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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第三部 第一章 上位世界
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第9話 管理者No.9

「では、十分な休息はとれましたか?」

 私は無言で頷く。


 なぜ無言だったのか………、それは管理者No.9が、死神の格好をしているからである。

 骸骨のマスクに全身を覆う黒いマント、枝のような腕に宙に浮いた体、そして両手で持つ大鎌………、と死神と聞いてイメージする姿そのものが私の前にいた。


 管理者権限がどのようなものかはわからないが、私自身と私自身のスキルでそれと互角に戦えなければ勝ち目はなさそうだ。

 ………まぁ、そもそも死神と戦うというのが心理的に嫌なのだが………。


 なぜなら、死神は死を迎えた者を迎えにくるものである。もしくは救われぬ魂の救済者である。ならば、私の中にいるマルムを連れていかれる可能性があるからだ。

 そうならないようにするつもりではあるが、もしそうなったてしまったら例え不可能でも不可逆でも取り返す。そのつもりだ。

 しかし、やはりイメージというのはあるもので、大切な人を奪っていくイメージがあるので油断出来ないし、怖いと思う。


「では、ミナ・ルシーナ対No.9の勝負を始めます。………始め!!」

 戦いの開始が告げられると同時に私は概念 加速を発動して加速する。だが、相手の概念なのかそれとも管理者権限なのか加速する感覚が一向に無い。

 いつまでも使えない概念だが、減速等で打ち消されていた場合が怖いので一応発動し続けている。


 と、私がいつまで経っても動かないので待てなくなったのか、No.9が鎌を振る。

そんな位置で振っても当たらないそう思っていたのだが、突如《未来予知》が発動して未来が見えた。

 私には当たっていない。というか降った直線上にいただけなのに突如地面に倒れ伏す私が見えたのだ。


 これは………、魂をいただかれてしまった奴では?!

 咄嗟に直線上から《過程省略》を発動して逃げる。

 ホーミング機能等は無かったようで無事に避けることが出来たが、防御したとしても恐らく防御が無効化されるのでは無いだろうか?

 魂だけを攻撃する不可視かつ、防御不可の絶対攻撃………そんなのとどうやって戦うと言うんだろうか………。


 正直な話、打つ手は闇討ちと超高速戦闘くらいしかない。

 超高速戦闘に関しては概念 加速が使えないので不可能。《過程省略》を使用した闇討ちは果たしてNo.9に当たるのかという問題はあるものの、それしかないので闇討ちをする。


 物理無効とかはやめてよ…。そう願いながらNo.9が鎌を振った瞬間に《過程省略》でNo.9の背後に現れ、《過程省略》で斬ったという結果だけを与える。

 だが、私の願いは叶わなかったようだ。いくら過程を省略しているとはいえ、斬った感覚はあるのだが、それがない。つまり、No.9は物理無効のスキルか何かを保有しているということになる。


 一旦《過程省略》で距離を取る。まぁ鎌を振った直線上にいないように立ち回ると言った方が適切だろうか。

 No.9の攻撃を避けつつ有効策を考えているのだが、何一つとして有効策が思い浮かばないのだ。


 死神なんだから聖なる光とか効くんじゃない?と思ってやってみたが、救済者としての側面を持つことからか、一切効かなかった。

 とゆうか、死神に聞く攻撃ってなんだろう?死神に何か特定の何かが効くとか、聞いたことがない。死神から逃れる方法ならいくつか思い付くんだけど………。


 まぁ、深く考えていてもしょうがない。

 そう思った私はとりあえず魔法で攻撃してみた。まぁ、只の魔法では無く、概念 斬撃を付与した魔法だけども。


「炎よ敵を焼き尽くせ。“プロミネンスファイア”!!」

 《魔帝》によって詠唱が省略された魔法が放たれる。

 地面が溶けて結晶化するほどの熱量を持った炎がNo.9に向かって飛んでいく。

 No.9はその場から動かずに炎に飲み込まれていった。


 よし、終わった。勝ったよ。

 そう思ってNo.1に確認をするが、「No.1も確認中ですから待っててください。」と言うだけだった。

 ここで、勝った?とか終わった?とか言ってしまうとフラグになり、強くてコンテニューされてしまうので、勝った。と言い切った。これでフラグは折れた。


 炎は未だに消えずに煌々と燃え盛っている。

 だが、炎が爆発し、中からNo.9が姿を現した。


 ………フラグ………。

 いや、落ち込んでいてもしょうがない。

 よく見るとNo.9も無傷とはいかなかったようで、黒いマントは大部分が焼け落ち、ガリガリの体が姿を現し、元々外に出ていた腕は火傷でえげつないことになっていた。


 これは、何発もさっきのを撃ち込めば勝てるかな?とりあえずやってみよう。

 打てる手が無いときは思い浮かんだこと、直感を信じてやるのが一番いいとお父さんが言っていたような気がする。


 《魔帝》の効果をフルに使い、先程放った“プロミネンスファイア”を発射する。

 そしてNo.9が炎を消した瞬間次の“プロミネンスファイア”を発射し、それをループした。

 すると、9回目でようやくNo.9が地面に墜ちた。


 No.9にノイズが走り、No.9がいなくなり少年が現れ、No.9がいた場所には少年とNo.9の大鎌だけが残った。

 と同時にNo.1が勝利宣言を行い、私の勝利が確定した。


 恐らくこの大鎌がNo.9の絶剣なのだろう。そう思い大鎌を取り込む。

 すると、管理者権限“精神”が追加された。

 どうやら、選択した精神をすべてから保護する権限のようだ。わかりにくいが、精神にだけ私の《干渉無効》を発動するとかそういう感じ………いや、罪の暴走からすらも保護できるということか………?ならとんでもない権限だ。


 精神、恐らくNo.9は相手が恐れているものに変化する権限だったのではないだろうか?それならば死神だったことやノイズが走ってから姿が元に戻ったことにも説明がつく。


 ………と、私が考えごとをしている間にNo.1に昨日休んだ街に飛ばされたのだった。

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