第12話 炎の絶剣
「うわわっ!?」
No.8が自身の青色で液体状の体を肥大化させてヴァーンを覆うように襲ってくる。それをヴァーンは自身から炎を放出してNo.8の肉体………といっていいのか、ともかく体の一部を蒸発させることでなんとか窮地を脱していた。
しかし、ヴァーンの戦っている周辺はNo.8の体で覆われているような状態である。幸い、というべきかミナやレイテの戦っている場所まではその範囲は届いていない。
だが、着地地点などにNo.8の体があると先に蒸発させて安全を確保しなければならないため、ヴァーンはかなりの行動を制限されつつ戦っていた。
「燃え盛れ!“煌炎”!」
ヴァーンの右手から黄金の炎が放出され、地面を覆うNo.8を蒸発させていく。そして炎が徐々に範囲を広げていき、燃え盛る炎の中にヴァーンが着地する。
「ようやく、私のターンだよねっ!貴様に終焉を与えてやろう!」
素早くポーズを決めつつ、言いたいセルフを言い切り、次の攻撃に移る。
「“原初の炎”」
そうヴァーンが唱えた時、ヴァーンの周囲を燃やしていた黄金の炎が爆発して周囲を吹き飛ばし、白銀の炎が姿を現した。
「………!?」
この時初めてNo.8が驚きと戦慄を感じたのか僅かに行動が鈍る。
しかし、鈍くなったのも僅かな期間で、すぐにヴァーンに襲いかかる。その体を赤く染めて………。
ヴァーンがNo.8に現れた異変に気がつくと、咄嗟に跳び跳ねる。すると今までヴァーンがいた位置にNo.8の体が通りすぎていく。
(なるほど、徐々に周囲を埋めていくのは効果が薄いと思って自身に出せる最高速度で自身の一部を射出して当てに来たって感じかな?)
ヴァーンは四方八方から次々に飛んでくる攻撃をギリギリで回避しながら、No.8の思考を分析していく。
だが、回避したにもかかわらずヴァーンの体中が錆びたように動かしにくくなっていた。
No.8の能力による腐食だろう。恐らく蒸発して気化したNo.8の体もそういう効果をもっているのだろう。そうヴァーンは結論付ける。
「早くお母さんとレイテの手伝いをしなきゃだから、疾く燃え尽きて。」
中二病モードでは出さない低い声が出る。
身体が動かしにくい。だがそれがどうした。そう言わんばかりにヴァーンは白銀の炎を掴む。
しかし、炎を掴むまでの間にヴァーンにはNo.8の攻撃が多数当たっており、もはや動くのはヴァーンの腕だけという状態になっていた。
だが、ヴァーンの思考までも止めた訳ではなく、そしてヴァーンの思考が止まらずヴァーンが諦めていないのならばヴァーンはそこから復活する。
白銀の炎がヴァーンの腕を這い全身を覆い激しく燃え盛る。一見すると自爆、そしてNo.8もそう受け取ったのかミナとレイテのいる方向へと意識を向ける。
「私を前にして他を気にするなど、貴様にそんな余裕があるのか?」
ヴァーンを覆っていた白銀の炎が弾け飛び、ヴァーンが姿を現した。
先程までの錆びた姿は一切無く、煌めく赤の髪と金色の瞳が白銀に変わり、その体の至るところから白銀の炎が放出されている。
No.8が先程よりも大きく動揺しているようで体が振動し続ける。
それはその炎を見たことがあるからであり、その威力を自身の体で味わっていたからである。
その威力に今のヴァーンは届いていない。だが、その炎はNo.8に恐怖を植え付けるには十分だった。
ヴァーンが右腕を大きく振るう。すると白銀の炎が前方へと飛んで行きNo.8の体を蒸発させる。そしてヴァーンの振るいきったその腕にはまるで腕が剣であるかのような形状で白銀の炎が纏われていた。
No.8が体を高速で飛ばしヴァーンを攻撃する。だが、ヴァーンの体に当たる前に蒸発してしまい、ヴァーンへのダメージを与えたり腐食で動きを鈍くさせることが出来なくなる。
するとNo.8が液体状の体を人型に変えて、ヴァーンの前に立ち、その手には絶剣が握られていた。
No.8の絶剣とヴァーンの右腕がぶつかる。
激しく火花が散り、No.8の絶剣からは紫の水が溢れ、ヴァーンの右腕からは炎が燃えており、紫の水は炎により蒸発して、ヴァーンの炎は紫の水によって消火され、それを見たNo.8が口元を緩ませたような雰囲気を醸し出す。
「相殺?出来てないぞ?」
確かに右腕だけでは相殺されている。だが、腕は2本あるのだ。ならば相殺出来てはいない。
なぜなら左手で殴れば一切相殺されない一撃が相手に通るからだ。
No.8の絶剣を持つ腕に向かって白銀の炎を燃やして殴る。
すると腕が蒸発し、そして絶剣が地面に落ちる。
殴った左手を引くついでに絶剣を頂戴する。
するとNo.8がどんどん体積を少なくしていき、最終的には親指程の大きさになってしまう。
ヴァーンが小さくなったNo.8を燃やすとパキッという音とともに断末魔が聞こえ、No.1が「はい、No.8が倒されました。他の皆さんは頑張ってくださいね。」と言ったことでヴァーンの戦いは勝利で終わったのであった。