第11話 早すぎた救済
「いきなり呼び出して悪いな。学校から与えられた使命は果たされたことを伝えたかった。」
使命が果たされているをすぐに教えてくれたのは在りがたいことだ。
「この世界の自然は、まぁ、以前よりも増加したし、食物になる実がなることもわかった。」
確かに美味しい実だったけど、あれだけで生活していく訳じゃないよね?
あの実1つの栄養価が人の1日分に届いているのなら、生きていくことも可能かもしれないけどね。
「俺のスキル《未来予測》によると、500年もすれば人口もある程度は戻るようだし、世界を救うという条件は満たされた。」
何年も待って、人類の成長や復興を見守る必要なく結果がわかるのは、とてもありがたい。
「とりあえず学校に戻すこともできるけど、どうする?」
もう学校に戻れるのか…。
来てから2日で世界救えたんだなぁ…。
ちょっと早すぎる気もするけど、来たときには既に邪神が1ヶ所に集められていたからこそ、このスピードで救えたんだと思う。
私はもう学校に戻ってもいいと思うが、マーガムの意見も聞こう。
「マーガムはどうしたい?まだこの世界を見て回る?それとも学校に戻る?」
「僕は学校にある図書室に行ってみたいです。」
マーガムは学校にあるらしい図書室にいきたいのか。
なら、学校に戻って図書室を見つけないとね。
「学校に戻してください。」
「わかった。じゃあ、行くぞ。」
私達の足元に魔法陣が描かれ、私達は学校の上空に転移した。
………ん?上空?
私達は学校に向かって落下する。
「なんで、上空なのかな…?嫌がらせ?」
私は落下しつつ、そんなことを言ってみるが、ベフラードのことだ、嫌がらせではなく、やらかしたのだろう。
私は《時空間収納》から聖剣を2本取り出し、《剣神》を使って足裏に固定することで、スキーのような感じにしてから、聖剣を《剣神》を使って制御することで、体の向きなどを直して、地面に向かってゆっくり降下する。
地面に降り立つと、周りの生徒達がこちらを凝視していた。
なんで、みんなこっち見てるの?
神だったら、空から落とされたくらいでどうとでもできるんじゃないかな?
私やマーガムだったらそのまま墜落しても無傷だろうし、セイスなら飛べるし、最悪魔法で足場作るなり、減速するなりできるから、そんな凝視するようなことじゃないと思うんだけど。
だが、私が考えているような空から降りてきたことで視線を集めていた訳じゃ無いようだ。
「なぁ、あれってSクラスだよな?」
「はぁ?Sクラスは世界を救いに行ってるはずだろ?」
「でも、あそこにいるやつがSクラスだ。って生徒手帳に書いてあるんだよ。」
「ほんとだ。」
………世界を救うのが早すぎたからか。
生徒手帳、相手のクラスまでわかるとか、便利過ぎるでしょ………。
集中する視線に耐えかねた私はマーガムを連れて自分達の宿舎まで、《過程省略》を使って移動した。
私は宿舎で《時空間収納》の中にある、ベフラで入手したものを整理していると、ベフラードからもらった真っ黒な十字ラインが入った銀色のカードが出て来た。
このカードも結局使うことは無かったな。
とゆうか、復興している国でカードを使ってタダで食糧を得るなんてこと、私には出来ない、というよりそんなに図太い精神は持ち合わせていない。
私は真っ黒な十字ラインが入った、銀色のカードを《時空間収納》に収納してから、更衣室で服を脱いでバケツに入れておき、お風呂に入った。
私がお風呂に入っていると、更衣室にいたマーガムがお風呂に入ってきた。
………ちょっ!?
私は《時空間収納》からタオルを出して《過程省略》を使って一瞬で体に巻く。
そしてマーガムが入ってきて………、
私と目が合った。
「………、うわぁあぁあ?!す、すみません!ミナさん!」
マーガムが慌ててお風呂から出て行く。
ドガッ!ガラガラ!
更衣室から大きい音がしたので見に行くと、マーガムが頭から壁に激突していて、マーガムは私の服の下で気絶していた。
ひとまず、マーガムは裸のままなので、マーガムにタオルを巻いてリビングにあるベッドまで運び、マーガムが気がつくまで回復魔法をかけて看病することにした。
マーガムが倒れている間にセイスが帰って来たので、マーガムを少しの間だけセイスに任せて私は服を着て、マーガムの看病に戻ると、マーガムが意識を取り戻した。
「…あれ?ここは…、ミナさん?」
「マーガム、大丈夫?頭痛くない?」
「大丈夫です、痛くないです。ただ、なんで僕はベッドで寝かされていたんですか?」
………ん?
「え?マーガムが更衣室で頭打って倒れたから、心配で私が運んだんだけど…、覚えてない?」
「すいません、更衣室に入った辺りからの記憶が無いです。」
どうやら、お風呂での記憶だけがピンポイントに無くなってしまったようだ。
まぁ、思い出さなくてもいい記憶だけどね。
マーガムの記憶がピンポイントに無くなる事故はあったものの、その後は何事もなく、私はお風呂を済ませて、マーガムを抱きしめて眠るのだった。