第19話 黒をも燃やす炎
「それではミナ・ルシーナ対No.2とNo.6の戦闘を始めます。………では…始め!」
翌日、私が目を覚ましてあまり時間が経過していないにもかかわらずNo.1に転送される。
寝惚けてはいないが、まだ寝ていたいので戦闘に集中しきれるか疑問が残る。
「じゃ、始めよっか。」
No.6が話かけてくる。
………今までNo.1が号令をかけてから会話しようとした管理者っていたっけ?そんなどうでもいいことを考えながら頷く。
「じゃあ、行くよ。」
No.2の周囲に黒い円盤が4枚出現する。
円盤が周囲の空気を凄まじい速度で吸い込んでいるのを《剣神》の効果で把握する。そしてその正体がブラックホールであると推察することが出来た。
私は概念 加速を発動してブラックホールに吸い込まれない対策をする。
ブラックホールは光すらも逃げ出せない程の超重力を発生させているもの………だったような気がするので吸い込まれそうになった時の対策は時間を停止させて逃げるしかない。
ブラックホールの内2枚が私に向かって来た。残りの2枚は自分を防衛するために使うのだろう。
そう思っていたのだが、残っていたのは1枚だけで残りの1枚はNo.6の周囲を浮いていた。
そしてNo.6がブラックホールに吸い込まれていった。
「………!?」
その光景に呆然としていると、私に向かってきたブラックホールが私を囲むように配置された。
問題はそのあとで、ブラックホールの中からとんでもない速度でNo.6が突っ込んできたのだ。
その手には黄色の絶剣が握られていて、その絶剣で私を攻撃してきた。
私が概念 加速を発動していなければ反応出来ない速度。それも時間停止レベルで速度を上昇させているにも関わらず………だ。
No.6による攻撃を辛うじて受け流すとNo.6はいつの間にか私の後ろに配置されていたブラックホールに吸い込まれていく。
No.2に攻撃しようとしてもブラックホールとNo.6に妨害されるのは確実なのでNo.6を先に撃破してからNo.2に向かうしかない。
だけど、今の私はブラックホールの引力から《過程省略》や概念 加速によってなんとか逃げている状況なので正直な話、No.6の相手をしている余裕はほとんど無い。
だが、そうしてNo.6を迎撃している内にいつの間にか黒いもやが私とNo.6の回りに展開されていた。
私は絶剣の概念 光を発動して周囲を明るく照らす。
すると、黒いもやは消えて無くなったのだが、周囲に展開されているブラックホールの数が増加してNo.6の速度がより速く、そして攻撃が直線的では無くなってしまった。
No.6の攻撃も先程までとは段違いに重くなり、受け流すことが困難になり始めている。
まさか概念 光で周囲を照らしたことによるものだろうか?光に当たったことで何らかのステータスの上昇が行われた?だが仮にそうならNo.2のブラックホールが増えた理由がわからない。
そもそもブラックホールっていうのは超新星爆発(だっけ?)から生まれる物であり、任意では生まれないはずだ。
それにあのブラックホールは吸い込むだけでは無く、吐き出すことを可能のようで、恐らくNo.6の異常な速度もそこらへんにトリックがあるのだろう。
ともかくブラックホールをなんとかしないといけないのだが、No.6がそのために行動しようとすると必ず邪魔してくるため相手も壊されると困るということだろうか?それがミスリードの可能性も考えているがその時はその時である。
「おかーさん!私なら多分大丈夫だよ!我が炎は全てを飲み込むからね!」
おや?絶刀の中二病が少しだけマシになった?
いや、そんなことを考えている暇はない。絶刀の言うとおり概念 炎を発動する。
私を中心に炎が逆巻く。
いつもなら私が概念の制御をしているのだが、今回は絶刀に任せているのでどう動かすかが一切わからない。
だが、私と絶刀は親と子であり、同一存在だったのだから絶刀がどう炎を動かすのかわかる。
逆巻く炎の間をすり抜けてNo.6が突っ込んでくる。私は先程までと違いNo.6の攻撃を絶剣で受け止める。
すると逆巻く炎が激しさを増し、炎のドームと化した。
No.2がブラックホールで炎を吸い込むが、内側から吸い込まれた分だけ炎が発生し完全に拮抗した状況が出来上がった。
我が子にここまでお膳立てしてもらったのだ。私自身が決めなければ親としての沽券に関わる。
絶剣の概念を使用すると何故かNo.2とNo.6が強化されるので絶剣には概念を使用せずにいてもらうしかない。
一方で絶刀の方もNo.2に横槍を入れさせないように集中しているので力を借りることは出来ないので、沽券どうこうより勝つためには私がなんとかしてNo.6を倒さなければならない。
だが、単体になり弱体化するかと思ったNo.6だったが、弱体化することは無く、直線的ながら先程の速度を維持して私に対する猛攻は収まる気配が無い。
絶剣でNo.6の絶剣を防御して絶刀で反撃するが絶刀で刺しにいく前に離脱されるか絶剣で防御される。それが何度も続き、絶剣同士が激突する音が炎のドーム内に何度も響き渡る。
だがいつまでまこうしている訳にはいかない。
私は賭けに出ることにした。
絶剣とNo.6の絶剣がぶつかるその瞬間、絶剣に人型になってもらい私の体に引っ付いてもらい、No.6の絶剣を掴んだ。
私の体は絶剣なので絶剣を受け止められる。それを利用して相手の絶剣を掴んで《武器創改造》を発動して絶剣を私の手のひらに収まるサイズにしてしまう。だがダメージは受けてしまうのでもしかしたら死ぬ可能性もある。そういう賭けだ。
まぁ、賭けといっても即死しなければ《高速回復》の効果で回復するから分の悪い賭けでは無いからやるのだけれど。
「えっ!?嘘!?っぐあ!」
No.6の絶剣に《武器創改造》を発動して手のひらに収まるサイズにしてから取り込まずに動揺するNo.6を絶刀で斬る。
No.6が斬られたことで制御を失い炎のドームに突っ込んでいく。
それにしても他の管理者の戦いは見ていなかったようだ。そうじゃなければ捕まれそうになった瞬間に絶剣を光の粒子に変えることくらいは出来たはずだ。
しばらくしてから炎のドームは解除され、私の前には明らかな怒りを浮かべるNo.2が焼け焦げたNo.6を抱えてこちらを睨んでいた。