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流すべきではない血
厨房にて一人片付けをしていた喜一は、何やら剣呑な空気を感じ取り表に向かい、聞き耳を立てていた。
それで、会話の内容は理解していた。
狙われているのが自分であるという事。
弓徒と虎子には何か因縁があるという事。
これから闘いが始まろうとしているという事。
選択肢はいくつかあった。
最も勝率が高いのは、三対一での戦闘であった。
敵がどれ程の手練かは知らないが、自分と唐馬、そして弓徒がいるこの状況であれば、遅れをとる事はない。
しかし、それでは多かれ少なかれ血が流れる。
相手の血だけでなく、自身の血も。
そして、友と師の血も。
それは避けなければならなかった。
そのような事が起こってはいけない。
孤児だった自分を拾い、育ててくれた唐馬。
この街での皿洗いを通して親交を深めた弓斗。
二人はいざ闘いとなれば我先にと飛び出すだろう。
息子同然に想う者の為。
友の為。(あるいは因縁ある敵を倒す為)
闘う理由があるからこそ、闘いは起きてしまう。
だが、それは起こしてはならない事だ。
このbarの前で血が流れてはいけない。
故に喜一は、奇襲を仕掛けず、正面から決闘を申し出たのであった。




