第38話 母親1
~月島 空視点~
海那達の母親で俺の妻の赤岩アルトとは家が隣で、いわゆる幼馴染だった。
アルトの親は父親が日本人で母親が海外の出身らしかったが、俺が出身地を知ることはなかった。
親同士が親友だったこともあり、俺達はどこに行くにも一緒だった。
そんな生活は高校生になっても続いたが、そんな平和な時間は脆くも崩れさった。
ある日の帰り道に何者かに誘拐され、俺達は車でどこかもわからない場所に監禁された。
幸い、というべきだったのは俺とアルトが一緒だったことだ。
といっても誘拐犯は銃を装備していて、俺に出来ることと言えばいざというときの肉盾しか出来なさそうだったのだが…。
誘拐犯の話を聞いていると、どうやらアルトの親がかなりの金持ちでその金を狙った犯行のようだった。
今時、誘拐してまで金が欲しいのなら、銀行とかの金を扱っている店もしくは、巨大企業のパソコンをハッキングして金を落とせばいいと思わないでもなかったのだが。
だが、ここで理解不能な現象に陥る。
床から魔法陣が浮かび上がり、その上に立っていた人間が次々に消えていく。
当然、動けないように両手両足を拘束されていた俺達も例外無く体が消えていった。
死んだか………。
そう思ったが、そこには真っ白な空間が広がっていた。
しばらくじっとしていると、目の前に何かが現れた。
「空くんを巻き込むつもりは無かったの、ごめんなさい!」
そう言われてよく見てみると、そこにいたのは土下座をしているアルトだった。
まさか彼女までもが巻き込まれてしまったのか、そう思ったがさっきの言い方だと違う気がする。
「あの誘拐犯達だけを異世界にいる魔王の眼前まで飛ばすつもりが空くんも巻き込んじゃった…。………てへっ?」
「許す訳が無いだろ!」
頭目掛けてチョップを放つ。
「痛っ!?」
チョップは見事に命中し、アルトがこちらを恨めしそうに見てくるが気にしないことにした。
「で、この後俺はどうなるんだ?流石に魔王の眼前からNewゲームとか、洒落になってないからやめろよ?」
「空くんならそれでも行けると思うけど………。」
どこをどうすれば行けるのかを教えて欲しいんだが?
「まぁ、ちゃんと私も着いていくからさ?紙舟に乗った気分でいてくれていいよ。」
「沈むじゃねえか!?」
防水加工とか絶対にしてないだろうしな…。
とまぁ、そんな感じでしばらく話してから、俺達は異世界に向かった。
そうして目の前に出現した魔王!
先程の誘拐犯のものと思える大量の血痕!
そして一瞬で消し飛んだ魔王!
はい、魔王に勝ちました。
………こんなもん他の転生やら転移やらで魔王倒すことになったやつからは文句が出そうだな。
「やっちゃった………、どうしよう魔王消し飛ばしちゃったよ………。どうしよう空くん?」
「俺に聞くな…。」
とゆうか殺った本人がなんでそんなに慌ててるんだ?
「私この世界にはあんまり干渉しないっていう約束でこの世界に来たの!だから魔王倒すと干渉し過ぎになっちゃうの!」
「魔王を再生して元通りにすればいいんじゃないか?」
………出来るもんなら。
「………!それだよ!………あっ、でも中身が無いんだけど………。」
中身………魂とかか?
「誘拐犯の魂とか残ってないのか?」
「いや、それはいくらなんでも非道じゃないかな?」
そう言った後、アルトがおにぎりでも作るかのように空気を握ると光る球が生成された。
「おい、それはなんだ?」
「誘拐犯の魂だよ?」
おい、非道とか言ったのはどこのどいつだ。
おい、今魔王を復活させるな!
魔王が俺達がさっきまでいた場所を吹き飛ばして復活した。
俺達はそれをかなり遠く離れた場所から眺めていた。
あそこにいたら死んでたな………。
「さて、これからどうしようか?」
アルトがそんなことを聞いてくるが、答えは1つしかない。
「帰る。」
「せっかくの異世界だよ?!楽しもうとか考えないの!?」
命の危険が常にあるのに楽しもうとかいう精神を持っているのはたくましいと思う。
「ほら、今なら私付きだよ?さっき見せたみたいに私といれば安全だよ?」
言い方…。
「むしろお前と一緒にいる方が危険だろ。うっかりで俺も異世界飛ばすくらいだしな。」
「うぐっ、返す言葉もありませぬ………。」
まぁ、こいつを1人にしておくこと程危ないこともないから、一緒にいるほうがいいだろう。
「とりあえず帰るぞ。」
しかし、アルトが何かをする気配が無い。
とゆうか額から汗がたらたら流れ出ている。
………ま、さ、か、いや、まさかな………。
「帰れないとか言うなよ?」
「ごめんなさい、帰れません………。少し時間を下さい。1年くらい。」
「まじか。」
そうして異世界で過ごしている内にお互いに惹かれ合って付き合い始めた俺達は異世界で結婚するに至った。
そうしてなんやかんだで1年が経過した時、俺達は誘拐された場所に戻ってきた。
そして家に帰ったとき、元の世界でも1年が経過していること、俺達が行方不明になっていたことを知った。
そして戻ってきてからしばらくした頃、アルトから真剣な話があると呼ばれたのだった。
気がついたら話が全然(?)進んでませんでした。
まぁ、出会いの話とか省くと自分の中で訳がわからないことになりそうだったのです。はい。
次回でもう1話母親の話をしてから海那達の視点に戻ります。