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皿洗い師・喜一 everyday dish washing  作者: O.S
第二章 battle study・序章
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紅の虎

 がぎぎぎり、ごぎぎぎり。

 硬質なものが削れる音がした。

 靴底と地面が擦れた音とは全く別物の音。

 発生源はどこか?

 探すまでもなく、それは羅人の眼に映り込んでいた。

 女の手だ。

 左右に伸ばされた両手が、両サイドのビルと触れ合っている。いや、単に触れているだけではない。

 削れていた。

 粘土を指で強く押した時の、凹みのような。

 そういう線が、コンクリートに刻まれている。刻まれていく。


「会長の命令かい?」


「そうと言えばそうかな」


「違うと言えば違うの?」


「私に一任されてるね」


「だったら、見逃してよ」


「何か弁明があるのなら、私を倒して会長のとこに行ったらいいよ」


「……そうかい」

 

 ため息を、一つ。


「虎との戦いは避けたいのが本音だが……やるしかないみたいだな……」


 羅人は浅く腰を落とした。

 逃げる。という選択を取るには、もう間合いが近すぎる。

 背を向けて無防備をさらすのは危険だ。

 故に、前進して活路を見出す。


「……お前は手加減できる相手じゃない。全力でいかせて貰うぞ、紅虎べにとら


「うん。本気で来てよ。私一回やってみたかったんだよね、羅人さんと」


「嬉しい台詞だ——ッ!」


 そして羅人は、地を蹴った。


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