接敵
羅人は、夜の街を歩いている。
時刻は、深夜二時を少し回ったところ。
これから二次会へと行くような足取りではない。
ゆるりとした歩みだった。
誰かに合わせているかのような……いや、ような。ではない。彼は合わせていた。
「出てこいよ」
人気のいない路地に半ばまで入ったところで、彼は背後に声を投げつつ振り向いた。
彼の視線の先には、一人の女がいた。
「なんだ。気付いてたのね」
あっさりとした口調だった。
一方で格好は荒々しかった。
ボロボロのダメージジーンス。ボロボロのタンクトップ。覗く素肌は、日に焼けて浅黒い。
髪は短く、赤い。
「逆に聞きたいんだけどさ、そんなに殺気出してて、気付かれないとでも思ってた?」
「え? 出ちゃってた?」
「自覚ないんだ」
「うん」
やれやれ、と言わんばかりに、羅人は頭を擦った。
それから、女に尋ねた。
「で? 何が目的なわけ?」
「お仕置きってやつかな」
「お仕置き? 俺の? 何で?」
「協会の元トップだった人のとこに行って、何かよからぬことを企てたんでしょ?」
「いや、俺はただ酒を飲みに……」
「言い訳はやめてよね」
女が両手を開いて、ゆるりと、前に出た。




