冒険者達を予備の馬車の中に突っ込んでおいた。


 すると、乗り合い馬車の御者が降りてきた。


「感謝します。

 あなたの言う通りにしておけば、被害を出さずに済んだかもしれません…。」


「私もAランクってことを言ってないので、気にしなくても大丈夫ですよ。

 それに、死者は出てませんからね。」


 それからは、特にモンスターが出ることも無く、獣の国(ビーノ)との国境の関所で入国審査を受けてから、獣の国(ビーノ)に入国した。


 関所を越えて、獣の国(ビーノ)に入国する。


 さすがは獣の国(ビーノ)、獣人がたくさんいる。

 それに、家も木で出来た家が多く、国のあちこちに闘技場があり、どの闘技場も賑わっているようだ。


 基本の犬や猫、珍しそうなアルマジロのような獣人もいた。


 しかし、見られる目に何故か敵意があるんだけど?

 マルムに聞いてみると、子供の奴隷というのがいけないらしい。

 獣人は仲間意識が非常に強く、全ての子供は自分の子供のように見ているため、子供を奴隷にしているのは印象が悪いようだ。


 しばらく歩いていると、熊獣人がこちらに向かって来た。


「その子達を開放しろ!」


 やっぱり出て来た、こういうこと言う人。


「開放されるのをこの子達が望んでいるのなら。」


「君達も開放されたいよな?」


 マーガムとマルムは、首を横に振った。

 ちょっと嬉しい。


「あいつにそうするように命令されているんだろう?」


「そんなに言うなら開放して、マーガムとマルムに確認しましょうか。

 “奴隷開放”」


 マーガムとマルムを奴隷から開放する。

 マーガムとマルムと私が繋がっている感覚が消える。

 しかし、マルムは私から離れない。

 マーガムは熊獣人に向かって歩いていく。


「君は開放されたかったんだな。

 俺の後ろに…ブフッア!?」


 マーガムに目線を合わせようとして屈んだ熊獣人の顔面に、マーガムはとても綺麗なストレートパンチを決めた。


「僕達は、好きでミナさんと居るんです!

 邪魔をしないでください!

 ミナさん、奴隷契約をお願いします。」


 いや、殴ったら不味くない?

 マルムを見ると、「私も、お願いします。」と言うので、2人と奴隷契約を結び直す。

 どうやら、マルムもご立腹のようで、殴ったことに関しては何も触れなかった。


 しばらくすると、憲兵がやってきて事情を説明すると、殴った件はスルーされた。


 憲兵から開放されたので、私達は宿を探しに向かった。

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