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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二部 第三章 世界救済
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第21話 目標設定

「た、ただいまッス…。」

 邪神と初めて会話をしたあの日から数日が経ったある日、セイスがふらりと帰ってきた。

 セイスは最後に見たときよりもボロボロになってはいたが、全体的に大きくなったような気がする。


 邪神に呼び寄せられて話をしたことは誰にも話していない。

 誰にも信じてもらえなさそう、というのもあるが、それ以上に誰にも心配をかけたくなかった、というのが本音だ。

 ちなみにマーガムは図書室に寄っているので、私1人で帰ってきた。(神剣3人は私の《時空間収納(アイテムボックス)》の中で眠っている。)


 帰ってきたセイスの話に戻ろう。

「セイス、今までどこに行ってたの?」

「それは………、言えないッス。」

 そう言われても引き下がる訳にはいかない。


「セイス、今まで、どこに、行ってたの?」

「うっ、言っちゃダメって言われてるんスよ!」

 ということは誰かと一緒にいたってことか。

 セイスが私達の元に帰るのを妨害してたというのなら、神くらいしかセイスの妨害なんてできないから、その妨害してた神に文句を言いに行くつもりだ。


「で、誰に言われたの?私が知ってる神?」

「えっ?な、な、なんでわかったんスか?」

 ………私の知ってる神………つまり、お父さんかガリアス、そしてクリアの3柱か…。

 ただ、クリアはセイスがいない間に私と戦っていたし、ガリアスの戦闘能力自体は恐らくセイスと同じくらいかそれ以下だろう。

 なら戻ってこれない訳はない。


 となると、消去法でお父さんしか残らない。

「ねぇ、まさかとは思うんだけど、お父さん?」

「………ッス。」

「え?今、なんて?」

「そうッスよ!神界でゆっくりしていたらクウ様に拉t…鍛えてもらってたんスよ。………あぁ、言ってしまったッス。」

 なるほど、お父さんに足止めされたから、すぐに帰ってこられなかったのか………。

 ていうか今、拉致って言おうとした?

 まぁ、気のせいってことにしておこう。


「今度お父さんに会えたら、今後、私の仲間を長時間鍛えるのなら、一言伝言でも伝えるように言っといてもらっていい?」

「ご主人の換わりに伝えればいいんスね?わかったッス。でも今度会ったときにはご主人に話しちゃったのバレてそうッスから怖いッスね。」

 私の仲間に酷いことはしないと思うんだけど。………口を滑らせた場合はわからないか。


「で、なんでお父さんのいる場所に行ってたの?」

「それは…、ご主人がもっと楽に戦えるように強くなりたかったからッス。」

 それは………、そう思ってくれるのは嬉しいけど、私は皆には出来るなら戦って欲しくない。

 もうあの喪失感を味わいたくないから…。

 だけど、どんな敵でも戦える、逃げられるだけの力も持っていて欲しい。

 力がなければ為す術もなくやられるだけで、逃げることすら(まま)ならないだろう。


 私のワガママであり、矛盾しているのはわかっている。

 だけど、その矛盾を矛盾のままにしないために私は皆と強くなってきたし、私が皆を守るつもりで戦ってきた。

 マーガムもカノアもラフィスさんも薫もディアスもセイスも、恐らくガリアスの管理している世界ではそれぞれの種族最強だろう。


 特にマーガムは神になってるから確実だろうし。

 セイスに関しては神獣って言われてたから元々あの世界にいない可能性もあるぐらいだし…。


 今まで強くなってきた私達だけど、邪神の攻撃で私が痛みを感じた時、思ってしまったのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、と。


 だから私は今よりも遥かに強くなりたい。

 あの邪神と戦ってもすべてを守れるくらいに…。

 正直な話、セイスについていってお父さんに鍛えてもらいたいくらいだ。


 鍛えてほしいと思うと同時に、この壁は自分で越えなければならないような気がする。

 教えてもらった強さは所詮付け焼き刃でしかない。

 それをどう自分の物にするか考えなければならない。

 でなければ今よりも強くなるなんて、かなわない幻だ。

 目標はあの邪神相手でも、すべてを守れるくらいに強くなること。

 これを達成できるくらいじゃないと皆を確実に守ることはできないと思う。


「ご主人、大丈夫ッスか?何か悩んでるみたいッスけど。」

「あ、うん。大丈夫。」

 顔に出てるとは思わなかった。


「ところでセイスは学校は大丈夫なの?」

「それが、特別授業扱いになってるみたいで退学にはなってないっすね。」

 それは良かった。

 いや、特別授業扱いがどんな扱いなのかよく分かっていないから安心はできないけど。


「特別授業扱いってどんな扱いなの?」

「聞いた話だと、ご主人達がやった世界の救済と同じ扱いみたいッスよ?」

 それだと他の皆とあんまり差が開いていないから今からでも追いつけそうだ。


「それに学校から合格って言われてるッスから、多分大丈夫ッスよ。」

「それなら大丈夫そうだね。」

 とりあえずセイスが退学にならずに済みそうで良かった。


 そのあと帰ってきたマーガムがセイスがいることに驚いたり、ヴァーンにレイテ、それにクロスが《時空間収納(アイテムボックス)》から勝手に出て来て、ヴァーンとレイテがセイスに乗ったりして遊んだりしていた。


 そして皆が寝静まった時、私はもっと強くなるためにどうしたらいいかを考え始めた。

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