蛇と震脚
貫手に近い構えであった。
異なるのは、鎌首を擡げたような手首の動き。
恐らく、蛇拳。
うねる腕、伸ばされる指先が、喜一を襲う。
「——!」
皿洗いにより培われた動体視力が敵の動きを追う。観察眼が攻撃を見切る。瞬発力が回避を成功させる。
これまでの研鑽で身に付けた技術が超反応する。
だが、それでギリギリだ。
鼻先を爪の先が掠める。
指先が掛かりシャツの袖が僅かに引き裂かれる。
完璧に避ける事が出来ない。動きを読みきれない。変幻自在なる拳法。
まさしく蛇そのもの。
恐るべき使い手——だが、闘気を感じないのは何故だ?
技は鋭く、連撃は絶え間ない。
けれど、そこにこちらを倒そうとする敵意は含まれていない。
試している——?
理由はわからないが、喜一は瞬間的にそう解釈した。
ならば、
「ふっ—–!」
突き出された指先を避け、相手の手首を、やや強引に掴み取った。
「ホホウ。ミーの腕を掴むとは、中々やるアルネ〜」
「……」
両者の動きが止まった。
ここからどうするか。
弓斗を待つか、それとも——
思考した刹那、
「じゃあ、これはどうアル——かっ!」
相手の右脚が大地を打ち、
「——っ!?」
衝撃が、全身を駆け抜けた。




