迷い
決闘まで一週間。
その間に何をするべきか?
自分に何が出来るのか?
考えた末の結論が、山籠りだった。
山に籠もり、皿を洗う。
ただひたすら。
これで何か技術的な能力が爆発的に上昇するわけではない。
皿洗いとは日々の積み重ねによって磨かれていくもの。故に劇的な変化が得られる都合の良い修行など存在しない。
「白皿行」は己との対話。
白い皿に浮かび上がってくる数々の汚れ。
それを落とす。想像で。
油汚れは念入りに二回。
焦げは力を掛けて地道に。
こびり付き固まった米などは丁寧にむしり取る。
様々な状況を想定し、それをクリアしていく。
自らと向き合い、皿の洗い方を見直していく。
洗練させていく。
これはそういう修行である。
洗うのは、自らの心。
しかし——
「こんなことやって、何になるのかねぇ」
果たしてこれで、これだけを一週間続けて、自らを磨き上げるだけで紅虎子に勝てるのか?
あれに勝つには、もっと力がいる……。
何か、今の自分には無い、強い力が……。
「弓徒」
そんな迷いを見透かして——ではなく、
「何だ?」
「何か来る」
喜一は皿を洗う手を止め、深い霧に包まれた前方を見据えた。
そこには、確かに人影があった。
湖の上だというのに。




