第9話 戦いの後始末
「では、まずは自己紹介だな。」
そう言って目の前に座る神が切り出した。
「俺はベフラード、この世界の神をやっている。ひとまずこの世界の現状から説明していこう。」
被害状況とかがわかっていれば、より明確に世界を救済できる………はずだ。
「この世界は、自然と人が共存する豊かな世界だった。しかし、邪神の侵略のせいで自然は消え失せ、人の数も激減してしまった。」
「この世界の自然を元に戻せば、世界を救ったことになりますか?」
それだけでいいならどうにかできるかもしれない。
「できるなら、人の数も戻るまで、と言いたいが、自然を復活させてくれれば世界を救ったと認める。」
「わかりました。私は準備があるのでここで失礼します。………送ってもらっていいですか?」
ここがどこかわからないから、送ってもらった方が正確かつ、早い。
私達はベフラードにベフラに残った最後の街付近に送ってもらった。
街に向かって歩いていき、街を一望できる場所に立つと、街の門の前から地面が放射状に抉れていた。
………なんだこれ………。
マーガムの方を見てみると、私を見ていたマーガムが気まずそうに顔を逸らした。
………あぁ、パイルバンカーを使ったんだね。
まぁ、見なかったことにしよう。
私達が街の門の前に立つと、門が開き、中から王様っぽい見た目の男が現れた。
「邪神を倒してくれたこと、感謝する。」
「私達はやるべきことをやっただけですよ。」
「ひとまず、そこの少年がモンスターを倒す時に使った武装によって出た被害をひとまずどうにかしてほしいんだが?ここにやって来る生き残りが街に入りにくくなってるからな。」
………とりあえずパイルバンカーによって通行に影響が出ているようなので、とりあえず地面を平地にすることにした。
髪の毛を1本抜いて、《武器創改造》を発動し、とんでもなく大きいハンマーを作り出す。
ハンマーの取っ手部分に小さい刃を付けてあるから、《剣神》で操ることが可能になっている。
《剣神》でハンマーを操り、地面をかなり大雑把に叩き、地面をなるべく平坦にしていく。
そしてもう一度髪の毛を抜いて、《武器創改造》を発動する。
そうして作ったのは、巨大なカッターナイフの刃だ。
巨大なカッターナイフの刃を地面に鋭角に当てて、そのまま回転させる。
すると、余分な土や泥が自動的に弾かれていき、きれいな平地が出来上がった。
それにしても《武器変化》の時にあった1日1回の制限が無くなると、使い時を考えなくても良くなるから、便利だよね。
ちなみに今回の素材は【神鉄】なので、出来たのは聖剣だ。
神剣は神刀と神剣だけしか作っていない。
とゆうか作れない。
理由はわからないけど、量産できる物じゃないのはわかった。
ひとまず、街の門の前の土地は完全に平地にしたので、王様っぽい見た目の男からの依頼は果たした。
すると、王様っぽい見た目の男が私とマーガムを街に迎え入れてくれた。
なんと王様っぽい見た目の男は実際にはこの街の長だった。
長の計らいで、今日は街の一番高い宿に泊めてもらえることになった。
街に入ると、邪神に勝ったことを祝って、そこかしこで飲んで食って叫ぶ人を見かける。
………食糧とか、大丈夫なのかな?
外はほとんどが砂漠になっているのに、食糧の目処が立っている、ということなのかな?
異世界だから砂漠で育つ食糧や、砂漠でも枯れる事の無い水源があるかもしれない。
「まぁ、食糧とかの余裕は無いんだがな、祝える時に祝っとかないと、民の不満になってしまうからな…。」
「でも、今は祝っている場合じゃ無いはずですよね?外はほぼ砂漠になってますし、この世界のほとんどの人間がここにいるはずだから、すぐに食糧が無くなって全員仲良く餓死するかもしれませんよ?」
人類絶滅とか、世界救済から真逆だし、学校に戻れない可能性があるのはよろしくない。
「わかっている、だが、反乱が起こってはよりひどい状況になってしまう。これ以上人口を減らす訳にはいかないのだ。」
確かにこれ以上人口が減ると、農業やモンスターの討伐等をする人手が無くなる可能性がある。
なるべく早く回復させないと、世界を救済出来なくなる可能性があるので、早め早めで動いていこう。
思い付いた案をすぐに全部試していけばいずれ救える手段になると思う。
とりあえず最初は砂漠を森に変えることから始めよう。
でも、どうすればいいのか、皆目検討もつかない。
砂漠地帯には魔力が無いので、魔力を継続的に注ぐとどうなるのかな?
さっそく明日試してみよう。
私達は長に案内された宿で、明日以降試していくことを話し合ったが、
1,砂漠地帯に魔力を注いでみる。
2,《武器創改造》で植物が生えたり、水が出る聖剣を作ってみる。
この2つの案をひとまず試してみよう。
明日からの方針を決めた私達は念のため部屋に結界を張ってからベッドで眠った。
「………さん!お……さん!起きて!おかーさん!」
………!?
私が目を開けると、私とマーガムをそれぞれ起こそうとする、2人の少女がいた。