第18話 純龍王
「どうやら、一緒の場所に転送されたようですわね…。」
「そうですね。」
私は《剣神》によって、周囲にいる生物や建物など全てを認識したのだが、どうやら私、マーガム、クレーメさん、レムナ、コラン、エクス、ガリア、ラーディス、そしてミスターGしかおらず、他の生物や建物は無く、木が生い茂っているだけだった。
「とりあえず周囲に生命体はいませんね。」
「とりあえず向こうに向かおうぜ、あっちに何かあるってラーディスが言ってる。」
私達がラーディスの方を見てみると、ラーディスがふらふらとした足取りで自分が示した方向に向かって歩きだした。
「おい、待てよ。」
エクスがラーディスの肩を掴んで止めようとするが、ラーディスはそれを振り払うと急にえげつないスピードで走りだした。
「な、何が起こっているんですの?!」
とりあえずエクスとミスターGがラーディスを追いかけていったので、私は《過程省略》を使って、ラーディスから離されないように残された皆を連れて移動を開始した。
何回か《過程省略》で移動すると、ラーディスが洞窟の入り口のような場所でようやく止まったので、私達はラーディスの近くに移動した。
その後すぐにエクス達が到着すると、ラーディスが頭から地面に倒れた。
ラーディスにクレーメさんが回復魔法を使っている間に私達は周囲の警戒と情報収集をすることにした。
ラーディスが倒れた洞窟の入り口には、龍が描かれた扉が設置されていて、開いてみると中には広大な空間が広がっていた。
ラーディスを治療しているクレーメさんによると、ラーディスは怪我をしている訳ではなく、どうやら精神的な要因で気絶しているらしい。
しばらく待ってみたがラーディスが回復する様子が無いので、私達は洞窟に入ってみることにした。
だけど、全員が中に入る必要も無いので、私とマーガムの2人だけで入ることになった。
クレーメさんはラーディスの治療を、レムナは寝てるし、コランはクレーメさんのサポート、エクスとガリアは邪神が出てきた時の戦力として残ってもらう。
私達が洞窟に突入すると、入り口の扉が自動的に閉まり、私達の前に巨大な蛇のような白龍が姿を現した。
『力が欲しくば、我を倒して見せよ!』
白龍が地面を割るとさえ思えるほどの凄まじい咆哮を放つと同時に小さい爪を動かすと、鎌鼬が私達に向かって飛んできた。
「問答無用!?」
マーガムが咄嗟にスキル《遠隔防御》を使って透明な壁を私達の前に出現させるが、鎌鼬が壁に触れただけで壁が切断された。
《剣神》によると、どうやら私と同じように概念 斬撃が付与されているようだ。
私は《時空間収納》から神刀と神剣を取り出しいつものように持つと、神剣に概念 光で作った光剣を纏わせ、神剣と光剣に概念 斬撃を付与した状態で鎌鼬を防御した。
すると、概念 斬撃同士がぶつかり、凄まじい風が神剣と鎌鼬から発生した。
しばらくすると鎌鼬は消え、それと同時に笑い声が聞こえる。
『くふ、ふふふ、まさか我の攻撃を防げる者がまだいようとはな…。』
白龍が感慨深そうに呟く。
今なら話を聞いてくれそうだ。
「あの、私達はこの世界を救いにきた、………はず、なんですけど。」
『そんなことはどうでもいい。我はまだ戦えるぞ。』
いや、どうでも良くないんだけど………。
『ひとまず、お前は出直してくるがいい。』
白龍がそう言うと、マーガムが転送された。
「どこに、転送したんですか?」
自分でも驚くほどに低い声だった。
『そう怒るでない、入り口の前に飛ばしただけだ。入り口の前にいるのお前の仲間だろう?』
白龍がそう言うのを聞く前に、私は神刀と神剣を合体させて、聖炎大神剣にしてから、《過程省略》を使い白龍の前まで移動して、聖炎大神剣を白龍の首筋に当てていた。
『まさか、お前は………、それにその剣、いや、そんなはずはないはずだ。』
「とりあえず負けを認めて扉を開けてほしいんですけど。」
自分で確かめないとマーガムが本当に無事かがわからない。
『ぐぬぬ、しょうがない、開け孫。』
思わずツッコミそうになったが、なんとか踏みとどまると、《過程省略》で扉まで移動してから、扉を僅かに開くと、そこにマーガムがいたので、私は扉を閉めてから白龍の前に立った。
『とりあえず聞きたいことがある。お前は創造主か?それとも暗滅主か?それとも最上級の上位か?』
「いや、どれでもないですけど。」
なんで私が最上級上位以上だと思ったんだろう?
私の疑問を感じ取ったのか白龍が口を開いた。
『お前の持っているその剣、神剣だろう?』
「そうですけど…。」
『神剣とは本来、創造主、もしくは暗滅主のみが保有する武器だった。だが、幾万もの年月が経過することで僅かだが数が増えたのだ。』
増えたのはおそらく私と同じ能力を持った神がいたか、神自身が神剣になったからだろう。
『その増えた神剣は最上級の上位の中でも最も強い者から順番に与えられていった。』
「つまり持っているのは本来、最上級の中でも最強クラスの神だけってことですね。」
『そういうことだ。』
なるほど、つまり私が保有しているのはおかしいのか。
『それにさっきのでお前の戦闘能力が我を越えているのもよくわかった。お前にはこいつを託そう。』
そう言って白龍が差し出して来たのは真っ黒な神剣だった。
つまり、目の前にいる白龍は最上級の中でも最強クラスの神だったのだろう。
『それと、我の名前を教えておこう。我が名は純龍王クリアである。』
「まさかとは思いますけど、緋龍王って知ってますか?」
『おお、クムンを知っているのか?』
「いや、そのスキルを持っている………後継者といった方がいいですかね?」
それからしばらくクムンという龍王がどんな龍だったかについて話されたが、大体カノアと変わらない性格だったようだ。
『っと、話が逸れたな。その神剣をお前に託そう。込められた概念は闇、お前とは相反しそうな概念だが、お前ならうまくやれるだろう?』
私にそう言って黒い神剣を渡すとクリアは消えてしまった。
そして私が皆と合流しようと扉を開くと、そこには邪神に取り囲まれて、マーガムの結界でなんとか持ちこたえている皆がいた。