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既に始まり
何が起こったのか。
この野郎。と思ったのは覚えている。
この野郎。勝手な事を言いやがって。
誰だてめぇ?
お前は一体何を知ってやがる。
俺の何を。
俺と紅虎の間に何があったのか。
それを知ってやがるのか?
知らないなら、何も言うな。
もし知っているのなら、尚更何を言ってやがる。
誰だか知らねぇが、俺が紅虎に勝てないだと?
ふざけるな。
俺は勝つ。
今度こそ、やつを倒してみせる。
俺があの日味わった恐怖を払拭する。
怒りが駆け抜けて、全身に力が漲った。
眼の前の何者かを黙らせる為に。
その瞬間、だった。
強い力に胸部を押されたのは。
気が付けば、水の中だ。
吹き飛ばされ、湖の中に落ちた——否、落とされた。
「ぶはっ!?」
即座の浮上。
脚は付かないが、慌てない。
しかしかなりの距離を飛ばされた事には驚きを隠せない。
喜一のところまでが遠い。
見た限りでは細い身体。にも関わらずこれ程の一撃を放つとは、一体何者なのか?
わからない。が、何にしても手練だ。
「喜一! 気をつけろ!」
叫んだ。
その時には既に、始まっていた。




