大きな力
「俺は争いを起こさせない為にここに来ました」
「……どういう意味だ?」
「喜一くんは大した事無い。だから放っておけ。と、そういう事を会長に……あ、今の会長に言うつもりでした」
「……何故、過去形なんだ?」
「困っているんです」
「何?」
「喜一くんの腕前が、こちらの想像を超えていたので……はっきり言いますけど、戦いは避けられません」
「……」
「力は力を呼ぶ……あなたが昔、よく言っていた言葉です」
「……」
「その通りですよ。力を持つ者同士は惹かれ合うんです。より大きな力を生み出す為に」
「私は、そこまで言った覚えはない」
「後半は今の会長の言葉です」
「在膳九龍か……」
「ええ。あの人が……いや、あの怪物が……喜一くん程の実力者を放っておくはずがない」
「……」
「あの決闘の映像から、既に何かを感じ取っていても不思議じゃない。だから……」
「だから?」
「こちらも手は尽くしますが……覚悟を決めておくべきだと、俺は思います」
羅人はスポンジを流し台の棚の中に優しく置いた。
いつの間にか、グラスは全て洗われていた。
寸分の汚れもなく磨き抜かれ、ラックに並べられていた。




