第45話 上位世界
管理者にようやくまともなダメージを与えることに成功した。
そして怯んでいるはずの管理者に向かって走り出し、聖剣を振り抜く。
だが、管理者はその攻撃を紙一重で回避し、私のお腹を蹴り飛ばし、先程衝撃波を出した地点まで戻されてしまった。
「貴様、その剣は…、何故絶剣を保有している?!」
聖剣じゃ無いのか…、この剣が絶剣ならば、私自身も絶剣ということなのだろうか…?
気にはなるが、家族を傷付けた責任を先に果たしてもらってからゆっくり聞くことにしよう。
「あなたに話すようなことは無いです。」
そういいつつ、管理者に向かって絶剣を振り下ろす。
当然、絶剣は防御されてしまうのだが、防御の隙間から右足で蹴りを行い、蹴りが当たった瞬間に《武器創改造》を使用して右足の指先に剣を付けることでダメージを大きくしたりしているので、管理者の体力自体は減らせている。
「下位種に、この私がここまでされるなど………!!………っ!?」
「ここまでやられてちゃ管理者は名乗っちゃダメでしょ?」
私よりも小さい少女が管理者の後ろにいきなり現れ、管理者の胸を手で貫いていた。
「き、貴様…!他の世界群には不干渉の、はずだろ!」
「ごめんね?でもこの子は私達が待ち望んだ子の可能性があるからさ?あなたが私達の約定を破ったんだから………死・ん・で?」
少女が手を抜くと管理者が倒れ、管理者に取り付かれていたエクスが胸に穴の空いた状態で管理者のいた場所に横たわっていた。
レムナを殺したとはいえ、仲間だった者が死にそうなのを放っておくことはしたくない。
エクスにはこれから贖罪してもらうつもりだ。
それが出来ないのなら、今度こそ死んでもらうしかないだろう………。
エクスの元に向かおうとすると、管理者を殺した少女が私の前を遮るように両手を広げていた。
「あの、管理者を倒してくれてありがとう。それで、そこを通して欲しいんだけど。」
「お断りしまーす。こんなやつ放っといて、私とお喋りしましょ?」
そういうならまずエクスの治療を先にやらせてほしい。
「エクスを治療したらお喋りするから、そこを通して欲しいんだけど。」
「それはなんで?なんでこいつを治すの?あなたはさっきの管理者ですら治すの?」
「管理者はさすがに治さないけど、仲間だった者に目の前で死なれるのが嫌なんだよ。」
「ふーん、やっぱりあなたは面白いわね!」
そう少女が言うと、私と少女以外の時間が動き始めた。
私が苦労してようやく倒せそうだった管理者を一瞬で屠ったこの少女の強さは、はっきり言って私の全力でも5分も持たないだろう。
お父さんやお姉ちゃん、マーガムが私に近寄り状況を聞いてくるので答えていると、少女の姿は無くなっていた。
思い出したようにエクスの治療を開始すると治療は驚く程簡単に終わった。
胸に空いた穴は私の拳くらいの大きさがあったのだが、私が治療を開始した頃には細胞が自己再生を始めていて、私は回復魔法で最後の治療をやっただけだった。
エクスに対する処遇についてはこの場にいる全員は納得してくれたが、学校にいる神達が納得するかどうかだ。
ひとまず全員への状況説明を終えると、空からさっきの少女の声が聞こえた。
「ミナ、あなたは私達管理者が産み出されることを待ち望んだ存在の可能性があるの。それに私個人としてもあなたには興味があるから私達のいる[上位世界]に来てもらうよー。」
「いや、嫌です。」
お辞儀もセットで行かない姿勢を全面に押し出していく。
しかし、私の絶対に行かないアピールは無視されてしまったのか、私の足元に魔法陣が描かれる。
「お父さん!お姉ちゃん!私の仲間を守って!マーガム、………。」
私は伝えたいことを言い切れずに転移させられてしまった。
~マーガム視点~
ミナさんが管理者に誘拐されてしまってから2日が経過した。
僕はミナさんのお父さんに元の世界に戻して欲しいと頼むと二つ返事で僕をカノアさん達の元へと転移させてくれました。
僕が戻ってくると皆が頭を抱えてしまいました。
どうしたのかを聞くと、どうやらレベルアップが連続して行われているため、頭が痛いみたいです。
どうやらミナさんが他の世界で倒した神獣や邪神を倒した時に手に入れた経験値が僕の《経験値共有化》によって保管されていて、それが一気に受け渡されたみたいです。
僕が神の学校で起きた出来事を話すと、皆が思ったことは同じだったようで、ミナさんを助ける。その方針で意見が一致しました。
それから1年後………、全員が神になって、さらにミナさんのお父さんとお姉さんによる過酷な特訓を乗り越えた僕達は[上位世界]に侵入することになった。
第二部 完
駆け足になってしまいましたが、第二部完です!
一旦完結ですが、第三部が始まる次回更新は13日の25時になります。