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皿洗い師・喜一 everyday dish washing  作者: O.S
第三章 battle study・紅
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白皿行

 そこは深い山の中だった。

 車で五時間。

 鍛え抜かれた皿洗い師の健脚ならば小一時間。

 道なき道を進んだ先に開ける、絶景。

 海かと見紛う、対岸の見えぬ広々とした湖。

 その水辺に、二人の男がいた。

 二人は、胡座を掻いている。

 その姿勢で、皿を磨いている。

 真っ白な皿。もはや汚れ一つ無いそれを、スポンジで拭いている。


白皿行しろさらのぎょう


 精神を統一させる為の修行である。

 白き皿を洗い、見詰め、そこに映る己を見直す。

 皿を通しての自身との対話。


 その行の最中、一方の男が口を開いた。巨体に見合う、野太い声だった。


「お前は俺に付き合う必要ないんだぜ?」


 問う。が、もう一方の男の答えはない。もう一人の、巨体に比べると小柄な彼は、存在自体を消しているかのようだった。 

 集中している。

 それを察して、男は返事を待たずに言った。


紅虎べにとらとーー紅虎子くれないとらことやるのは、俺なんだからよ」


 きぃ。

 皿を強く擦ってしまった時に発せられる、僅かな軋み。

 その不快な、あるいは不吉とも言える音が、水面を駆けた。

 記憶の波を揺らし、少し前の出来事を呼び起こすかのように。


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