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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第二部 第三章 世界救済
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第14話 聖炎大神剣

「痛!?」

 転送された直後に攻撃に当たるとは、なんて運が無いんだ…。

 すぐに体勢を整えて、最上級の邪神を見る。


 最上級の邪神は顔が山羊で、体はかなり細く、骨に皮だけが付いているような見た目だ。

 ホラー映画とかに出てきそうなビジュアルだ…。


「あなた…、大丈夫なんですの?」

「え?まぁ、ダメージとかはありませんけど…?」

 この身体になってから怪我はしたことないな。


「体や心が腐食したりしていませんの?」

 ………それはゾンビか腐女子になっていないか、という確認かな?

 腐女子がクレーメさんの世界にいるかは、わからないけど。


「いや、大丈夫なはずですけど…。」

 そう言われて初めて周りを見渡すと、ゾンビがおそらくクレーメさんが張った結界を叩き続けているのが見えた。


 中には人間ロケットをやっているゾンビもいる。

 さらに地面は溶解液でもかけられたかのように、デロデロに溶けて煙が出ている。

 ………うえぇ、グロ映像でしょ、これは…。


「あの邪神が言っていましたけど、あの邪神の攻撃に当たると概念 腐食によって人はゾンビ、というものになってしまうようですわ。」

 なるほど、だから確認したのか。


 神がゾンビになったらどうなるんだろう?

 ゾンビ神?それか不死者の王とかになるのかな?


「概念 腐食の恐ろしいところは、有機物も無機物も関係無く腐らせる、というところなのですわ。」

「なら、魔法はどうなんですか?」

 クレーメさん、魔法攻撃えげつなかったよね?

 私、概念を付与した光魔法で攻撃されたことは覚えてるよ。


「魔法も駄目でしたの。」

「えっ?」

「概念を付与した魔法ならまだしも、ただの魔法だと魔法に込めた魔力が腐らせられ、魔力が霧散し、魔法がキャンセルされるのですわ。」

 こうして私達が話している間、邪神は攻撃してきていない。


 何か攻撃できない理由があるのか、それとも私達を甘く見ているのか、おそらくは後者だと思う。

 私が邪神について考察していると、マーガムが邪神に背を向けて転送されてきた。

 マーガムに向かって概念 腐食が付与された火魔法が放たれた。


「完全に転送位置と向きに悪意があるよね!!」

 私はそんなことを叫びながら、《過程省略》でマーガムと火魔法の間に移動して、神刀(ヴァーン)で火魔法を切り払う。

「お主に腐食が効かないのは驚いたが、その剣にはスキルを持っている訳がない。お主は選択を間違えた!」

 邪神はドヤ顔で言ってきた。


 おそらく聖剣ならば腐っていただろう。

 だが、この剣は神剣、スキルどころか概念を持つ剣だ。

 概念 腐食の効果を概念 炎で燃やすことで無効にしたのだ。


 神刀(ヴァーン)から炎が燃え上がり、炎によって超長い刀身を形成する。

『おかーさん!これでゾンビを焼き尽くしてから、邪神を切って!』

 私は神刀(ヴァーン)を地面と水平に構えて1回転すると、炎の刀身からゾンビに向かって炎の矢が射出され、結界ごと見える範囲のゾンビを全て焼き尽くした。


 回転する勢いそのままに、邪神に向かって神刀(ヴァーン)を振り下ろす。

『くらえ!炎蝶の舞プロミネンス・パピヨン!』

 あぁ、ヴァーンの中二病が悪化している…。


 邪神が両手を正面に向けて、神刀(ヴァーン)による攻撃を魔法障壁で防ぎ、醜悪な笑みを浮かべる。

 だが、私は1人で戦っている訳ではない。


「わたくしを忘れてもらっては困りますわね。“ライトアロー”」

 クレーメさんが私の後ろから光の矢を次々に横に向かって射ち放つ。

 あらぬ方向に飛んでいった矢は、全て途中で軌道を変えて邪神へと殺到する。


 邪神は魔法障壁を拡張して光の矢を防ぐが、私の攻撃を防ぐのに精一杯なようで完全に防ぐことは出来ず、光の矢が数本当たり、当たった箇所が消滅した。


「これだけは使いたくはなかったんだがな。」

 邪神がそう言うと、黒い何かが邪神を包み込み球体になった。

 そして黒い球体に縦に線が入り、球体が開き中から筋骨隆々の邪神が現れた。

 邪神が私に手を向けると、邪神の手から禍々しい色の液体がとんでもないスピードで射出された。


 私は《過程省略》を使ってクレーメさんの元に一瞬で向かい、クレーメさんを抱えて液体の射線上から離れる。

 液体が地面に当たると、地面から液体と同じ色の棘が生えた。


 棘から私達に向かって液体が飛ばされてくるので、私はクレーメさんを抱えたまま移動を続ける。

 マーガムは自分の周囲に結界を張り、液体から自分の身を守っているからしばらくは大丈夫だろう。


 私はクレーメさんをマーガムの結界の中に避難させてから、神刀(ヴァーン)神剣(レイテ)を合体させて聖炎大神剣(ヴァーン・レイテ)にして、邪神に向けて構える。

 《過程省略》を使って邪神の背後に移動し、聖炎大神剣(ヴァーン・レイテ)を振り下ろす。


 邪神が魔法障壁を展開して防ごうとするが、《過程省略》によって切ったという結果が与えられ、邪神の背中に傷を付けた。

 今までならここで終わりだったが、全力の聖炎大神剣(ヴァーン・レイテ)の力はまだ終わりではない。


 邪神の傷口から炎が燃え上がる。

 邪神が禍々しい色の液体で消火しようとするが、消火出来ずに逆に液体が蒸発した。


「ばかな?!お主、何をした!?」

 私のやったことは概念 炎に概念 光を付与しただけだ。

 ただし、概念 光に関して言えば連想ゲームの要領で、光っていえは聖なる光とかあるよねって感じで、聖なる光、つまり浄化する力が込められている。

 だからこそ、禍々しい色の液体は浄化され、炎によって蒸発させることが出来るのだ。


 邪神を包み込む炎は激しさを増し続け、遂に邪神を消滅させた。

 私は聖炎大神剣(ヴァーン・レイテ)の概念 光の聖なる光を周囲に放ち、腐敗した大地や棘が浄化されていき、棘は無くなり、大地は腐敗を止めるまでに留まったが、これからクレーメさん達がなんとかするだろう。


 あれ…?

 そういえば、レムナやコランはどこにいるのだろう?

 私は疑問を抱えたままマーガムとクレーメさんに合流するのだった。

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