第28話 防御部門
マーガムが出る防御部門が始まった。
まず、スキル等で一定の力で攻撃出来る神が攻撃して、それに耐えられるかで人数を絞るようだ。
攻撃はどうやら真正面から来るのみのようで、全員がその神に向かってそれぞれの得物を構えている。
攻撃する神が全員の準備が完了したのを確認すると、防御態勢を整えていた神全ての前に大砲が出現し、その全てが火を噴いた。
完全に受け止める神がほとんどだったが、何柱かは受け止めきれずに吹き飛ばされてしまった。
一旦砲撃が止むと大砲が消えて、新しい大砲が出現した。
どうやら第一段階が終わり、第二段階に入ったようだ。
それから実に十段階が終わると出場者の数は激減し、10柱に絞られていた。
その中にはマーガムが残っている。
残った出場者の中には、もう力尽きる寸前の者もいる。
見た感じ一番余裕があるのはマーガムだろう。
攻撃する側の神も力を大分使ったのか、肩で息をしている。
しかし、攻撃する側の神は最上級の中位だったらしく、「俺1人で十分だ。」と言って交代を用意させなかったらしい。
審査員の間で目配せが行われる。
その後、私に視線が向けられる。まるでお前が行けと言わんばかりに。
私は首を横に振るがその視線が無くなることはなかった。
「じゃあ、君が出るってことで。」
創造主から私に向かって放たれた、その一言によって私は攻撃役に選ばれてしまい、さらに放送までされてしまったので、逃げ場が完全に無くなってしまった。
私は渋々、先程まで攻撃役の神がいた場所に立って攻撃する準備を整える。
他の審査員席にいた神はその結果に満足したようで、興味深そうにこちらを見てくる。
ちなみにヴァーンとレイテは審査員席に座って私を応援してくれている。
あまり手の内を見せるのは良くないので、いつも通り《時空間収納》から聖剣を取り出して、《剣神》で聖剣を操作する。
その数、実に1人につき100本、合計1000本の聖剣を同時に操作する。
ちなみに威力やスピードはかなり落としているので、見て反応するのも余裕なはずだ。
とはいえ、先程まで行われていた攻撃よりも弱くてはいけないので、火力と多方向からの攻撃に対する対処を見ることにする。
聖剣が飛んで行き、全員に同じ方向、同じ威力から攻撃を加えていく。
弾かれたりしても弾かれた聖剣とは別方向から攻撃を飛ばすようにして、完全に同じタイミングに同じ方向から攻撃が加わるようにした。
開始してから1分もしないで、8柱の神が脱落していった。
深く斬ったり刺したりする前に寸止めしているので、重傷者は0になっている。
多方向からの攻撃に対する対処が全くと言って良いほどのものだったので、隙を突かなくても攻撃が当たり、すぐに寸止めすることになった。
2人になった時点で一回攻撃を止めると、脱落した神から「多方向からの攻撃をするとは聞いていない。」との文句が出ていたが、「戦場で敵に対してそんなこと言うの?」と言うと、何も答えずに出場者の控え室に向かっていった。
そもそも概念も無しで防御しようとするのが甘過ぎるのだ。
残った2柱の内、1人はもちろんマーガムだ。
もう1人はAクラスの神みたいで、階級は上級上位らしい。
マーガムとは2つも階級が上だけど、見た感じはマーガムの方が余裕があるように見える。
さっきまでは手数でやっていたが、今回は一撃の威力でやってみるかな…。
とりあえず《過程省略》は初見で防げるスキルでは無いので使用しない。
私は《時空間収納》から黒神剣を取り出す。
黒神剣は前回見たときよりも、幅が大きくなっている気がする。
「クロス、調子はどう?」
だが、クロスは何も答えてくれない。
しかし私がやってほしいことは把握しているのか、刀身に闇が螺旋状に巻き付き、まるでドリルのようになった。
マーガムに攻撃なんてしたくは無いけど、マーガムがどれくらい成長しているかを測るのにはちょうどいいのかもしれない。
と思うことでなんとか攻撃することを決意する。
黒神剣を持つ私の手は僅かに震えていた。
まずはマーガムに向かって攻撃する。
マーガムもこの攻撃は初見なのだが、私の戦闘は何回も見ているアドバンテージがあるので、先にマーガムを攻撃することで、アドバンテージを埋めるためだ。
ただ当てるつもりは毛頭無いので、防御を突破した時点で止めるつもりだ。
マーガムがパイルバンカーを前に構え、さらにその前面に《遠隔防御》を2枚張り、《防御結界》で自分を囲った。
《剣神》で全てに概念 守護が付与されているのを確認した。容易には貫通出来そうにない。
私は概念 斬撃を黒神剣に巻き付いた闇に付与して1枚目の壁に攻撃する。
概念 守護と概念 斬撃が干渉し、激しい火花が飛び散る。
だが、黒神剣に巻き付いた闇が壁を飲み込んでいく。
2枚目の壁も飲み込んだところで、概念 守護の力が弱まり、結界はすぐに飲み込まれてしまった。
私がすぐに攻撃を止めると、マーガムが肩で息をしながら、ギブアップを宣言する。
「じゃあ、僕はリタイアします。どうやっても一瞬で貫通してしまいますし。」
すると、もう1柱のAクラスの神がリタイアを宣言した。
これでマーガムの優勝は決定した。
拍手が起こる一方、リタイアを宣言した神に向かってブーイングが飛んだ。
なんとなくだけど、しっかりと力量が測れているからこそのリタイアだと思うんだけど…。
もしも本当の戦闘なら死んでしまう可能性が高くなるのだから的確な判断が出来るのは必須だと思う。
ただ、これは大会で相手を殺すまでやることじゃないんだから、挑んでみてもよかったとも思うけどね。
威力部門と同じようにトロフィーが手渡され、マーガム達がトロフィーを掲げた。
だが、威力部門とは違って沸き上がるには沸き上がっていたのだが、若干のブーイングも混じっていたのが悲しい所だ。
こうして防御部門も終了し、手数部門が始まるのだった。