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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第三部 第一章 上位世界
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第26話 虚無

 気が付くと、何も無い、というか何も感じない。そんな状態になっていた。

 頭も痛い。そもそも何故こんな状況になっているのかが思い出せない………。確か、私は帰りのホームルームが終わった直後だったような………?だが、そこから先に大切なことがあったような気がする。


 しかし、この状態では現在位置の把握はおろか、自分の身の状態すらわからないのでどうしたらいいのか迷う。唯一わかっているのは私の意識だけははっきりしている。ということだけだ。

 そもそも、無事に帰れるかどうかもわからないので不安な気持ちでいっぱいだ。

こんなことがあるのか………。そう私が思った時、どこかから何かを訴えるような声が聞こえた気がした。


 何かを思い出さなければならない。そんな気がするが記憶がまるで穴が空いたように失われているので、私が誰なのかすら思い出せるか怪しい。

 ………私の名前は………、月島…海那………?いや、ミナ?

 私は………、海那であり、ミナだった?


 頭痛のような感覚のあと、記憶の穴が少しだけ塞がれ、顔はわからないが、私が仲間(だと思う)と楽しそうに過ごしている様子を思い出した。

 この様子を思い出した時、私は不思議と悔しさと不安を感じ取った。


「おや?ここで意識を保っているとは………、珍しいやつがいるもんだ。」

 その時、私にノイズのかかった声が話しかけてきた。

 何も感じないので鼓膜を振動させることによる意思伝達では無く、間違い無く魂に語りかけている感じだろうか?小説なんかでよくある意思伝達手段を実体験出来るとはおもってなかった。


「………ん?………………………なるほど。お前はあいつと戦って勝つ寸前までいったのか。」

 ………何をいっているのかわからない。

「?あぁ、ここでしばらく気を失っていたせいで記憶が抜け落ちたのか。………待ってろ、すぐに戻してやる。」

 そう言うとしばらく声の主が無反応になる。


「これで戻るはずだ。」

 しばらくして戻ってきた声の主は、そういうと私の記憶が鮮明に甦ってくる。


 そして思い出した敗北の記憶、そして最後に見た光景、それは私を元の世界に戻そうと突き動かすには十分だった。

 ………だったのだが、私が何の感覚も無い状態で創造神と戦った世界に戻れるのかと言われると無理だと思う。


「それにしても、この虚数空間でよく存在を保てていたな………。普通ならば存在することなく消滅させられるのがこの空間のルールだというのに。」

 虚数………空間、何の感覚が無いのもそのせいか。

 私に感じとることが出来るのはプラスだけなのだから、無い数字を感じ取れないのは当然のことだ。


「あぁ、なるほど、絆………か………。」

 声がそう呟いたことで私を消滅させなかったのがみんなとの絆であることを認識する。


「いや、絆だけでは無いな。………お前みたいなやつを見たのは初めてだ。魂が3つあるなんて今までで見たこと無いな。そうなった工程を見るに、魂を引き裂いているのと変わらないにも関わらずよく精神が耐えたもんだと感心した。そもそもお前が創造神と呼ぶ存在に匹敵する人間がいるとは思わなかったしな。」

 魂を引き裂いているという感覚はなかった。

 だが今は誉められている場合では無い。


「早く創造神の前に戻してください。」

「………まぁ、私としてはお前の全てを解析したいところだが、確かにお前には守るべき者がいるようだからな。」

 そう言うと私の体が暖かくなる。


「今お前の体を構築している。今回は面白いものを見せてくれたお礼だ。」

 なんと、私の体を再構築してくれているらしい。

 しばらくすると私は虚数空間で自分の肉体を取り戻した。


「お前には期待している。創造神を生み出した者として、スキルや概念といった要素を組み込まれた世界の構築の手助けをした者として、お前が創造神を止めてくれると信じている。………ではな。」

 私は自分の体を確認していく。

 どうやら虚数空間からは無事に戻ることができたようだ。時間的にも私が虚数空間に飛ばされてからほとんど経過していないようだ。


「ミナさん!」

 その声に振り向くと、マーガム達が手を振っていた。そしてそれに気がついた創造神は大きく慌てふためいていた。

 それは自分が送った場所のことを知っているから。故に創造神は打つ手を間違えた。

 そう、マーガム達を狙ったのだ。それが意味するのはミナという聖剣から最強の絶剣にまで上り詰めた存在の逆鱗に触れた、という創造神にとって最悪の事態を迎えた。


 そして私と創造神の戦いは最終局面を迎えることとなる。

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