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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二部 第五章 聖邪戦争
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第40話 決戦

「ここが………最終決戦の場所だ。」

 お父さんがそう言うが、周りには破壊の跡しか残っておらず、お姉ちゃん達が近く(少なくとも《剣神》の範囲内)にはいないことがわかる。


「近くには誰もいないみたいだけど、どうするの?」

「地那の元に向かう。」

 お父さんが迷うことなく進んで行くので私は後ろに着いていく。

 どうやらいきなり戦闘が始まるのを嫌ったお父さんが転移位置を意図的に戦場から離したようだ。


 しばらく進むと金属が激しくぶつかり合う音が聞こえる。

 急いで音の発生地点に向かうと、お姉ちゃんと創造主が戦っていた。


 戦況はお姉ちゃんの方が優勢なようで、創造主に次々とダメージを与えていく。

 だが、致命傷は与えられていないようで、激しい戦闘は続いている。


 それにしても、人形で攻撃していることにもびっくりしているのだが、それ以上に人形のフォルムとお姉ちゃんと人形から流れ出ている闇の方に意識が持っていかれる。

 あれが暗滅主の本気………。

 今の私が本気で戦っても勝てる気がしない。


 しばらくすると両者がお互いに短い時間だが、攻撃を止めた。

 その瞬間を待っていたかのように空間に人が1人通れるくらい小さい穴が開き、中からマーガム、クレーメさん、そしてエクスが現れた。


「え?!みんな………なんで!?」

 なんで、なんでみんながここにいるのか、その答えは大体予想は出来る。

 恐らくエクスが私がやるのと同じようにスキルを使って私達がいる空間にやって来たのだろう。


 私が《過程省略》でみんなとの距離を一瞬で無くし、マーガムとクレーメさんを掴んでもう一度《過程省略》を使うことでなんとかお父さんの元に戻ることが出来た。

 だが、エクスを残しているので再び《過程省略》を使ってエクスをこちらに連れてこようとするが、エクスの姿はそこには無かった。


 探そうと思ったのだが、お姉ちゃんと創造主の戦いが激しくなり、不用意に移動すると攻撃に巻き込まれそうなので止めざるを得なかった。


「それじゃあ俺も行ってくる。」

 そう言ってお父さんがお姉ちゃんの元まで走っていく。

 マーガムとクレーメさんは状況に着いてこれていないようなので、私がかなり省略して説明する。


「そういうことでしたのね………。」

「ということは、ミナさんが本当の創造主ということですか?」

「そういうことになるね。」

 クレーメさんは何かを考え込むように黙り、マーガムは状況を理解できたようだ。


「私も行くね。」

 そう言いつつマーガムの頭を撫でる。もふもふである。

 少しだけ心が落ち着いた。

 またこの感触を味わう為にも、私は絶対に全員で生きて戻ることを改めて誓う。


「マーガム、クレーメさんを何があっても守ってね。」

「………はいっ。」

 涙を堪えた瞳で私を見るマーガムを見て、心が痛むがここは行かなくてはいけない。


 私はお父さん達のいる戦場へと向かった。


「父さん、あの子は巻き込まないんじゃ無かったの?」

「海那自身の力でここまでたどり着いたんだ。俺には止められない。」

「えっ?!あの子、海那なの?!」

 ………お姉ちゃんが私の名前を聞いて驚いている。


 ………お父さん………お姉ちゃんと協力してここまでやったのに、私のことは共有してなかったんだね………。

 ほう・れん・そう、大事だよね。


「父さん………、そういうことはしっかり教えて!」

「すまん。」

「まぁ、父さんのコミュニケーション能力が底辺スレスレなのを知ってて現状を聞いて無かった私も悪いんでしょうけどね。」

 戦闘中なのに味方の心を折りにいったよ…。


 だが、お父さんはそんなことを気にすることもなく創造主を手に持っている二挺のハンドガンで銃撃していた。

 しかしというか、やはりというべきか、致命傷を創造主はギリギリで回避しているため消滅には至っていない。


 ………隙間無く飛んでいったほぼ壁の弾があたってどうして致命傷にならないのだろうか?

 恐らくスキルなのだろうが、連続で使用できる致命傷回避とかとんでも性能過ぎるでしょ。


 だが、創造主は回避するばかりで創造主からの攻撃はパタリと止んだ。


 戦闘を観察しながら、飛んでくる流れ弾を弾いたりしていたので遅くなったが、ようやくお父さん達の元までたどり着いた。

 《過程省略》を使えば早いのだが、敵に間違われて攻撃されるのは嫌なので地道に向かっていたのだ。


「お、お待たせ………。」

「遅いぞ。」

「久しぶりね、海那。」

 いや、流れ弾の威力が高過ぎなんだって。

 私やマーガムじゃなかったら擦っただけで擦った部位が消し飛ぶ威力なのはどうかと思うんだけど。


「久しぶり、かな?お姉ちゃん。」

「話したいことはいろいろあるのだけれど、今はあいつを消滅させなきゃね。」

 そう言ってお姉ちゃんが創造主に取り付いた人形を爆発させた。


 しかし、この攻撃も創造主に致命傷を与えるには及ばないようだ。

 だが、私の《剣神》は僅かな違和感があるのを感じ取った。

 爆発した瞬間、創造主の身体が僅かに揺れたような気がしたのだ。


「なんで当たらないんだろうな?」

「父さん、私に聞かないでよ。」

 私の考えが合っていれば、創造主に致命傷を与えることが出来るはずだ。


「お父さん達は攻撃を続けて、私に考えがあるの。」

 2人は頷くと攻撃を仕掛けてくれた。

 改めて《剣神》で認識してみると、やはり身体が揺れている。


 私は《過程省略》を使い魔法の詠唱等を省略し発動する。

「“時空断裂”」

 それはその場に存在する時空間を切り裂いてしまう禁じられた魔法。

 今まで怪我は負っても致命傷は負わなかった創造主の身体に多くの亀裂が刻まれる。


 創造主は恐らく致命傷となる攻撃が当たる際、僅かに時空間の位置をずらすことで攻撃を避けていたのだろう。

 だが“時空断裂”は指定された時空間をまとめて破壊する魔法なので当たったのだ。


 創造主の身体が手足から粒子になって消えていく。


 お父さん達も長かった復讐がようやく終わったことで、満足そうな、虚しそうなどちらともとれる表情をしている。

 やっと終わった。そう思った時………


 創造主の胸から手が突き出され、血塗られたその手には宝玉が握られていた。

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