第17話 考察
翌日、私達が学校へと向かおうとドアを開こうとすると、ドアがノックされた。
「っ!?」
今まででラフィスさんくらいしかやってこなかったし、少なくともこの宿舎ではされたことがなかったのでびっくりしてしまう。
恐る恐るドアを少しだけ開くと、そこには黒い笑顔の天使がいた。
「………何の用ですか?」
「いえ、昨日の事でお話が…」
私はドアを閉めて話を強制的に終わらせようとする。
だが、ドアの僅かに空いた隙間に指が差し込まれ、そのまま勢いよく掴まれたせいでドアに亀裂が入ってしまう。
「あの、離してくれませんか?」
「ドアを開けてもらえるなら離しますよ?」
昨日の事って何だろう?
図書室の壁に男をぶつけたことだろうか…、それともあの男の心が折れてしまったのだろうか…、聞きたくはないが、聞かないとドアがもたなさそうだ。
私は大きいため息をついてからドアを開けた。
結局、ドアは開ききった時に亀裂が大きくなってドアは木片に変わってしまった。
「昨日の事ですが、絡んで来たのが向こう側であること、殺していないことなどを考慮して、あなた達にはお咎めなしということになりました。」
良かった、本当に良かった…。
「今回に関しては相手側が全面的に悪いのでお咎めなしですが、次からは戦わないでくださいね?」
「はい…。」
私だって、戦闘とか出来る限りしたくないんだけど………。
「あと、ここに来たのは他のグループが今日帰還するので、Sクラスに来るようにお願いします。」
他のグループ、おそらくはクレーメさんのグループだとは思うけど、エクス達のグループも帰ってくるかもしれないな。
「わかりました。」
私の返事を聞くと、満足そうに頷いて天使はドアがあった場所から帰っていった。
………いや、壊れたドアはどうするのだろうか?
もしや放置とかじゃないよね?
とりあえず聖剣を《武器創改造》を使ってドアに改造して、壊れたドアを撤去してからドアを取り付けた。
施錠などがしっかり出来ているか確認してから、私達は学校に向かった。
私達がSクラスにたどり着くと、中から男女の話し声が聞こえる。
クレーメさんとエクスのグループが今日戻って来たのか、そう思いSクラスに入ると予想通り、クレーメさんとエクスのグループが全員揃っていたのだが、なにやらクレーメさんとエクスが取っ組み合って何かを言い合っている。
「だから、あなたのグループが最後なのですわ!」
「いーや、ミナのグループが最後のはずだ!今クラスに入って来たからな!」
あぁ、世界を救済した順番をはっきりさせたいのか。
「なら、世界を救うまでに要した日数を言いませんこと?」
「それなら、俺達は58日だ。」
「ふん、私達は43日ですわ。」
………ん?
日数が私達が今日まで過ごした時間と違う?
おそらく時間の経過するスピードが違うからだろうけど、みんな結構経ってるんだね。
「「それで、ミナ(さん)は何日で救えたんだ?(ですの?)」」
2人が私に詰め寄ってきた。
「ち、近いですよっ。」
2人を軽く押し返してから答える。
「ふ、2日です。」
そういうと2人とも、いや、私とマーガム以外が固まってしまった。
「え…。」
「は?」
「「「「「「「はぁ?!」」」」」」」
この時の声があまりにも大きかった為、後に他のクラスで噂になることを私達は知らない。
「確かに私達の世界に出現した、最上級下位の邪神を倒してもらいましたから、私達よりも早いとは思っていましたけど…、それはあまりにも早すぎではありませんこと?」
「どういうことだよ!俺達は上級下位の邪神が2柱いたから日数が必要だったんだぞ!?」
「いや、私達は運が良かったんですよ。」
そう、運が良かったのだ。………多分。
「私達が救った世界には、8柱の邪神がいたんですけど、1ヶ所に固められていたので、すぐに邪神を倒して世界を救えたんです。」
あ、あれ?
どうしてみんな固まっているんだろう…。
「は、8柱ですの?」
「はい、8柱です。」
「8柱の邪神が同時にいるなんて普通じゃないぞ…。」
「そうですわね…、何か嫌なことが起こりそうな予感がしますわね。」
不吉なことを言わないで欲しい。
「何か、まずいんですか?」
「普通なら邪神は単独行動しかしないし、集団行動なんて利害が一致している時にしかしないような連中だ。」
「それが、Sクラスの全グループが集団行動する邪神と遭遇している、となると、複数の邪神が何かを目的にして動いている、と考えられるのですわ。」
「もしくは邪神を従える者、暗滅主が現れたかだな。」
私達が今回の異常事態について話していると、天使がSクラスに入ってきた。
そして放たれた第一声。
「あなた達にはこれから邪神の討伐に向かってもらいます。」
そう言われた私達は説明を聞く暇もなく転移させられたのだった。