第23話 1冊の本と警告
転移させられた先にあったのは、シンプルな机と椅子、そして机の上の1冊の本だった。というか、それしかない。透明な板の上に全てが乗っているだけの空間だった。
No.1の絶剣は同調に時間がかかりそうだが、なんとか解放される管理者権限が何なのかだけは判明した。管理者権限“王”、臣下や仲間に力を与え、そしてその力を使う権限。
いわゆるワンフォーオール・オールフォーワンだろう。………あっているかはわからないけど………。
ともかく、強力な権限であることには変わりはない。………まぁ、概念 絆と若干被っているような気がしないでもないけど。
椅子に座り、机の上の本を手に取る。
見た目は辞書のような感じだが、辞書のように分厚くなく、タイトルも無い。
読んでいる間に創造神が世界を終わらせようと動き出すかもしれないので概念 加速を使った状態で読む。
それはある男にまつわる話だった。
その男は何も無い場所に1人立っていた。
ある日、男は自分と同じような、そして競いあえる存在が欲しくなった。しかし、それが現れることは無く、時間だけが経過していった。
そしてある日、男は無いなら作ればいい。という発想に至る。それから男の試行錯誤が始まり、その結果、男は10人の少年少女を作り上げた。
………だが、少年少女は男が求めたスペックを保有してはおらず、絶剣と名付けた11本の剣の内の10本を少年少女に渡し、全員にそれぞれ100の世界を管理させることで互いに研鑽させてもみたがいつまで経っても男が求めたスペックには及ばなかった。
それから長い年月を男は待ったが、やはり男と同格の生命は現れることは無く、男は期限を自分が生み出した10人の少年少女に設け、それを過ぎたら世界を全て破壊して終わりにする。と告げ、自身はその時をただ待った。
一方で焦ったのは10人の少年少女である。
何せ男が欲しがったのは男と対等の存在である。つまり、戦闘能力も対等でなければならなかった。それ以外ならばなんとかなったが、男から生み出された少年少女には、それだけはどうしようもなかった。
だからこそ、少年少女は待つしかなかった。スキルや概念、そして管理者権限は男が生み出した訳ではないため、少年少女が力を合わせて自分達が管理するよりも下の世界を作り上げ、そこから創造神と対等になりうる生命が現れるようにする。という計画が実行された。
だが当然それほどの力や素質を持った生命が産まれるのはそれこそ奇跡と呼べるほどのものだった。
そういった生命は大抵転生した生命に比較的多く見受けられたが、そういった生命も成長途中で死んで初期化されるか、弱体化してしまうため、望んだスペックを持った生命は現れることなく期限だけが刻々と近づいていた。
そして全員が管理する世界がそれぞれ3以下になった時、遂に望んだスペックを持ちうる生命が誕生した。
それは存在しないはずの12本目の絶剣だった。
ここで話は終わっているが、これは間違いなく創造神と管理者の話だ。そして最後に出てきた望んだスペックを持ちうる生命ってのは私のことだろう。
それにしてもこの本には私が知らないことが色々と書いてあった。
私がイレギュラーであること、そして私が今現在唯一創造神の破壊に対抗できる存在なことを改めて理解した。それは私が全生命にとって最後の砦であるのと同義だろう。
私自身はただ仲間を守りたかった。守るために強くなっただけのはずだったが、いつの間にか守る対象が広がっていた。
だが、私が守るのはあくまでも仲間と家族の為だ。それだけは何があっても変わらない。
明日創造神に勝てるという保証は無い。むしろ五体満足でいられる保証すら無い。だが、怖くても、嫌でも、立ち向かうしかない。
No.1から託された願いと、みんなを守る為には明日創造神に勝つ。そう決意を固める。
するとテーブルの上に文字が書かれ始めた。
彼は求める強者を、彼と同等の存在を、だが間違っても■■■はいけない。絶対に。
そう書かれた机はその後何か書かれることは無く、この文を誰が書いたのか、何を伝えたいのか、それはわからなかった。
抜け落ちた文字を知ることが出来ないので、この文を頭の片隅に置いて、私は創造神との戦いに挑む準備を始める。
まずは手始めに聖剣を1万本作成する。
次に《魔帝》に高威力の魔法をストックしておく。
そして絶刀と絶剣そして黒神剣の調子を確認しておく。
そうこうして時間が経過していき、No.1の絶剣と同調し終わったとほぼ同時に私の足元に魔法陣が描かれ私は転移させられた。
そして移動した私を待っていたのは、圧倒的な蹂躙の形跡と次の世界に行こうとした創造神と見受けられる男性だった。