第4話 平行世界に向かうために…
「とりあえず街を見て回ろうぜ。何か使えそうな物があるかもしれないしな。」
「そうだのぅ、ミナの元に転移できるアイテムとかあれば楽なんだがのぅ…。」
「そうですね、そんなアイテムがあれば楽ですね。」
カノアさんがアイテムの案を出すとラフィスさんがそんなの流石に無いですよー。と言わんばかりに声を出した。
「………やっぱり今の状況だと、外、歩きにくいですね………。」
僕がそう言うと全員が首を縦に振り肯定する。
何故そんなことを言うのかというと、薫さん曰く有名人状態になっていて周囲を街に住む人に囲まれているからだ。
そんな状態を打破しようと僕達がギリギリ通れる狭い通路に入る。………が、狭いので住人が前方にはいなくなったのだが、後方からゾロゾロと着いてくる。
薫さんはその状況が嫌になってしまったのか《潜影》で僕達の影に潜りこんでしまった。
それを見た全員が薫のことをうらやましいと思ったのは言うまでも無いだろう。
人混みの完全回避とは海那でもうらやましがるスキルだろう。とはいえ海那の場合は聖剣を《剣神》で動かすことで地上の人混みならば回避できるのだが………。
「えっ?!」
…と、そんなことをいいながら進んでいくと、先頭を行く僕の目の前にいきなり商店が出現した。
警戒しつつ入って見ると中はかなり広い空間になっていて通路以外の場所にアイテムが乱雑に置かれていて、通路の奥にカウンターと店主とおぼしき男性がいた。
中に街の住人が入ってくることは無く、むしろ居なくなってしまった。という方が適切だろう。
「何が売っているのでしょうか?」
「いろいろじゃ。お主らが望むアイテムがあるかもしれんぞ?」
「では見させてもらうのぅ。」
そう言うと全員が思い思いにアイテムを手に持ってみたりし始めた。
「ぬぉ!?」
しばらくアイテムを見ていると、ボフン!という音が店内に鳴り響き、音の鳴った方向に向かうと、そこには普段の凛々しさ(?)はどこかに消えて全体的に小さくてかわいくなったカノアさんがそこにいた。
「にゃんじゃ?これは?」
「それは時戻しの砂じゃな。お主は運がいいほうじゃな。運が悪ければ産まれる前じゃわい。」
店主がゲラゲラと笑い、カノアさんが店主に文句を言おうとするのだが、呂律がまわりにくいのか、言葉がややたどたどしい。
「元に戻す方法は?」
「なぁに、時間が解決してくれるわい。」
具体的な時間は言わなかったものの、時間で解決するなら放置してもいいのかもしれない。とこの場の全員が思った。
「あ、忘れてたわ。」
全員が持ち場に戻った時、薫さんが思い出したように、スキル《影分身》を使いアイテム探しの人数を50人程増やした。
すると5分程度で僕達が探していたアイテムを発見した。
「おい、見つけたぞ!」
全員が薫さんの分身14の元に集まり、他の分身も薫さんの影に消えていく。薫さんにアイテムを渡して分身14も影に消えていった。
「見つけたか。それは仲間の元に即ワープ君3号機じゃ!!!いや、このネーミングは開発者が付けたものじゃからな?」
ネーミングセンスがいくらなんでも無さすぎるだろ………。という言葉が込められた視線が店主に刺さる。
「とりあえずこのPS○の説明を頼む。」
「これはP○Pなんて名前ではないぞ?まぁいい。説明をするとしよう。」
使い方を簡単に説明すると、まず機械に魔力を流すと機械が起動し、ディスプレイに自分の仲間の状態と位置が把握できるようになる。
次にカーソルをワープしたい仲間の名前に合わせて○ボタンを押すと仲間の場所にワープできる。
複数メンバーで移動したい場合は体が触れていれば触れている全員が移動できる。
という感じだった。
「で?値段は?」
「お主らの経験値じゃ。なに、レベルが1000レベルまで下がるだけじゃよ。」
レベル、いや、経験値が料金になるのは良かった(?)が問題はその量だ。
たしかにレアなアイテムなのはわかるのだが、いくらなんでも高いとは思う。
全員が店主に背を向けて買うかどうかの会議が始まる。
「どうするかのぅ?」
「買う、一択だろ。下がったレベルは街の周囲にいるゴブリンを倒せばいい。」
「ですね。」
「危険な賭けになりますけど、やるしかないですからね。」
会議、というよりは決定事項の確認だった。
「では、買う。」
「ふぇっふぇっふぇっ、毎度ありぃ。」
レベルはしっかりと1000に戻っている。
探し物が見つかった僕達がホクホク顔で店から出ると、現れた時と同じくいきなり消えた。
「まさか、 欲しい物がすぐに手に入るとはな………。ただ、しばらくはレベルをあげなきゃな。」
消えた店には何も触れずに薫さんが呟く。
それに同調するように全員が首を縦に振った。
宿に戻った僕達は翌日から下がったレベルを元に戻し、それ以上にするためにしばらくモンスターを討伐することにした。