第33話 甘さ
~ミナ視点~
レムナによってこちらに攻撃してきた邪神を、《剣神》で操った聖剣で学校に向かわせないようにしているが、マーガムの防御壁があるおかげでなんとか持ちこたえている。
だが、レムナから黒い何かが放たれてくる為、防御だけに注力していればいい訳でもない。
黒い何かに当たると戦力外になってしまうので、当たらないだけの機動力と、邪神に邪魔されても突破できる攻撃を持った神でなければこの戦場では戦うことすら出来ない。
一応黒い何かが聖剣で無効に出来るかを確かめてみたが、どうやら剣の判定が無くなるようで《剣神》で操れなくなってしまったので、聖剣は邪神の妨害に使うことにした。
私の方も黒神剣から出てくる闇がさらに増えてきて、私の腕を覆ってしまった。
闇の中から真っ白な腕が出てきたりして、もうホラー映画みたいな感じだ。
私の元まで走ってきたヴァーンとレイテが両手を合わせると2人が光に包まれて、合体した後の姿になった。
その後すぐにヴァーン・レイテが概念 光で真っ白な腕を照らすと、真っ白な腕は闇の中に戻っていった。
「ありがとう2人共。」
「うん!私達も一緒に戦うよ!」
そう言うとヴァーン・レイテが剣形態になり、私の右手に収まった。
その後もレムナからの攻撃を避けつつ、邪神を聖炎大神剣で撃退していると、黒神剣から出てくる闇が徐々に減ってきて、黒神剣の刀身が見えてきた。
「クロス、無事?」
「………ぁ………だ。」
全然聞き取れないが、クロスの声が聞こえたのはよかった。
だが、まだ安心は出来ない。
闇が無くなった後に、クロスが無事だった時に初めて安心することが出来る。
もしかしたらクロスがクロスで無くなってしまう危険性があるので、しっかりと確認していこう。
「クロス、大丈夫?」
「………あぁ……夫だ。」
さっきよりも明確に返答が帰って来たので、ひとまずは安心だろう。
「クロス、早速で悪いとは思うんだけど、また邪神を取り込んでもらえるかな?」
かなり厳しいのはわかっているのだが、かなり状況が厳しい。
《過程省略》でレムナを斬ればいいと言われそうなのだが、短い期間とはいえ仲間だったのだから、躊躇してしまう。
「むしろ、望む、ことだ。」
そう言うと黒神剣が黒い闇を聖炎大神剣に巻き付ける。
すると、警戒してなのか、レムナが邪神を使って攻撃してくる。
邪神を聖炎大神剣で斬りつけると、斬られた邪神が次々と闇に飲み込まれていく。
しばらく邪神を取り込ませると、黒神剣から闇が出てきているが、最初の頃と違い、人の顔が見えたりはしないので、黒神剣も大丈夫そうだ。
「………っ!」
私の攻撃が激しくなっていくと、流石のレムナでも焦りを見せ、邪神を使った連結攻撃に穴が出来る。
私は即座にそこから反撃へと移る。
レムナが立て直そうとするが、もう遅い。
私はまだ、レムナを斬る覚悟が出来ていない。
だから、私はレムナを拘束することにした。
レムナの事情を聞いてからでも遅くない、そう思った。思ってしまった。
ひとまず、聖炎大神剣の概念 光でレムナを縛り上げる。
さらにその周囲に概念 絆によってマーガムから借りた《防御結界》を使った結界を張る。
結界を張ると、レムナと邪神を繋いでいた力の線が途切れた。
すると、邪神同士で争い始め、線が繋がっていた時にはあった、時間の巻き戻しのような再生も無くなっているようだ。
ここが好機とばかりに学校側を守っていたマーガムやクレーメさん、その他の神達がこちらに向かってくる。
「レムナなんで、なんで邪神になってるの?」
「うーん、ミナにはわからないかなぁ…。」
それだけ答えると、僅かにレムナの口角が上がる。
すると、争っていたのが嘘のように邪神が一斉にこちらに向かってきた神に向かって攻撃を始め、先程まで争っていた時の怪我は時間を巻き戻したように再生した。
「!?レムナ!!」
「ミナはねぇ、甘いんだよ。敵に容赦なんてしちゃ駄目だよ。」
そうとだけ言うと、レムナの姿が結界の中から消えた。
だが、今はレムナの行方を気にしている暇は無い。
突然の一斉攻撃に対して、反応出来た神は少なく、かなりの被害が出ていた。
「くっ!」
私は自分自身の甘さがこの事態を引き起こしたのだと、自覚すると同時に次に打つべき最善の一手を考える。
そして考え出したのは、聖炎大神剣に人形態になってもらい、黒神剣を持ってみんなを守ってもらい、私1人でレムナと決着をつけることだった。
「みんなのことをお願い。」
ヴァーン・レイテに黒神剣を渡して、私は自分自身に《武器創改造》を使い、私自身の手のひらから直接剣を伸ばす感じで作り出す。
「マーガムも、みんなを守ってね。」
「………はいっ!」
「大丈夫、私が強いのは知ってるでしょ?」
マーガムは何かを言いたそうにしながらも、私を送り出してくれた。