勁
喜一が何かしようとしていたのは感じ取れた。
故にようやく岸へと戻った弓徒は、合わせた。
相手が体勢を崩したのを見るや否や、拳を引き、一足で踏み込んだ。
単純な右ストレート。
手加減抜きのそれを打ち込んで倒す。
こいつが何者かは、それからゆっくり調べればいい。
まずは、倒す。
決意を籠めた一撃が、その者の顔面に叩き込まれ——
「扮ッ!」
「な——にぃっ!?」
弓徒へと跳ね返された。
再び、彼はふっ飛ばされた。
だが今度は遠くにではない。踏みとどまれた。
腕に響く衝撃はあるが、それよりも今起こった事の分析の方が優先される。
今のは——
「発勁か!?」
顔で受けたのではない。攻撃した。
より強い力に押し負けた感覚。
仮面が割れていない。
拳が当たると同時に、同威力の力を、勁を仮面に通した。
そう考えるしかない。
しかし、あのタイミングで即座にそのような事が出来るとは……。
「喜一、こいつは……」
「ああ。かなりの使い手だ」
二人は視線を交えた。
相談はそれで終わった。
「本気を出す」
「応。俺もだ」
気力を充実させ、攻撃に移ろうとした刹那、
「やーめやめ。やめるアル」
不意に、降参と言わんばかりにその者が手を上げた。




