幕間 奴隷から見たご主人様
マーガム視点です。
その日、僕とマルムは、カートに連れられて街に出て来た。
普段は家に監禁しているのに、何故だろうと思ったが、どうやら薬草採集するのに獣人の嗅覚が欲しくなったのだろう。
僕達はカートに連れられて、ギルドに来ていた。
しばらく経つが、クエストを受ける様子も無い。
どうやら、誰かと待ち合わせをしているようだ。
しばらくすると、ギルドの扉が開き、ギルド内にいる人間達がみんな、そちらを見る。
僕達もそちらを見てみると、そこにいたのは、フードを被っていてもわかる程の、とても綺麗な女性だった。
しかし、女性はそんなことには、気が付いていないようだった。
どうやら、カートの待ち人は彼女の様で、女性がこちらに来て、カートに挨拶をする。
「おはようございます。
今日はよろしくお願いします。」
「おはよう。
こいつらが今日のパーティーメンバーだ。
男の方がマーガム、女の方がマルムだ。
二人とも獣人の借金奴隷だ。」
僕たちが紹介されるが、カートの罠で両親が借金を負ったのだ。
好きで借金奴隷なんてやっていない。
紹介が終わると、女性が僕たちの前まで来て、
「よろしくね。」
まさか挨拶をしてくれる、なんて思っていなかった。
カートがいつも『命令』していた通りに、
僕は元気良く答える。
「よろしくお願いします!」
マルムも丁寧に答える。
「よろしくお願いいたします。」
クエストを受けてから、打ち合わせをして、薬草が取れる森に向かった。
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クエストは順調に進んだ。
どうやらミナさんは、クエストを受けるのが始めてなので、上手く薬草を見つけられずにいた。
カートが「そろそろ帰ろうか」と言い出し、ミナさんが頷き、僕達は帰路についた。
しばらく歩いていると、ミナさんが突然警戒し始める。
僕達が不思議に思っていると、カートが振り返り言った。
「まさか、この距離で気が付けるとはね。
大人しく捕まってくれると、ありがたいんだけど。」
そして現れる20人もの、屈強そうな男たちに、僕達は、驚いて固まってしまう。
ミナさんが髪の毛を1本引き抜き、その髪の毛が剣に似た片刃の武器に変わる。
カートとミナさんが少しだけ話したかと思っていたら、ミナさんの姿が消えた。
《感知》を発動させて、周囲の状況を探る。
すると、次々に男達が意識を失っていく。
男20人の内、2人が逃亡したがミナさんは追うことはせずに、カートの前に立ち、剣を構え、これ以上続けるか聞いて、カートがその場に崩れ落ちた。
その後ミナさんは、気絶した男達を縄で拘束して、ギルドへと連行した。
僕達は、男達が持っていた荷物を持って、ミナさんに付いていった。
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ギルドに着くと、カート達がギルドに引き渡された。
そして僕達兄妹は、ミナさんの奴隷になった。
その際、呼び方を「ご主人様」に変えた方がいいかを聞くと、「呼びやすい呼び方でいいよ。」とのことだったので、
僕は、ミナさん
マルムは、ミナ様
と呼ぶことになった。
ミナさんは不思議な人だった。
奴隷に服を与えたり、一緒にご飯を食べたり、一緒に寝たり、他の人間なら絶対にやらないことをしてくれた。
僕達は、ミナさんとなら、一緒に生きていけると思った。
なによりも、ミナさんの力になりたいと思った。
僕達は、抱いたこの気持ちを忘れないように、契約の神様に祈る。
どうか、いつまででも、ミナさん(様)と一緒に居られるように。
そう心の底から願った。
ミナさんは、僕達の耳と尻尾を触りながら、幸せそうな顔で寝てしまった。
僕達は、そんなミナさんが可愛く思えてしまい、僕は頭を振って心を落ち着かせる。
僕は、ドキドキして少ししか寝られなかったけど、どうやらマルムはぐっすりと眠ったようだった。
支度をし終わった僕達は、ミナさんに連れられて、ダンジョンに入る手続きをするために、ギルドに向かったのだった。