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普通の不思議
綺麗に見える。
端から見れば。
恐らく、違いはない。
洗った皿に異なる点はない。
皿は皿である。
なのに……
「不思議かね?」
「はい」
唐馬に尋ねられ、喜一は素直に頷いた。
「不思議です。あれはどういう事ですか? 何故、綺麗に見えるのですか?」
「弓徒君の方が、単に洗い方が丁寧なのは見てわかるね?」
「はい」
弓徒の洗い方は普通のそれである。
スポンジで皿を磨く。水で流す。水を切る。ラックに置く。
そこに特別な動作はない。
特別な動作がないという事は、無駄がないという事である。
最適化されているという事である。
派手だが、自由気ままに皿を洗っている紅虎は無駄が多い。
故に、弓徒の方が綺麗に見える。
——しかし、それだけではないと感じる。
「他に何か理由があるのでは?」
「そうだね。まあ、もう少し見ていればわかるのではないかな。彼も彼女も、これから本気を出すところだろうからね」
唐馬がそう言ったのと同時に、喜一は感じた。
場の雰囲気の変化を。
戦いが、新たなるステージに突入した事を。




