第44話 三位一体
聖炎大神剣が折れた。
それは私にとっては予想外のことであった。今まで刃こぼれすらしなかった聖炎大神剣が折れるとは、誰が予想出来ただろう。
「2人とも、大丈夫!?」
折れた刃をなんとか回収し、握ったままの聖炎大神剣に問いかける。
「ぅう………、ギリギリ駄目かも………。自動回復が阻害されてるせいで、結構厳しいよ………。」
回復魔法を管理者から逃げながら発動するが、聖炎大神剣がその効果を弾いてしまう。
………、私の《干渉無効》が2人にも付与されているとは思わなかった………。
どうする!?ここで2人を助けられないと、私が管理者に勝つことは絶望的になるだろう。
それ以前の問題で、私はもう仲間を失う気は毛頭無いので、もし失うようなことになれば私が戦うことが出来るかどうか、怪しいところだ。
全力で考える………!
2人を救って、なおかつ管理者に勝つための道筋を。
しかし、悠長に考えている時間を管理者が与えてくれるはずもなく、絶え間なく攻撃を加えてきている。
恐らく管理者は私も切れてしまうと思える為、私の体の動きが恐怖により鈍くなってしまいギリギリで避けることになってしまう。
どうする、どうする!どうする!!
考える為の逃亡も空しく、遂に管理者の攻撃が私の首を捉え、首を刎ねるように横向きで剣を振るわれた。
だが、その瞬間、私は閃いた。
私から聖炎大神剣は産まれたのだと。
つまり、私という神剣の一部として認識できるのではないか、そして《武器創改造》によって私の一部に戻せるのではないか?と私は閃いた。
迫り来る攻撃、停止した時間の中、私が迷っている時間は存在せず、私は私と聖炎大神剣に《武器創改造》を発動した。
私を光が包み、一瞬警戒した管理者だったが、その光が無害であると判断し攻撃を続行し、私の首に管理者の剣が当たった。
その瞬間、当たった地点が爆発したことで管理者が様子を見る為に後退した。
爆発によって発生した風により、私を包んでいた光が霧散し、私の姿が見えるようになる。
私が土台の為、見た目は変わらない………いや、少し大人びた感じになり、髪の毛と右目の色が変わっている。
髪の毛の色は基本が白銀で毛先が炎のような赤色になっていて、右目は鬱金色になっていた。
現在、私の中でヴァーンとレイテが私とステータスをすべて足した上で共有している状態になっていて、すべてのステータスが軒並み3倍になっているような状態だ。
さらに聖炎大神剣の時に阻害されていた自動回復も私と融合したことで阻害を無視して回復し始めた。
ひとまず安心したが、後退していた管理者が戻ってきて私に向かって剣を振るう。
私は髪の毛を1本引き抜き、《武器創改造》によって聖炎大神剣より少し大きい聖剣(なぜかそのサイズしか選べなかった)を作り出し、攻撃を受け流そうとして………失敗した。
三位一体になって異常なまでにステータスが上がったことで、私の感覚が体についていけていなかったのだ。
だが私が感じるはずの痛みはやってこなかった。
聖剣は折れることは無く、管理者の剣を受け止めていたのだ。
「「………?!」」
私も管理者もびっくりしている。
私は神剣が折れたのに三位一体状態で作成した聖剣が管理者の剣を受け止められたことに、管理者は剣を受け止められたことに驚いていた。
(すごい聖剣が出来たもんだなぁ…。もはや神剣じゃ無いかと思うんだけど………。)
(まさか………、絶剣を受け止める剣が、いや、そんなはずは………、)
受け止めたことに対しての反応の差はあったのだが、2人が戦闘に意識を戻すのはほぼ同時だった。
私の中でヴァーンとレイテがすごく不機嫌になっている。
それはもちろん聖剣に対しての嫉妬であり、私達が聖剣と同じくらい強ければ、母である海那が管理者に勝つための負担を減らしてあげられたのに………、という優しさによるものだ。
「大丈夫、2人の力があるからこそ、こんなにすごい聖剣を作ることが出来たんだよ、だから、ありがとう。」
その優しさに報いる為にも絶対に管理者に勝とう。
聖剣を構え、管理者に向かって走り出す。
管理者も私に向かって走り出し剣を振り上げ、私が攻撃範囲内に入った瞬間剣が振り下ろされる。
管理者の攻撃を最小限の動きで避け、管理者の懐に入り、左手で胸ぐらを掴んで地面に向かって激突させる。
もちろんそれで終わる訳は無く、勢いそのままで回転し、聖剣を管理者に向かって振り下ろす。
管理者があと少しの所で回避してしまうが、私には《剣神》の剣技がある。
振り下ろされた聖剣を釣りをするように勢いよく持ち上げる。すると、聖剣から衝撃波が発生し、管理者の虚を衝けたようで直撃させることに成功した。