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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二章 ホゾンの街
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幕間 奴隷から見たご主人様

マーガム視点です。

 その日、僕とマルムは、カートに連れられて街に出て来た。

 普段は家に監禁しているのに、何故だろうと思ったが、どうやら薬草採集するのに獣人の嗅覚が欲しくなったのだろう。

 僕達はカートに連れられて、ギルドに来ていた。

 しばらく経つが、クエストを受ける様子も無い。

 どうやら、誰かと待ち合わせをしているようだ。


 しばらくすると、ギルドの扉が開き、ギルド内にいる人間達がみんな、そちらを見る。


 僕達もそちらを見てみると、そこにいたのは、フードを被っていてもわかる程の、とても綺麗な女性だった。

 しかし、女性はそんなことには、気が付いていないようだった。


 どうやら、カートの待ち人は彼女の様で、女性がこちらに来て、カートに挨拶をする。


「おはようございます。

 今日はよろしくお願いします。」


「おはよう。

 こいつらが今日のパーティーメンバーだ。

 男の方がマーガム、女の方がマルムだ。

 二人とも獣人の借金奴隷だ。」


 僕たちが紹介されるが、カートの罠で両親が借金を負ったのだ。

 好きで借金奴隷なんてやっていない。


 紹介が終わると、女性が僕たちの前まで来て、

「よろしくね。」


 まさか挨拶をしてくれる、なんて思っていなかった。


 カートがいつも『命令』していた通りに、

 僕は元気良く答える。

「よろしくお願いします!」

 マルムも丁寧に答える。

「よろしくお願いいたします。」


 クエストを受けてから、打ち合わせをして、薬草が取れる森に向かった。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 クエストは順調に進んだ。

 どうやらミナさんは、クエストを受けるのが始めてなので、上手く薬草を見つけられずにいた。


 カートが「そろそろ帰ろうか」と言い出し、ミナさんが頷き、僕達は帰路についた。


 しばらく歩いていると、ミナさんが突然警戒し始める。

 僕達が不思議に思っていると、カートが振り返り言った。


「まさか、この距離で気が付けるとはね。

 大人しく捕まってくれると、ありがたいんだけど。」


 そして現れる20人もの、屈強そうな男たちに、僕達は、驚いて固まってしまう。


 ミナさんが髪の毛を1本引き抜き、その髪の毛が剣に似た片刃の武器に変わる。


 カートとミナさんが少しだけ話したかと思っていたら、ミナさんの姿が消えた。


《感知》を発動させて、周囲の状況を探る。

 すると、次々に男達が意識を失っていく。


 男20人の内、2人が逃亡したがミナさんは追うことはせずに、カートの前に立ち、剣を構え、これ以上続けるか聞いて、カートがその場に崩れ落ちた。


 その後ミナさんは、気絶した男達を縄で拘束して、ギルドへと連行した。

 僕達は、男達が持っていた荷物を持って、ミナさんに付いていった。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 ギルドに着くと、カート達がギルドに引き渡された。

 そして僕達兄妹は、ミナさんの奴隷になった。


 その際、呼び方を「ご主人様」に変えた方がいいかを聞くと、「呼びやすい呼び方でいいよ。」とのことだったので、

 僕は、ミナさん

 マルムは、ミナ様

 と呼ぶことになった。


 ミナさんは不思議な人だった。

 奴隷に服を与えたり、一緒にご飯を食べたり、一緒に寝たり、他の人間なら絶対にやらないことをしてくれた。


 僕達は、ミナさんとなら、一緒に生きていけると思った。

 なによりも、ミナさんの力になりたいと思った。

 僕達は、抱いたこの気持ちを忘れないように、契約の神様に祈る。


 どうか、いつまででも、ミナさん(様)と一緒に居られるように。

 そう心の底から願った。


 ミナさんは、僕達の耳と尻尾を触りながら、幸せそうな顔で寝てしまった。

 僕達は、そんなミナさんが可愛く思えてしまい、僕は頭を振って心を落ち着かせる。


 僕は、ドキドキして少ししか寝られなかったけど、どうやらマルムはぐっすりと眠ったようだった。


 支度をし終わった僕達は、ミナさんに連れられて、ダンジョンに入る手続きをするために、ギルドに向かったのだった。

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