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過去の話
「弓徒君は何も話していなかったのか……いや、あれは話せる事ではないか……彼が語らざる事を私が語ってしまうのはどうかと思うが……」
暫し、唐馬は逡巡したが、
「彼に聞く暇も無いだろうから、私から話しておくべきだろうね」
結局、語る事にした。
喜一としても、何も知らずに決闘の見物をするだけでは収まりがつかないところはある。
元々は自分を狙った襲撃であったのだ。
にも関わらず、自分に代わって決闘を申し出た弓徒の過去に何があったのか。
紅虎との因縁とは。
それは知らなければならないことであった。
しかし、タイミングを逃し、切り出せなかった。
何があったのか?
それを聞くのは無心で皿を洗う弓徒の妨げになるのではないか。
そのような気遣いで、機会を逸してしまった。
故に、ここで聞くしかないのである。
「お願いします。店長」
「話そう。私の知っている範囲でだがね」
唐馬は話を始めた。
「インドで出会ったと聞いている。弓徒君と、紅虎は」
修行をしていた弓徒を襲った、虎の爪について。




