第12話 ボス部屋と魔法陣
扉を開き、ボス部屋に入っていく。
マーガムとマルムを抱えるのを止めて、私は刀を構えて、周囲を観察する。
周りには、木が生い茂っていて、所々に人が1人通れるくらいの穴があるのがわかる。
《剣域》がボスが出て来たことを認識した。
そして私達の前に現れたのは、オークキングだった。
ギルドで聞いた話だと、オークキングはAランクの中でも、並みの強さと危険度なのだが、自分よりも下のランクのオークを自由に操ることが可能で、オークの数によってはSランクすら越える危険度になるらしい。
今回は、Sランクを越える危険度に該当するのだろう。
なにせ、所々に存在する穴のすべてから、オークが押し寄せてきているのだから。
《剣域》で認識出来るだけでも200は軽く越えている。
私は、刀をしまい、マーガムとマルムを抱えて、オークキングに向かって全力で走った。
その間、僅か1秒である。
オークキングに向かって、速度を落とすことなく飛び蹴りを放つ。
オークキングが吹っ飛んでいき、見えなくなる。
すると、オーク達がすさまじい勢いで、穴に向かってUターンしていく。
どうやらオークキングを倒して、他のオークには逃げてもらう作戦は上手くいったようだ。
オークキングを飛ばした地点に着くと、オークキングのドロップアイテムが落ちていた。
【オークキングの魔石】
この世界での魔石は、魔力を貯めておけるという性質がある為、非常に高価で、最低でも白金貨10枚という代物らしい。
そんなことを聞いたら、金銭感覚が普通の市民な私は、手が震えるじゃないか。
そんなことを考えていたら、『次へ』と書かれたものと、『戻る』と書かれている2種類の魔法陣が出現し、私達は『戻る』の魔法陣の上に立った。
すると、魔法陣から光が溢れだし、私達はダンジョンの入り口へと戻ってきていた。
私達はギルドに戻り、ダンジョンの到達階層の報告と、【オークキングの魔石】以外のドロップアイテムをすべて売り払う。
オークの宝珠が、金貨20枚に、
豚肉は、金貨1枚と銀貨20枚になった。
お金を受付嬢から受け取ったあと、受付嬢に「ギルドマスターが呼んでいます。」と言われて、ギルドマスターに会いに行く事になった。
ギルドマスターは、元・冒険者だったのか、全身から覇気のようなオーラがにじみ出ている禿げ頭のムキムキおっさんがいた。
「良く来てくれた。
お前さんは、ギルドに登録してから僅か3日で、ダンジョンの中で一番難易度の高いと言われている、ホゾンのダンジョンの10階層をクリアした。
10階層のボスのオークキングは、無限に湧くオークのお陰でSランク相当になっていたはずだ。
どうやって攻略したんだ?」
「オークの間を突っ切ってから、オークキングをぶっ飛ばして光に変えました。」
嘘は言っていない。
1秒で突っ切ったりとか、飛び蹴りで倒したとか言ってないだけで。
「そんなことが出来れば苦労しねぇよ!
………まぁいい。本題に入るぞ。
ホゾンの街近辺に変異種のオーガが出現した。
最近召喚された異世界勇者がボロボロで報告しに来た。
報告によると、紫の皮膚を持ったオーガのようだ。」
元クラスメイトボロボロですか…
…ん?
この流れはまさか…いや、でも私まだBランクだから警戒だけしとけって話だよね?
「この変異種オーガを討伐するための、部隊を編成する。
お前さん達にもこの討伐隊に参加してもらいたい。」
良かった…
お前さん達だけで倒しに行けとかじゃなくて。
しかし問題がある。
私の刀は普段は、鞘にしまって腰にさげているが、白銀の刀身を持つ剣なんて、聖剣以外に存在しないのは既に知っているので、他の冒険者に見られる訳にはいかない。
「私は戦っている姿を誰にも見せたくないので、変異種オーガ戦は参加したくないです。」
「戦いに参加はしなくても、付いていってはもらうからな?
物資の補給とかいろいろあるからな?」
どうやら、強制参加のようだった。
「まぁ、今回の討伐作戦にはSランクも参加しているから、お前さんの出番も無いだろうがな。」
…それはフラグなのでは。
とりあえず討伐は明日の朝方らしいので、私達はギルドを出て、宿屋を探した。
マーガムとマルムも一緒に寝られる宿を探していると、丁度いい宿を見つけた。
なんと、銀貨50枚で1泊出来るようだ。
私達は明日の準備をしてから、小の字で寝た。
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翌朝、ギルドに向かうと既に結構な数の冒険者が集まっていた。
しばらくしてからすべての冒険者が揃ったようで、変異種オーガを討伐するために街を出て、街の周辺を警戒しつつ探索していくのだった。
そして1時間くらいが経過して、ついに私達は変異種オーガを発見した。