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皿洗い師・喜一 everyday dish washing  作者: O.S
第三章 battle study・紅
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迷い

 決闘まで一週間。

 その間に何をするべきか?

 自分に何が出来るのか?

 考えた末の結論が、山籠りだった。

 山に籠もり、皿を洗う。

 ただひたすら。

 これで何か技術的な能力が爆発的に上昇するわけではない。

 皿洗いとは日々の積み重ねによって磨かれていくもの。故に劇的な変化が得られる都合の良い修行など存在しない。

 「白皿行しろさらのぎょう」は己との対話。

 白い皿に浮かび上がってくる数々の汚れ。

 それを落とす。想像で。

 油汚れは念入りに二回。

 焦げは力を掛けて地道に。

 こびり付き固まった米などは丁寧にむしり取る。

 様々な状況を想定し、それをクリアしていく。

 自らと向き合い、皿の洗い方を見直していく。

 洗練させていく。

 これはそういう修行である。

 洗うのは、自らの心。

 しかし——


「こんなことやって、何になるのかねぇ」


 果たしてこれで、これだけを一週間続けて、自らを磨き上げるだけで紅虎子に勝てるのか?

 あれに勝つには、もっと力がいる……。

 何か、今の自分には無い、強い力が……。


「弓徒」


 そんな迷いを見透かして——ではなく、


「何だ?」


「何か来る」


 喜一は皿を洗う手を止め、深い霧に包まれた前方を見据えた。

 そこには、確かに人影があった。

 湖の上だというのに。


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