第23話 罪の扉
3日ほど自分の持つ罪について考えてみたが、どうにもしっくりとくる罪がわからないでいた。
それにマーガム達の様子を天使に聞いてみても、「守秘事項です。」と言われて逃げられてしまうのでそっちのことも気になる。
考え事は1人で考えた方が集中できる。
そう思った私が宿舎2階にあるベッドの上で自分の持つ罪について考えていると、ベッドの上だからなのか急な眠気に襲われてそのまま眠ってしまった。
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気が付くと私はビル街に1人たっていた。
周りに人の気配が無いかを《剣神》で探ろうとするが、《剣神》が使えず周りに人がいるかわからくなっていた。
どうやら《剣神》だけでなく、スキル全般が使えなくなっているようだ。
魔法も試してみたけど魔法も発動しなかった。
魔法やスキルが使えないことも気になるが、ビル街の方も違和感だらけで気になる。
その違和感とは、
1.窓はあるのに入り口が無いこと。
2.窓から中を覗くとデスクや椅子は置いてあるのにそれ以外の物が何一つ無いこと。
3.そしてもっとも違和感があるのがビルからビルが生えていること。
地面に垂直に建っているビルから垂直にビルが建っていたりしているので、重力とかどうなっているんだろうとか、材質はどうなっているんだろうとか思ってしまう。
だが、見覚えの無いはずのビル街に何故か私は懐かしさを感じていた。
「ここは……、どこなんだろう………。」
しばらく歩いてみるが、何故懐かしさを感じるのかわからない。
ビル街には見覚えは無いが、ビル自体は私が聖剣になる前の世界でよく見たビルそのものなので、それが懐かしさに繋がっているのかもしれない。
「お久しぶりです。ミナ様。」
しかし、懐かしさを感じる理由は別にあったようだ。
私の目の前にマルムが現れたことで私はようやくここがどこかを理解することができた。
ここは私の心の中だ。
でも前に来たときは境界すらない真っ白な空間だったはずなのに、とんでもない建築がされているので全くわからなかった。
どうしてこんなビルが建っているのかもマルムに聞いた方がいい気がする。
「久しぶり、話したいことがいっぱいあるよ。」
「私もいっぱいあるんですが、時間があまり無いので伝えたいことだけを伝えます。」
時間が無いとはどういうことだろう?
私は疑問に思いながらも、マルムが私に嘘を言ったことは一回もないので、まずはマルムの話を聞くことにした。
「まず、この場所の説明ですね。」
それからしてくれるのは正直ありがたい。
結構気になっていたのだ。
「この場所はミナ様の心の中ですから、ミナ様の心を反映しているので今までは真っ白か真っ直ぐだったのですが…、最近は悩んでいるのか枝分かれするようなモニュメントが建つことが多いですね。ただ悪いことではないので安心してください。」
今までは迷わずに突き進んでいたけど、最近は自分の持つ罪について考えたりで立ち止まることが多くなったことが原因みたいだけど、悪いことではないようなので、これからも悩みながらもしっかりと進んでいこうと思う。
「今回ミナ様に来ていただいたのは、自分の罪を知る方法を知っていただく為です。」
………!
まさか、私の持つ罪を教えて貰えるのかな?
自分の心の中で教えてもらうなら、自分で気が付いたのと変わらないからセーフという判定だと思いたい。
「あ、でも、私からお教えすることは出来ませんよ?」
うん、そうだよね!
知ってた!
そんな都合のいい話は無いか………。
「ミナ様、私にしばらくついてきてもらってよろしいですか?」
私が頷くと、マルムはビルとビルの間を縫うように進んで行く。
そうしてしばらく進むと、マルムが立ち止まったので私も止まると、私の目の前に天を衝く程の高さがある巨大な扉が姿を顕にした。
「この扉の中にはミナ様の持つ罪がいます。」
言い方からして、生物みたいなんだけど………。
「この扉の中にミナ様1人で入ってもらい、ここに戻ってくることが出来れば、ミナ様は自分の持つ罪を知ることが出来ているはずです。」
マルムがそう言うのなら、そうした方がいいのだろう。
私が扉を開けようと扉を押すと、巨大な扉とは思えない程、すんなりと扉が開いた。
扉の中は闇で覆われているが、先が見えなくなっているだけのようだ。
私は1人で扉の闇に入って行った。
ミナを送りだした後、マルムはミナが入って行った扉を見つめ1人呟く。
「ミナ様、どうか御無事で…。」