第1話 桁違い
~マーガム視点~
「よしっ、ようやく穴が開いた!」
ミナさんのお父さんである空さんと薫さんがミナさんがいると思われる上位世界へと続く穴を開けることに成功する。
薫さんがスキル《意思あらばすべてを成す》を使い、空さんが上位世界に繋がる穴が開くまで別世界への穴をランダムに開けたのだ。
僕達は今日までに地獄のような特訓を経て、僕達のレベルは全員が2000を超えてステータスが表示不能になり、3つの概念の発現と1つの罪の自覚が終了している。
そして僕と僕の武器であるパイルバンカーだけがミナさんに何かあったのか変化していて、僕はステータスが表示不能では無く測定不可になっていて、パイルバンカーの形状や機構は一切変わらないが、白銀だった色は真っ黒になり、防御力と攻撃力が格段…というよりも次元が違うレベルで上昇していた。
今まででも撃てば衝撃波によって直線上に存在する物体は破壊され地面は抉られる、そんな威力だった物が、変化してからは撃った瞬間に直線上に存在する物体が消滅し、さらに世界にヒビを入れる………どころか世界を破壊する威力になっていた。
「おいおい、マジかよ…。」
空さんが作った空間で威力の確認をした時にその威力が判明したのだが、あまりの威力の高さに空さんに引かれてしまった。
壊れる空間からなんとか空さんに脱出させてもらえなかったら壊れた空間に永久に囚われてしまっていたかもしれない。
………と、そんなこともあり、パイルバンカーの威力について検証をした結果、機構に込める魔力を限界まで押さえれば元の威力よりかなり上の威力に押さえることが出来たので、これからは僕の少ない魔力量でも撃つことができる。
「早く行け!今なら管理者にも気付かれていないかもしれない!」
そう言われて上位世界に侵入する前に最終確認をしておく。
メンバーはいつものメンバーの僕、カノアさん、薫さん、ラフィスさん、そしてディアスだ。
空さんやミナさんのお姉さんであるアンスさんは神と邪神のバランスを取るために残らなければならず、もちろんそんな理由で諦めはしなかったが、ミナさんが戻る世界を守るためと渋々残ることになった。
セイスさんは空さん達の補助をするみたいだ。
「アイテムは大丈夫です!」
「では、行くかのぅ。」
「早くご主人様を連れ戻りましょう。」
「だな。」
「うん。」
「絶対に海那と一緒に戻ってこいよ?」
そうして僕達は上位世界に繋がる穴に次々入っていった。
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穴を抜けるとそこは木が生い茂る森だった。
一見すると普通の森だったのだが、そこに生息している生物が規格外だった。
《鑑定》してみると、なんとすべてのモンスターがLv10000を超えていた。
こちらに気が付いていないのか、こちらを襲っては来ないので助かっていたのだが、他のモンスターと離れた時に現れたゴブリンと戦闘することになった。
カノアさんがゴブリンに向かって突撃し、薫さんが気配を消して姿を隠した。僕もカノアさんと一緒に前に出つつ《感知》を発動して周囲の気配にも気を配る。僕の後ろからディアスが火魔法を発動し徐々にゴブリンを削り、ラフィスさんが弓を構えてゴブリンに向けて弓を発射する。
他のモンスターに気付かれてしまうと8000もあるレベル差のあるモンスターを2体も相手にすることになってしまうので、気付かれるのは流石に厳しい。
だが、ゴブリンLv10000もそう易々とやられるはずもなく、カノアさんの一撃を食らってもダメージはほぼ無く、ディアスとラフィスさんの攻撃もダメージを与えているとは思うが、自己再生系のスキルなのか、すぐに回復してしまう。
「これは…、流石に想定外だのぅ…。」
今のところ全員ダメージを食らってはいないが、それも時間の問題だろう。
と思ったその時、気配を消していた薫さんがゴブリンの背後に現れ、《急所攻撃》《弱点特効》《限界突破》を発動して首筋に短剣を突き立てた。
「まぁ、Lv10000だから………っな!!」
《急所攻撃》専用の音が鳴りゴブリンが倒れた。だが、そこで終わることは無くゴブリンはすぐに起き上がろうとしたので、《遠隔防御》を発動して透明な壁でゴブリンを拘束する。
するとゴブリンは脱出しようともがくが、パイルバンカーの防御力が高過ぎるのか、透明な壁にはヒビすら入らない。
その後は拘束しているゴブリンのスキルをカノアさんの概念の領域の火魔法で使用不可にしてから攻撃することで倒した。
だが、戦闘が長引いてしまったため、周りにいるモンスターが寄ってきたため、すぐに情報を共有してその場からモンスターがいない地点まで逃げた。
「へぇー、ゴブリンをあんなやり方で倒すなんて、初めて見たね。」
「そうだね。厳しそうだったら助ける予定だったけどその必要は無かったようだね。」
端から見ればカップルに見える2人がマーガムの《感知》の範囲外からマーガム達を見ていた。