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皿洗い師・喜一 everyday dish washing  作者: O.S
第二章 battle study・序章
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言葉無し

「相変わらずの腕前だ」


「それ嫌味ですか? ここは普通、腕を上げたな。とか言うところですよ?」


 羅人は微笑んだ。

 唐馬もそこでようやく、笑みを小さく浮かべ、タオルを羅人に差し出した。


「手を」


「ああ、これはどうも」


 彼は受け取り、丁寧に。指の一本一本を時間を掛けて拭いた。

 まるで、ここにいる時間を名残惜しんでいるかのような拭き方だった。


「そろそろ行きます」


「……そうか」


「一応話しはしてみますけどね、在膳会長が聞き届けてくれるかどうか、自信はありません」


「決して無理はしないでくれ」


「俺がそういうタイプじゃないの、唐馬さんは知ってるでしょ?」


「……」


 重い沈黙だった。

 それを、羅人は笑って飛ばした。


「じゃあ、また。今日は一席設けて頂き、どうもありがとうございました。……師匠」


「……こちらこそ、ありがとう。良い皿洗いだった」


「早速褒めてくれて嬉しいですよ」


 唐馬に背を向け、カウンターを潜る。

 喜一への挨拶はない。

 けれど、そんなものは必要ないとわかっている。

 交代で皿を洗ったのだ。

 目は口ほどに物を言う。皿洗いはそれ以上に雄弁に語る。

 彼らに言葉は必要なかった。

 羅人は静かに、バーから去っていった。


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