第3話 管理者の居場所
いつもよりちょっと短いです。
「いやぁ、助かりましたよ…。危うく管理者共の元に送られる寸前でしたから………。」
お礼を言ってくる大勢の中から1人が代表して出て来てそう言った。
「管理者の元に送られる寸前?ここは管理者の管理する世界ではないのかのぅ?」
「………え?そんなことも………、っ!まさかっ、下位世界から来たんですか?!」
カノアさんの質問は無かったことになり、質問を別の質問で返されてしまった。
「まぁ、そうなんだが………、この世界のことを教えてくれないか?」
薫さんがそう言うと、代表の人は静かに話始めた。
話をまとめると、
管理者によって管理されている世界ではあるのだが、管理者による徴兵があり、数十年に1回徴兵官が現れ街や村の人を強制的に徴兵する。徴兵されると元の人とはかけ離れた兵士にされる。
この世界の最低レベルは10000で、それ以下は存在しない。
それ以下のレベルだとゴブリンにすら勝てないらしい。
………勝ったぞ?とはカノアさんの言葉である。
この世界と管理者のいる場所は平行世界のようなもので基本的には管理者に連れていかれない限り向かうことは出来ない。
ということだった。
話を聞くと薫さんとラフィスさんは考え込み始め、カノアさんは「わしはゴブリンに勝ったぞ!」と言いふらしている。
代表の人以外の人はそれを見て「当たり前だ!」と笑っているのだが、代表の人は全体的に顔の表情が硬くなっていた。
(まずい………下位世界から来たとなるとレベルは10000を越えることは無いだろう。しかし、彼らは徴兵官を倒し、さらにゴブリンまで倒しているのだという。下手なことを言ってしまってこの人たちと戦うようなことになったら街は壊滅的な被害に遭うだろう。それだけは回避しなければ………。)
海那がこの場に居たのなら「戦う?私達の害になることをしなければ、無い無い。」と言っていただろうが、マーガム達の中にそれを言うような人物は居らず、代表者はしなくていい心配をすることとなった。
「皆さん、お疲れでしょう?我々の街で休んではいかがでしょうか?」
「どうします?………………では、お言葉に甘えて。」
ラフィスさんが全員の目を見て確認して話を進めた。
人の戻った街には活気が戻っていた。
マーガム達は代表の人の後ろを着いていくのだが、人とすれ違う度にお礼の言葉や物を貰うので、代表の人に宿に案内してもらい街の人と会わなくてもいいようにしてもらう。
宿の部屋に入るなり、ラフィスさんが話を切り出す。
「どうしますか?管理者の元に行くのも楽そうじゃ無いですよ?」
「平行世界だからな………、なんかいい案あるか?」
「徴兵される………はリスクが高そうですからね………。」
しばらく話し合ったのだが、いい案が出てこない。
ミナさんがいたのなら、こんな場面でもすぐに解決できるかもしれない。
だが、今ミナさんは囚われの身である。
いつも助けてもらっているからこそ、今回こそは僕達がミナさんを助けるのだ。
その思いは全員が持っているものであり、助けに行きたい。にもかかわらずその手段が思い浮かばない。それは全員を焦らすには十分だった。
「早くどうにかしないと、おねぇが………。」
「わかっておる!だが方法がわからんのだのぅ………。」
「なにか妙案は無いんですか?薫さん?」
「無い。とりあえず一旦考えるのをやめよう。今の状態は良くない。」
薫さんの発言によって全員の焦りは徐々に収まっていった。
「まぁ、外でも歩いて気分をリフレッシュしようぜ?」
薫さんが部屋の扉を開けて外に出ていく。
「そう………ですね………。」
全員が渋々といった様子で薫さんの後ろに着いていった。
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「あの子達は平行世界に行きたいみたいだよ?どうする?」
「そうだね。このまま移動手段が思い浮かばないようなら手を貸してもいいかもね。」
街の外にある森でそんな会話がなされているとはマーガム達は思いもしなかったのであった。