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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二章 ホゾンの街
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幕間 ギルドマスターの期待

 俺がその冒険者を知ったのは、ギルドの職員にあのカートを捕らえた。という報告を聞いた時だった。


 カートの奴は、確実に犯人なのがわかっているにも関わらず、証拠が不十分だったり、無かったりで、なかなか捕まえられない奴だった。


 しかし、今回は現行犯の為、言い逃れが出来ないとのこと。


 仮にもカートはBランクの冒険者で通っている。

 そのカートを無傷で捕らえた。と聞いた時には、Sランク以上の冒険者が捕らえたと思ったのだが、捕らえたのはつい最近冒険者になったばかりの若い少女だという。


 思わず受付嬢に「冗談はよせ!」と言ってしまったが、冗談では無いようだった。


 その少女が誘拐されそうになったときに、カートと一緒にいた奴隷の兄妹は、その少女が所有者になったそうで、その他の奴隷に関してはギルドが管理することになった。


 俺は、その少女がSランク以上の実力を秘めていると思い、まず少女をギルドマスター権限でBランクにした。


 すると、すぐに少女はダンジョンに潜っていった。

 ダンジョンは、ハイリスクハイリターンなので、帰還しない者も当然出てくる。

 そのため、ギルドでは3日で戻って来なかった場合、死亡扱いとすることになっている。

 帰還方法は、自力で入り口まで戻ってくるか、ボス部屋の次の階層に設置された魔法陣で転送されるのどちらかしか無いため、転送されてきた場合は、10階層を突破した事を意味している。


 そして、少女達はその日のうちに、転送で戻ってきたらしい。

 俺は、少女達を呼ぶように受付嬢に伝えた。



 しばらくして少女達が入ってくる。


 俺は、どうやってオークキングを倒したのか聞いたのだが、あまり要領の得ない返答が帰って来た。

 まぁ、冒険者に詮索をするのはタブーだから、すぐに引き下がる。


 俺が本題の変異種オーガ討伐の話をし始めると、戦いには参加したくないと言って来たが、なんとか後方支援として参加させることに成功する。


 冒険者時代の勘がそうしなければならないと、そう言っている気がしたのだ。


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 しばらくして、討伐隊が戻って来た。

 死者こそ居ないようだが、ほぼ全てのメンバーがボロボロで、無事な者もMP切れになるまで回復魔法を使用していて、回復してはいたが戦闘が可能なレベルでは無かった。


 しかし、少女と奴隷だけは、無傷で参加報酬を受け取ってから帰っていった。


 Sランク冒険者に、変異種オーガとの戦闘について聞き出していると、とても勝てたものではない情報が出てくる。

 それこそ、英雄譚なんかに出てくる勇者でなければ勝てないようなレベルであった。


 そして、誰が変異種オーガを倒したのか聞いたのだが、誰も答えられなかった。

 正確には、答えられないように契約させられていた。


 そのため俺は、魔導具を使用して記憶を写し出す。

 そして俺が見たのは、変異種オーガと互角以上に戦う少女の姿だった。


 戦闘中はほとんど暴風が吹き荒れていて、よく見えなかったが、勝負が決まるまで暴風が止むことは無かった。


 勝負が決まった時に少女が持っている剣が1本増えていた。


 その剣は、白銀の刀身でまるで()()のようだった。


 聖剣を持っているのは勇者のみのはず、しかし彼女は、他の勇者のようにBランクから始めることをしなかった。

 つまりは、国となにかしらあるのだろう。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 翌日、彼女達を呼び出し、彼女をAランクにすることを伝えて、侮った発言をしたことを謝罪した。


 そして彼女達は、ダンジョンに潜っていった。



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 彼女達がダンジョンに潜ってから、3日が過ぎた。

 ギルドの規約で死亡扱いにはなってしまったが、俺にはなぜか彼女が生きている確信があった。



 彼女達がダンジョンに潜ってから4日が経ったとき、俺は用事が出来たので、ダンジョンの転移地点付近に向かった。


 俺が着いたのとほとんど同じタイミングで彼女達が転移してきた。


 思わず涙が出てくるほどに嬉しかった。

 将来、英雄になる可能性が高い彼女が、死んでいなかったのだから。


 そして到達階層を聞いた時、40階層という未踏階層踏破報告と、40階層が最終階層という報告を受けて、俺と周りでダンジョンに入るのを待っていた冒険者が停止した。


 話を聞こうとしたが、その時には既に彼女達はいなかった。


 その日、ギルド職員総出で街を探したのだが、見つからなかった。

 街の中で治安のいい場所を重点的に捜索したが、あてが外れたようだ。


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 翌日、彼女達がギルドに来たときには、逃がさずに情報を引き出すことに成功した。


 ボス部屋は10階層毎に存在し、

 20階層には、ジェネシスオーク

 30階層には、ジェネシスオーガとオーガキング

 40階層には、キマイラ、ベヒモス、スライム、漆黒龍が連戦で戦わなければならないようだ。


 ジェネシスオークの時点で、SSランクの魔物なので、勝つためにはギルドでSSランクに認定された人間が必要だ。

 そしてそんな存在は、人外の力を持っているので、多種多様なクエストに呼ばれるので、ダンジョンのモンスターを間引く仕事を引き受ける者は少ないだろう。


 そして、彼女が魔石を換金しようとしている時に放った言葉は、俺の思考を再び止めるものだった。


 ボスは、自分以下の性能をもった同種を取り巻きとして、戦闘することになるらしい。


 さらに、キマイラやベヒモスは、大量に出現するらしい。

 俺が思考停止から復帰すると彼女から、獣の国(ビーノ)に向かうと告げられる


 彼女達が獣の国(ビーノ)に向かうのは、残念ではあるが引き止める権限など存在しないので、せめて向こうのギルドで苦労しないように、向こうのギルドマスターに言っておこう。


 しかし、国の諜報員に気が付かれたのには、本気で焦った。

 Sランクに認定するために、観察してもらっていたのだが、気が付かれた時点でSランクの実力があるのは確信した。



 俺は、未来の英雄がどんな伝説を打ち立てるのか、楽しみでしょうがなかった。

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