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近くで
「……え?」
「いや、え?じゃないから。あんたさ、ほんとにそう思っとるん?」
「だって……たかが皿洗いですよ?」
舞は水戸の真剣な目に圧されたが、それでも、自分の言いたい事を言った。
水戸は舞のこういう歯に衣着せぬ言い方が気に入っている。
正直な者は信用出来るからだ。
……しかし、だ。
正直であっても世間を知らぬ者は、馬鹿としか言い様が無い。
「……なら近くで見てみ……ただし、あんまり近付きすぎないように、な」
「えぇ……?」
水戸は親指で喜一の背を指した。
舞は納得のいかない表情のまま立ち上がり、流し台に向かって歩いた。
疑念が浮かぶ。
近付きすぎるな。とは、一体どういう意味なのか?と。
邪魔になるからだろうか?
それとも、もしかして危険なのだろうか?
皿洗いなのに?
何で?
どうして?
意味わかんない。
……などと、
そのようなどうでもいい思考に気を取られていたせいで、彼女は気付けなかった。
「——え!?」
自分が既に、戦場にいるという事に。




