第34話 怠惰な少女
怠惰な少女は、何も始めから怠惰だったわけではなかった。
始めは真面目に姉の背中を追いかけていた。
姉は文武両道という言葉がしっかり当てはまるような人物で、さらに周りに対する気配りも出来る良くできた人物だった。
もちろん両親はそんな姉に期待したし、そんな姉と少女を比較した。
「何故、お前はこんなにも姉と違うんだ………。」
少女のテストの点や普段の生活を見て両親が言った。
それが繰り返されしばらく経った時、少女はいつまでも見えない姉の背中を追いかけるのを、やめた。
見えないのだからしょうがない。そもそも私と姉は違うのだから、比較するのが間違いだ。
そう自分に言い聞かせ、両親の話は全て無視した。
しばらくすると、両親は私をいないものとして扱い始めた。
始めは洗濯がされなくなった。
さらにしばらくすると、食事が出てこなくなった。
キッチンから食べ物を漁ることでなんとか食い繋いでいたが、それで少女に必要なエネルギーが得られるはずもなく、少女はどんどん痩せていった。
この頃から少女は学校にも行かなくなった。
家の中に居ても何も言ってこない両親、少女は1人を家の中で満喫し始めた。
だが、満喫出来ていたのも最初のみ、しばらく経つと飽きてしまう。
ゲーム等もあったが、それら全てに飽きてしまった。
そんな状況でも、少女に話しかけるのは姉になっていた。
だが、少女の思考は大分ひねくれてしまい、姉のせいでこんな状況なんだと思っていた。
だが、ある日状況が一変した。
姉が死んだのだ。
交通事故で突然に…。
いくらひねくれていても姉が死んでしまったのを、悲しめないような非人間では無い少女は、葬式で泣いた。
外面を気にした両親に喪服を着させられ、葬式には出れた。
だが、悲しむ私の後ろからは、
「姉の代わりに死ねばよかったのに。」
等の心無い言葉をかけられる。
少女の心はその時点で折れた。
それはもう、粉々に………。
それから少女は自分の部屋から一切外に出なくなった。
というよりも、一切動くことも無くなった。
全てに対して、無駄、無意味だと決めつけ、そんなものの為に動く価値は無いとした。
だが、そんな生活は長続きしないもので、しばらく経つと、少女は餓死してしまった。
そして気が付くと、少女は椅子に座らせられており、身体が僅かにでも動くことはなかった。
しばらく動かずにいると、白い男が現れた。
その男に少女が死んだこと、少女が死んでからの両親を教えられた。
少女が死んだことに両親は気がついていなかった。
ある日、異臭騒ぎで警察が入りようやく気がついた。
もちろんそれが原因で両親は捕まったのだが、少女を娘とは絶対に認めなかったようだ。
だが、それを見ていた少女はそれを見ても何も感じなかった。
好きの反対は嫌いではなく、無関心である。
そんな、どこかで聞いた言葉が思い起こされる。
そんな少女は神に願う。
願わくば………、空腹などの苦痛を感じない不死にしてほしいと。
そして、それを聞いた神はその願いを叶えた。
眠らされた少女が目を覚ました時、少女の身体は死ぬ前とは様変わりしていた。
ボロボロの髪や服は無くなり、サラサラの髪に綺麗な服になっていた。
さらに痩せ細っていた身体も、おおよそ健康と見受けられるほどの肉付きに戻っていた。
だが、少女はそんな変化を気にすることはなく、自分が何もしなくてもいい場所を探しに旅に出た。
どれ程の距離を移動したのかわからないが、少女はある泉にたどり着いた。
その場所は封印されている場所だったのだが、少女の持つスキル《やる気無し》によって封印が一時的に無効化され、少女はその間に中に入った。
その泉は、竜脈から魔力が流れ出てくる場所で、そこにいるだけでレベルが上がるような場所だった。
だが、普通の人間には流れ出てくる魔力が有害であり、魔物などがどんどん強化されてしまう為に封印されていたのだ。
そんな場所でただ動かずに怠けるだけの生活を送り続けた少女は図らずもその世界で最強になっていた。
そんな少女の存在に気が付いた国もいたが、少女はテコでもその場所からは動かず、さらに封印をわざわざ解くことも出来ない為、全ての国が不干渉だった。
さらに時間が経過すると、少女は神になっていた。
竜脈から流れ出てくる魔力を取り込み続けた身体は、概念 睡眠を手に入れるに至った。
そして、神になったことで学校からの招待が来てしまう。
少女はテコでも行きたくなかったが、連れて行かれるのが強制である以上、この場に戻ってくるのを最優先にするべきだった。
そして、少女の前に、邪神の女が現れた。
その邪神は自らを暗滅主だと言い、この場所に戻って来たいなら私と一緒に学校を壊さないかしら?と言ってきた。
私は学校を壊すことと、この場所で怠けることを天秤にかけ、学校を壊すことを選んだ。
そして現在、壊すことを選んだ少女は守ることを誓った少女と対峙していた。