表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二部 第四章 より強くなる為に
119/168

第25話 帰還

 闇を抜けると、そこには私が思った通りマルムがいる場所に出てきた。

 だけど周りの景色は一変していて、ビルがすべて剣に変わっていて、剣山から剣山が生えているかのようだ。

 そしてその奥に悪魔が出てくる門、そう言われても不思議じゃないと思える程に禍々しい、超巨大な門が見える。


「無事に戻ってくることが出来たようで何よりです。ミナ様。」

「なんとかって感じだけどね…。」

 黒ミナの投げてきた剣がいくらか直撃はしてないにしても当たっていたので、服とかのダメージが若干気になるレベルだ。


「気になることもあると思いますが、ひとまず罪について話させていただきます。」

 罪について説明してくれるのは本当にありがたい。

 私の罪が無知なのだから、知ることで強くなれる…とかだろうか?


「ミナ様の罪【無知】についてですが、保有している神が両手で数えられる程に少ない罪です。」

 そんなに少ないのか………、【無知】の保有者は………。

 ………ん?

 だから、よく分からないとかってオチ?

 それはちょっと勘弁してほしいかな………。


「幸い、ミナ様の中に資料等が保管されていましたので、説明出来ます。」

「私の中に保管されてたのね…。」

「はい。以前にも話しましたが、ミナ様のお父様がミナ様の記憶に保管している情報の中にありました。」

 私が見ることが出来ればいいのに………。

 調べものとかしなくても良さそうなのに…。


「どうやらミナ様のお父様も【無知】の罪を保有しているようですね。だからこそ、情報が保管されていたのでしょう。」

「お、お父さんと一緒…。」

 父親とお揃いなのか…。

 年頃の娘な私にはなかなか厳しい物があるよね。

 有り難くはあるんだけど………うん。


「情報によると、どうやら【無知】は知ることでどんどん強くなる罪のようですね。」

 つまり勉強すればするほどどんどん強くなるってことか…。


「他の罪だと、傲慢は慎ましくしていれば、憤怒は平常心でいること、怠惰は動くこと、嫉妬は羨ましいと思わないこと、強欲は欲する物を手に入れようとしないこと、暴食は食べないこと、色欲は………その…。」

「大丈夫、言わなくてもわかるから。」

 マルムの口からその先は言わせない。


「ここまで聞くと他の罪の方が楽な気がするんだけど…。」

「他の罪とはどうやら効率が段違いなようですね。なんでも他の罪が1強くなるのと同じ時間勉強するだけで他の罪の2~3倍強くなれるみたいです。」

 罪【無知】を持つことはどうやらとんでもチートのようだ。


「最上級上位の神には現在、他の罪を保有する神が最上級上位の多数派ですが、【無知】の神は少数派ながら多数派2人と少数派1人で戦った場合、少数派が勝つほどの強さになりますね。」

 いくらなんでも強すぎじゃない?

 まぁ、私は仲間を失いたくないから強くなれるならそれでいいんだけど。


「ちなみに罪をより大きくすること、例えば傲慢ならより傲慢になることで、一時的に限界を越えて強くなる暴走状態になりますが、時間が経過すると邪神になってしまいます。」

 邪神になりたくないからそうするけど、どういうメカニズムで邪神になるか知りたいな。

 マルムに聞いてみたが、情報はあるけどロックがかけられていて見ることが出来ないようだ。


「あとは、ごく稀に2つ以上の罪を持った神が現れるようですよ。」

 2つも罪があるとか、どんだけ強くなるんだろう?

 普通に強くなろうとすると、結構厳しい制限だろうけど、邪神になる覚悟で暴走させるならとんでもなく強くなりそうだ。


 罪【無知】がどんな物かはある程度わかったのでずっと気になっていたことを聞くことにした。

「ねぇ、マルム。あれ何?」

 そう言って私は禍々しく超巨大な扉を指差した。


 何かしらの答えが貰えると思っていた私だったが、予想外の答えが帰って来た。

「それが…、よくわからないんです。」

 えっ?

 私の中の情報にも書いていないってことかな?


「すいません、どれだけ情報を探してもあの扉が何なのかわからないんです。」

 私と融合しているマルムですらわからないとは、一体あの扉は何なのだろう?


「ただ、あの禍々しい雰囲気は開けてはいけないような気がします。くれぐれも開けないようにお願いしますね?ミナ様。」

「そうだね。そうするよ。」

 ただ、いつか開ける時が来る。

 私は不思議とそう確信していた。


「じゃあ、そろそろ現実に戻るよ。」

「またいつでも来てくださいね、ミナ様。」

 もちろん、そう答えて私は現実へと戻った。


 寝た時と全く同じ姿勢で目が覚めた。

 生徒手帳で時間を確認するが、ベッドに入る前に確認した時間から1時間程しか経っていなかった。

 ただ時間的には眠る時間だったので、お風呂に入ってから、いつもより広いベッドで眠った。


 翌日、学校に向かうと、校舎に入る前に天使に呼び止められた。

「あの………、どうして階級が上がっているんですか?」

 ………バレるの意外に早かった。

 どうやって答えた物だろうか………。


「本読んでたら強くなりました。」

「絶対に嘘ですよね?」

 嘘は言ってない。

 本を読んだあとのことを言ってないだけだ。


「まぁ、我々としては生徒が強くなることは喜ばしいことなので、問題無いのですが、あなたの場合は階級が問題ですね………。」

 最上級の上位になるのは問題があるのか…。

 その後、天使が「パワーバランスがぁ…。」とか言っていたが、放置してSクラスに向かった。


 Sクラスの扉を開けると、そこには私抜きで邪神の撃滅、もしくは撃退に向かった全員がいた。

 私が確認すると、マーガムが私の元に走ってくる。

 セイスはそれを後ろから暖かい目で見ている。


「ミナさん!会いたかったです!」

「私もだよ、マーガム。もちろんセイスもね。」

 そう言ってマーガムを抱きしめる。

 マーガムが顔を赤くしているが、私はそのまま周りを見渡した。


 なんとなく、邪神退治に向かう前と全体的な雰囲気が違うような………。

 マーガムにこっそり聞くと、どうやらマーガムやセイスの強さに対する嫉妬や、連係が上手く出来なかったことでギクシャクしているようだ。


 マーガムやセイスの強さに対する嫉妬はクレーメさんや、エクスが向ける感情じゃないよね?………よね?

 連係が上手く出来なかったのは、お互いのことを知らないからじゃないかな?

 連係に関しては時間が解決してくれるはずだ。


 嫉妬はどうしたらいいんだろう…。

 どこかのタイミングでケアしておかないと、大変なことになりそうだ。


 この時、すぐに嫉妬していた誰かのケアをしておけばあんなことにはならなかったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ