皿は皿、なのに
「む……」
「これは……」
「ほう……」
「中々……」
いくつもの会場で決闘を見てきた、古参の観客である老人たちが、開始一分で唸った。
紅虎と互角に皿を洗っている若者の存在に。
常人ならば、相手の凄まじい洗いぶりに心が折れて早々に敗北を宣言する。
事実、紅虎は目にも留まらぬ速さで皿を洗っている。
荒い。が、きっちり洗えている。
水が跳ね、泡が舞う。
派手だ。
しかしそれはシンク内だけである。外は少しも汚さない。
一見粗雑に見えて、正確無比なる腕前。
十二支と呼ばれるトップクラスの皿洗い師だけはある。
故に、弓徒の実力の高さが引き立つ。
紅虎に比べれば静かに、ともすれば地味に洗っている。殊更動きが速いわけでもない。
けれど、互角。
洗った皿の数は同数。
皿の見た目も——否、これは同じではない。
弓徒の方が綺麗ではないか——?
「むむ……?」
観客が首を捻った。
皿は皿である。
元の姿以上に綺麗になる事はない。
普通に綺麗に洗ったのならば、普通に同じ出来になるはず。
だというのに——
「これは……?」
喜一もまた、観客同様に目を細めずにはいられなかった。




