第43話 プレゼントの中身
管理者に聖炎大神剣を振るう。管理者は一瞬で避けてしまうが、今の私には逃げる管理者を認識することができる。
見える世界が一変している。
それはお母さんからのプレゼントによる効果だろう。
スキル《極限共鳴》それがお母さんからもらったスキルだ。
《極限共鳴》それは私と直接の繋がりがある者のスキルや概念といったあらゆる能力を無制限で使用できるようになるスキルだ。
お母さんがこのスキルを封印していた理由がなんとなくわかる。
幼い頃にお父さんやお母さんのスキルが使えたら、私は際限無く使ってしまい世界の敵になっていた可能性が高い。きっと、そうならない為に封印していたのだろう。
私と直接の繋がりがあるのは、お父さんとお姉ちゃん、そしてマルムの霊魂石と私が融合しているのでマーガムも繋がりの中に入っている。
なので、お姉ちゃんの《過程追加》を管理者に使うと管理者の出てくる位置がわかるようになっていた。
《過程追加》を使うことでわかったことだが、どうやら管理者は短時間だけ時間を止めることで予備動作が無い瞬間移動を実現しているようだ。
仕組みさえ解れば対処はできる。
概念 加速によって移動速度は現在光速をやや超えているが、それでは時間の停止した世界には行けないだろう。
これを解決するのなら、相手お同じように時間停止の魔法を使って世界の時間を止めるか、自分が時間の停止した世界に侵入する。くらいのことをしないと、解決はしないだろう。
管理者の場合は世界の時間を止めて移動しているので、《過程追加》によって管理者の移動経路を明らかにして、《過程省略》によってその位置を先回りするように聖剣を配置する。
お姉ちゃんがやっていたのも《過程省略》を使わないものの、ほとんど同じような原理で管理者の攻撃から私を守ってくれていたらしい。
「海那、私達しか管理者の動きを追えないから、あなたが攻撃で私が防御するわ。」
お姉ちゃんがそう言うので、私は持てる力をすべて使い、管理者を倒すことに集中することにした。
概念 加速では光速を超えた辺りが限界のようで、その限界を《限界突破》を使うことで超える。
それでも時間が停止した世界に侵入出来るほどの速度にはならず、あと一歩が足りない。
なので私は足りない一歩を満たす為に、《極限突破》を発動してすべての限界を超えた。
ここまでやってようやく、時間を止めることに成功する。
今回私が《極限突破》まで発動するのを躊躇しなかったのが、お姉ちゃんのスキルの中に、《身代わり》というスキルがあり、そのスキルが自分が作成した物に自分の負ったデメリットのみを押し付けることが出来るスキルだったので、《極限突破》のデメリットを聖剣に押し付けることでマイナスを無かったことに出来るからだ。
停止した時間の中では加速なんてすることは出来ず、私の限界、というよりも先に世界の限界が来てしまった。
私の体感的には私自身は停止のその先に行ける気がするのだが、とりあえず現状で満足し、管理者を叩くことにした。
停止した時間の中では物質はすべて硬化していて、私ですら斬ることが出来ない程の強度になっていた。
さらにスキルの発動も《剣神》の空間認識は出来るが、剣を操ることは出来なかったり、《過程省略》も使えないようなので、常時発動系のスキルは使えるが任意発動系のスキルは使えないのかも知れない。
管理者が時間停止中に攻撃して来なかったのはこの為だろう。
私が動けるとも知らずに管理者が私の元まで近づいてくる。
眼前まで近寄ってきた管理者に向かって左側から横一閃に剣を振るう。
「っ何!?」
管理者が紙一重で避けるが、出来た隙を逃さずに踏み込むと共に切り上げる。
管理者に避けさせることなく傷を与え、その傷を燃やすことで追加でダメージを与えようとするが、それは魔法によって産み出された水で消されてしまった。
「私に傷をつける………か、他の管理者ならまだしも、私の世界群から産まれた下位種にそれが出来るとはな………。これを抜く必要は無いと思っていたが…少し試してやろう。」
管理者が感心したように言い、管理者がエクスの剣を抜くと、以前見た物よりも装飾などが変わった聖剣がその手にあった。
以前までは聖剣だったが、今は恐らく神剣もしくはそれ以上の剣なのかもしれない。
管理者が急接近し、剣を振り下ろす。
私は聖炎大神剣の腹の部分で受け流してから、聖炎大神剣の腹の部分を使って管理者を弾き飛ばし、時間が停止した世界を駆け抜けて管理者に斬りかかった。
そして聖炎大神剣と管理者の剣、その2つが真正面からぶつかった時、聖炎大神剣が斬られて2つに折れてしまったのだった。