爪
「これもしかしてあれ? あの時の恨み! お返しだ! ってやつ?」
「そうだ」
「ふーん。そっか。……一つ聞いていい?」
「何だ?」
「あの時って、どの時?」
「何!?」
「その傷があるってことは、前に私に負けたってことでしょ? でも、そーいう目にあった生意気な下手くそはいっぱいいるからさー」
「て、てめぇ……!」
「と言うか、誰?」
「——!」
虚仮にされている。
舐められている。
敵として認識されていない。
これには黙っていられない。
瞬間、弓徒の肉体から発せられた怒気が、周囲の空気を震わせた。
——が、
「誰だか知らないけど、邪魔するならさぁ」
虎子が笑った。強烈に。
「っ!?」
同時に、弓徒は見た。死の形を。巨大なる肉食獣の爪を。それが自らの眼前にあるのを。
「次は逆サイドにつけてあげよっか?」
冗談ではない、本気の問い。
無論、今見えているものはイメージであり、現実にはまだ何も起こっていない。
しかし、このままでは——
「ぐうっ——!?」
やられる。
かつては一方的にやられた。けれど、今の自分ならば勝負出来る。
そう思っていた。
その認識の甘さを、彼は後悔した。
その時、
「待ちなさい」
唐馬歩が、声を上げた。




