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五秒前
「ポップコーン食べる?」
「いや、いい」
「唐馬さんは?」
「気持ちだけ頂くよ」
「そうですかぁ……じゃあ一人で食べますわぁ……」
一般的な普通の観客席に並ぶ当麻、喜一、唐馬の三人。
もしゃもしゃとポップコーンを食する当麻とは対象的に、喜一と唐馬は視線を会場に、そこに設置されたシンクの前に立つ皿洗い師二人に注いでいる。
「喜一、君はどう見る?」
「……弓徒は一週間前とは違います」
「そのようだね。以前とは違う。どのような修練を積んだのかはわからないが、これまでの彼とはまるで異なる雰囲気だ」
「はい」
「虎子君についてはどう思う?」
「紅虎子は……強い、です」
「具体的には?」
「余裕があります。このような場や、決闘に慣れているという事ではなく……勝って当たり前。そう確信しているからこそ、精神的な余裕があるように見えます」
「ふむ……では、勝つのは虎子君だと思うかい?」
「……」
喜一は沈黙した。
否定ではなく、肯定でもなく。
勝敗を見極める為に、二人の力量の底を読み取ろうと目を細め——
「決闘開始五秒前!」
その時、会場にナレーションが響き渡った。




