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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二部 第四章 より強くなる為に
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第24話 罪の認識

 闇を抜けると、そこは真っ暗なのだがしっかりと先を見渡せる。そんな不思議な空間だった。

 恐らく私の心の中だからこそ、この不思議もあるのだろう。


 私が入ってきた方向を振り返ると、そこには壁があるだけになっていた。

「これ、無事に帰れるんだよね………?」

 マルムがいる場所に無事に戻ることが出来るのだろうか?


 そう思って振り返ると、私の目の前にインクで塗り潰したように真っ黒な人が見えた。

「………、うわぁぁあ!?」

 咄嗟に横に跳躍して謎の人から距離をとる。

 後ろに立たれているのに気が付かないなんて、《剣神》が使えてたらあり得ないことだ…。


 私は心を落ち着かせてから、真っ黒な人を注意深く観察する。

 すると、覆っていた黒がドロドロと溶けだして、中身が見えるようになった。


 そこにいたのは………、私だった。

 といっても今現在の私の姿ではなく、聖剣に転生する前の私の姿だったのだが…。

 とりあえず目の前にいる私は黒ミナと名付けておこう。

 黒ミナを私と呼んでいると、私が混乱しそうだ。


 そして問題は黒ミナが現れたこと以外にも、もう1つあり、それはどうして平和な世界にいた時代の姿をしている黒ミナの手に、大剣なんていう物騒な物が収まっているのか、という問題だ。


「………っ!?危なっ!!」

 問題が追加された。

 襲いかかってきたよ!私、武器とか持ってないんだけど………。


 その大剣を軽々扱う姿は、私が聖炎大神剣(ヴァーン・レイテ)を扱っている時の私と瓜二つだ。

 《過程省略》も使えないので余裕を持って逃げないと………、当たったらかなり、というか精神的に死にそうだ。


 そうして逃げていると、短剣が飛んできた。

 逃げながら後ろを振り返ると、黒ミナが大剣を右手に持った状態で、左手に短剣を持っている姿が見えた。

 短剣が飛んできたので横に避けて黒ミナの方を見ると、その左手から短剣が出てくるのが見えた。

 ………それは、ズルくない………?


 いくら疲れないとはいえ、スキルが使えない状態でずっと逃げ続けることは出来ず、遂に斬られる…!

 その瞬間、体がいつものように神剣(レイテ)を使った防御をしようとして左手が勝手に動いた。

 しかし、その手に剣は無い。

 私は痛みを覚悟して思わず目を閉じた。


 だが斬られたという痛みは無く、その代わりに左手からかなりの重みが伝わってくる。

 恐る恐る目を開けると、私の左手には見たことの無い剣が握られており、その剣が大剣の一撃を受けとめてくれていた。


 黒ミナを蹴って距離をとり、私は剣を両手で持って黒ミナに向けて構える。

 すると、突如黒ミナが笑い始めた。


「あは、あはははは!」

 少し狂ったように笑いながらも、私への攻撃は止まらず、むしろ激しくなっていた。

 なんとか防いではいるものの、この状態が続けばかなり厳しい。


 そう思っていると、黒ミナの笑いと共に攻撃が止まった。

「あなたは、つまらないですね。」

 ………喋れたのか。

「つまらない、とは?」

「あなたは自分の罪を知りたいのでは無いのですか?」


「そう、私は自分の持つ罪を知りたい。」

「それは何故、いえ、言わなくてもわかりますが…。」

 私はもっと強くなって、皆を守れるようになりたい。

「ですが、それは傲慢としか言えません。何故ならあなたのそれは自己満足だからです。」

 それは、そうかもしれないけど………、それでも守りたいという意思は本物だ。


「私から答えを教えることは出来ません。ですがヒントくらいなら教えましょう。この戦いの中で………ね!」

 黒ミナからの攻撃が再開する。

さっきまでと違い、黒ミナは私が知らない武器と、攻撃方法で攻撃してくるので、私の体には無数の傷が生まれていた。


 一方で私の攻撃は全て見切られているようで、全て翻されてしまっていた。

 私の罪をこの戦いで気づけるというのなら、さっき言っていた傲慢は恐らく違うのだろう。


 それに暴食も早食い対決とかではないから違うと思う。

 そして憤怒と怠惰と色欲も違う。

 となると、残りは嫉妬と強欲、そしてもう1つの罪だけだ。


 確かに、武器を出せるのは羨ましいと思ったし、欲しいとも思った。

 だけど、妬ましいとか奪ってでも欲しいとかは思わなかったので、嫉妬と強欲も恐らく違うのだろう。


 残った罪は1つ、結局【罪神】にも詳しく記載されていなかった罪だ。

 記載されていたのはただ一文。

[最後の罪を持つ者は、本来………]

 大事な部分はインクで塗り潰されていて読めなくなっていたので、よくはわからなかった。


 しかし、ある程度分かってきた気がする。

 何しろこの空間や私の武器、それに相手の攻撃、その全てが私の既知の物ではない。

 ならば、恐らく私の罪は………。


「どうやら、気がついたようですね?なら言ってみてください。」

「たぶん、これかなっていうのがあるだけだけどね。」

 これで間違っていたらどうなるのだろうか…。

「ちなみに間違えると、あなたの人格は破壊されますよ?」

 ………絶対に間違えられないやつだった。


「それに、もう私は戦いませんし、何かを教えるつもりもありません。」

 ………私の至った答えを確認することは出来ないようだ。

「さぁ、答えてもらいましょうか?」

 黒ミナは心底楽しそうに私を見てくる。


 私の罪…、それは………。

「無知」

 私は何も知らない。

 神のことも、正直に言えば私自身のことも。

 唯一はっきりと知っているのは皆を守りたいという意思だけだ。


 私が答えてを告げると、黒ミナの表情が凍りついた。

「………はぁ、正解です。間違えていたらあなたの人格を破壊してあなたに成り変わろうと思っていたんですがね…。」

 めちゃくちゃ怖いこと考えてたんだな…。


「まぁ、正解しちゃった以上、あなたには私を取り込んでもらいますよ。」

 え?なにそれ怖い………。

 しかし、私に向かって黒ミナが全力で走ってくる。

 そのスピードはとても私がスキル無しで避けられるものでは無く、私と黒ミナがぶつかる………ことは無く、私の中に黒ミナが入っていった。


 特に異常も見当たらず、出口を探していると真っ黒な闇が出てきたので、私は闇が何故かマルムの元に繋がっていると思い、闇を進むことにした。

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